新しいギリシア・ローマの物語2

179年、暴君フィリッポス、悪業の報いを存分に被り、死去

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 戦車隊 
 紀元前190年晩秋。
 サルディス市街はおろか城外に至るまで熱気に包まれていた。四方より集まった各地の将兵精鋭たちの人いきれでむせ返るほどであった。
 全て大王の命で集まった人々だ。ギリシア人傭兵、ペルシア兵、ガラティア兵、カッパドキア兵、さらには遠くアラビアからラクダ騎兵がやって来ていた。あたかも東地中海の民族の標本の体をなしていた。
 現代と違い衛生状態が格段に劣る古代の場合、体臭の民族差は明瞭であったろう。肉を多食するガラティア人(ガリア人)は体臭がきつかったに違いない。また、文明の進んだギリシア人とペルシア人との間も、入浴習慣の相違などから違ったことだろう。
 とにかく、人が集まれば、高貴な人々を除き、臭かったことは間違いない。
 



 その高貴な人々は、城市の天空アクロポリスにて日々軍議を執り行っていた。
「象軍は集まったか」
 大王は群臣に向かって下問していた。
 対ローマ戦で一対一で敵わぬことははっきりした。兵力において優位に立つこと、このことに腐心していた。
「はい。帝都アンティオケイアより急遽二十二頭を追加しております」
 王族のアンティパトロスが答えた。
「よし…」
 大王は満足げに頷いた。
(あと少しでハンニバルの要求する戦力を充たし得る。あとは…)




 大王は、かつて、相対する強敵ローマの特質を知るため、ハンニバルに教えを乞うたことがあった。
「ローマ軍は、組織力抜群、兵は勇猛。ですが、初物に弱いようです」
 ハンニバルはそう語った。
「かつて、我が国とシチリアを舞台に初めて矛を交えた折のこと」
 第一次ローマ・カルタゴ戦争(紀元前264年〜同241年)で、カルタゴ軍は陸上戦で当初優位に戦うことができた。
「それは我が軍に象部隊があったからにございます」
 ローマ軍もピュロス王との戦い(紀元前285年〜紀元前279年)で象軍に遭遇しており、決して初見ではなかったが、象軍との戦いにはまだ不慣れであった。そのため大いに苦戦した。




「ですが、今は、彼らも象軍のあしらい方を充分心得ております」
 ザマの決戦(紀元前202年)でスキピオは見事にハンニバル采配の象軍をあしらい、潰滅せしめたことを例に挙げた。
「そのため、象軍に代わる新たな戦力を御用意されることをお勧めいたします」
 ハンニバルは己の失敗を踏まえ、そう進言した。
「なるほど…ふーむ」
 大王は考え込んだが、あることを閃いた。

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