新しいギリシア・ローマの物語2

179年、暴君フィリッポス、悪業の報いを存分に被り、死去

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 夢幻の如く 
 間もなく。総司令官ルキウス・スキピオ率いる本軍がサルディスに到着した。
 その司令官のそばにスキピオ・アフリカヌスがいた。
 彼はドミティウスとエウメネス王の出迎えを受けると、
「諸君の働きの御蔭で、私も勝利軍の一員となることが出来た」
 病気の陰鬱もすかっと一掃。笑顔で将兵の功労を誉め称えた。
 これが配下にはたまらなく嬉しいのである。そう。英傑というものは、配下にこういう形で慕われるものなのだ。
「お褒めの言葉ありがたき。ですが…」
 ドミティウスは、マニアケスの立て籠るアクロポリスを前に、足止めを喰らっている事情を素直に告げた。





「そうか」
 スキピオは頷いた。
「何とかしよう」
 事も無げに言った。
「何とかなりますか」
 訝し気にそう訊いたのはエウメネス二世王。
 無類の天険サルディスのアクロポリス、しかも立て籠るはマニアケス。
(これは容易なことではない)
 密かに懸念していた。アカイオス攻囲の二の舞になるのではないか、と。




「なるさ」
 スキピオは笑った。
「彼女は頭脳明晰。これ以上の抗戦に意味のないことは知っている。役割を果たしたと知ればすぐにも退去しよう」
 彼は本営と定められた市街の迎賓館に入ると、すぐにミルトを呼びつけた。




「そなたも今回はよく働いたな。コンスル夫人なのに」
 可笑し気に言った。
「いえ…。これは閣下に許された時からの務めと心得ておりますので」
「だから、私は、そのように恩を着せるつもりはないと言うておろうに」




「いえいえ」
 ミルトは笑った。
「私たち夫婦が幸せになるため。その甲斐あって、夫はコンスルにまでなることができました。働かねば我が一分が立ちませぬ」
 彼女の人生哲学なのであろう。全力を尽くして恩義に報い、その上で我が身の幸福を願う。道理であるが、言うは易き行うは難しだ。



「そうか…」
 スキピオは微笑んだ。
 この彼女の力が、彼の功業に少なからぬ寄与をあえたこと、それをしみじみ思った。

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