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全てを掻き集めよ(続き)
「決戦か…」
大王の顔色も暗然となった。
もうローマ軍の強さは充分に思い知った。テルモピュライの戦い、キオス島沖の海戦、ミュオンネソス岬の海戦。全てに敗北したのだ。
ローマが海陸共に地中海最強であるのは認めざるを得ない。
(勝てるのか、この相手に)
危惧せざるを得ない。海上無敵と謳われたポリュクセニダスの艦隊も惨敗したのだ。今やエフェソス周辺の海域を維持するのに汲々としている有様。
「陛下。ローマのスキピオは寛容にございます」
マニアケス、自分でも話の流れからおかしなことを言っていると感じた。現実スキピオは厳しい要求を突きつけている。なのに、その彼の人格に期待を寄せるかの如き口吻なのだから。だが、彼女は事実のままを語った。
「彼は降伏した敵を虐げることを極度に嫌います」
「ふーむ」
「仮に敗北したとしても、これ以上の要求を突きつけることはありますまい。それが彼をスキピオ足らしめている矜持だからにございます。ならば決戦の選択しかありませぬ」
「なるほど…」
要は決戦を挑んでも挑まなくとも結果は同じ。仮に大王が勝利しても、スキピオはやはり同じ要求をしてくるであろう。それが強情なるローマの指導者なのだ。
(確かに、こちらが勝利してからの方が交渉がしやすくなるのは間違いなかろう…)
大王は計算した。
ペルガモンとロードスの関係が、実は必ずしも良くないこと、その他タウロス以西の諸国も一枚岩でないこと。ビテュニアとペルガモン両国は犬猿の間柄ですらある。
(さらにはギリシア本土にはアイトリア同盟が踏ん張っている。一度勝利すれば、形勢は大きく変わる可能性がある)
「掻き集めよ」
大王は命じた。
「アジアの全ての戦力、否、東方からも間に合う全ての戦力を。そして、アジアの物資を目一杯、このサルディスに集めよ。そして、スキピオに決戦を挑むのだ」
そう断じた時には、アジアを制覇した折の雄々しさが面に満々溢れていた。
メソポタミアからペルシア、パルティア、バクトリアからインドに攻め込んだあの果敢な大王の姿がそこにあった。
「スキピオに息子を返してやれ」
大王は命じた。
「その息子を通じてスキピオに伝えよ。こうなれば、いずれが世界の覇者か、正々堂々決戦し、証明しようではないか、とな」
間もなく。
スキピオの息子プブリウスを乗せた馬車が出立するのと入れ替わりに、諸国から続々兵が集まって来た。それは獰猛なガラティア人(アジアに移住したガリア人)、弓馬に優れたペルシア系の兵士たち。この一戦に一旗揚げようと目論むギリシアの傭兵たち、続々やって来た。
まさに帝国の総力を挙げた戦力結集であった。
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