新しいギリシア・ローマの物語2

179年、暴君フィリッポス、悪業の報いを存分に被り、死去

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 進まぬ総帥と進めぬ総帥(続き)
「そなた、ルキウスの許に赴いてくれ」
「何か秘策をお授けになりまするか?」
「攻めよ。それだけ言ってやれば充分」
「攻めよ…とだけでございまするか?」
 これまでのスキピオは、ふんだんに情報を吸い上げ、緻密な作戦を立て、実際の戦場でも抜群の嗅覚を働かせ果敢に動いた。
(その御方が、攻めよ、とだけで済ますとは…)




 スキピオは笑った。
「戦機は熟した。あとは渾身打ち破るのみ」
「敵は大軍。果たして大丈夫でしょうか?」
「そなたほどの者でもそう思うか。戦力の強弱は兵力の多寡に比例せぬぞ」
 これはスキピオの信念でもあった。
 思えば、彼が相対した敵は、いつも自分より多数の兵力を誇っていた。ヒスパニアのジスコーネ、アフリカのシファクス、そして、ザマ決戦のハンニバルだ。




「ルキウスは、彼らと渡り合っているのだ。なんのアンティオコス大王の大軍に後れを取ろうや」
 スキピオの肌感覚として、大王軍は、かつてのハンニバルやジスコーネが指揮したカルタゴ軍より数段劣る。
(それならばルキウスで充分。私が出しゃばる局面ではない)
 つまり、国運を賭けた決戦、そんな緊張はこの人物のどこにも漂っていなかった。




「普通に戦えば勝てる。それを伝えてやれ。ドミティウスやエウメネス殿の工夫もあること。戦車隊も恐るるに足らず」
 スキピオは輝く眼差しを見せて笑った。
(この方は…確信しておられる)
 戦場から遠く離れたこの地で、眼前の人物は勝利を確信していた。




 セルギウスは体を震わせた。
「かしこまりましてそうろう。今の御言葉、必ず弟君…あいやコンスル閣下にお伝えいたしましょう」
「うむ。頼む」
 その夜。セルギウスは疾風の如く南へと駆けていった。

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