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マグネシアの戦い−瓦解(続き)
「一体何が起きているのだ!」
アンティオコス大王は最前から周囲を怒鳴りつけていた。
聞こえて来るのは、象やラクダの咆哮、それに続いて味方の悲鳴や怒号ばかり。
先ほどまで勇み立っていたアゲーマの馬たちも、怯えた嘶きを繰り返していた。
「この暗闇では…」「よく分かりませぬ…」
近臣たちもおろおろ繰り返すだけ。
確かに、こう暗くては満足に戦況も把握出来ない。日没の戦闘突入の決断が、完全に裏目に出ていた。
「陛下!」
マニアケスが戻って来た。
「中央は破綻!ガラティア兵が逃げ出しています!」
「な、なんだと!」
ガラティアとは、アジアに移住したガリア人の呼称。彼らの勇猛を宛てに、その騎兵の一部はアゲーマに配属されファランクスにも配していた。
とはいえ、彼らガリア人の特質は、勝勢の間は勇猛であるが、ひとたび劣勢になると途端に臆病になる傾向があった。これはヨーロッパ・ガリア人と何ら異ならない。
「おのれ…頼りにならぬガラティアめ」
大王は吐き捨てた。
が、この期に及んで、もはや痛罵も何の効もない。
「陛下!ここはひとまず御退却を!」
マニアケスが勧めたのは、密偵本能の危機を感覚したからであった。だが…
「なに!退却せよとな!」
大王は目を剥いた。
「戦いらしい戦いはしておらぬ!こんなことで退けるかっ!」
くわっと赫怒した。
そう。只今の戦況は、戦車隊が潰乱し、その混乱が波及して来ただけ。大王と直属の兵は、ローマ兵と一合すら交わしていないのだ。
「ですが、中央が崩れ立っては戦いようがありませぬ。間もなくローマ軍本隊も動き出しましょう。その前に退却せねば…!」
マニアケスも必死に諫言しながら、内心憤懣が渦巻いていた。
(この一大決戦を、こんな形で幕引きしなければならないとは…)
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