新しいギリシア・ローマの物語2

179年、暴君フィリッポス、悪業の報いを存分に被り、死去

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 マグネシアの戦い−瓦解(さらに続き)
「うぬぬ」
 大王は歯ぎしりした。噴き上がる憤りと怒り、にわかに始末がつかない。
「陛下!」
 別の騎兵が飛んで来た。
「ローマ騎兵隊が進軍を開始!セレウコス王子の隊に攻めかかっております!」
「なに…」




 そう。ドミティウス率いるローマ騎兵は、敵の大混乱に乗じ、暗闇の中、セレウコス王子率いるアゲーマに大攻勢を開始したのだ。
「陛下!このままではセレウコス王子は敵中に孤立することとなります!一刻も早く退却のご決断を!」
 そう。セレウコス王子は左翼に布陣している。つまり、西端に位置している。中央が崩壊している以上、味方の助勢も得られないのだ。




「陛下!」
 また別の兵が叫んだ。
「エウメネス隊が動き出しました!」
 夜間の戦いとなって、ローマ軍側に松明が灯り出していたが、それが大きくこちらに動き出すのが見えた。
 そして…。
「中央のルキウス・スキピオの隊も動き出しましたぞ!」
 即ち、ローマ軍全ての隊列が攻勢を開始したのだ。今こそ、大王軍の息の根を止める時と判断したに違いない。
 もはや大王軍の全面的な敗色は否みようがなくなっていた。




「陛下!」
「うぬぬ」
(こんなことが…こんな結末があるのか…!)
 帝国の命運を賭けた戦いの筈が、一つの隊の小さなつまづきが全てに波及し、為す所なく逃げ出さねばならないのだ。
 ザマの決戦では、ハンニバルは全身全霊の知恵を絞り全力をもって戦い敗北した。だから、何とか諦めもつく。死の覚悟もつくというものだ。しかし…。
(こんな負け方があるか…!こんな無様な…!)
 アジアの民にメガスと讃えられた男。それがこの無残な帰結。泣き出しそうになるのも無理はない。アゲーマもファランクスも、象軍もラクダ隊も、ただただ崩壊するだけ。




「陛下!このままで取り囲まれてしまいますぞ!」
 周囲は阿鼻叫喚。マニアケスら配下の怒号にも似た諫言が響いていた。もはや、取り巻く臣下たちも、日頃の礼儀を構う余裕すらなくなっている。
「退却だ!」
 大王は吐き捨てた。
 猛烈な自己嫌悪に襲われた。今の彼には、それしか命じることが出来ないのだ。
 

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