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天空の城に舞う(続き)
だが、間もなくアクロポリスという高みに達した時、前方でどよめきが上がった。
「どうした。何かあったのか」
訝しんだ軍団長ドミティウスは喘ぎながら訊いた。だが、なにせ狭い通路。二人が横になるのがやっと。
兵士を押しのけて前に出た。
「あ!」
城門ががっしり閉じられている。
いや、驚きはそれに向けられたものではない。
城壁の上に一人の武将が屹立していたからだ。
「マニアケス…!」
そのマニアケス、剣をすらりと抜くと、舞い踊り、朗々とした声で謳い始めた。
「ここは天空の城、リュディアの都」
「受け継ぎしはペルシアの諸王たち」
「大王が奪いディアドコイが相争い」
「争覇の果て得たものは空しさのみ」
「ゼウス、ヘーラーの高みに立てば」
「人の業など泡幻の如き儚きものよ」
「現れし西方の勇者たちよ悟り給え」
「際限なき欲望は身を滅ぼすことを」
(何と美しい…)
ドミティウス以下将兵たちは、思わず見惚れていた。
「そこに参られたのはドミティウス殿よな」
マニアケス、ラテン語で流暢に語りかけた。
ドミティウスは、落ち着き払ったその容子に気圧されたが、そこは強情なローマびと。傲然と胸を反らした。
「いかにも。レガトゥスのグナエウス・ドミティウス・アヘノバルブスである」
正式に名乗りを上げると、投降を勧告した。麓の市街は既に落ちたことを告げ、
「もはや抵抗は無駄な犠牲を積み上げるのみ。こんな所で犬死にすることはあるまい。速やかに降り給え」
穏やかに申し向けた。相手に対する敬意すら響いていた。
将は将を知る、ということであろう。
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