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スキピオその後−リテルノ(続き)
数日後。ローマから親友のラエリウスがやって来た。
奴隷上がりの平民士官に過ぎなかった若者は、今やコンスル経験者(紀元前191年)としてローマ政界に重きをなす存在であった。とはいえ、昨今のカトー一派優勢の政治状況に、彼も半ば等閑に付されていたが。
「お加減はいかがです」
「あまりよくない。そなたは相変わらず壮健そうでなにより。羨ましいぞ」
確かに、ラエリウス、五十歳を越えた今も筋骨隆々、とても若々しかった。
彼はとても長命し、これから数十年後に歴史家ポリュビオスの取材を受けている。スキピオに関わる逸話は彼が証言したものらしい。親友の彼ならば、公私の大概のことを把握していよう。
なのに、ポリュビオスの記述ではルキウスが兄、スキピオが弟になってしまっている。これは後世の写本の誤植であろうか。父の名がプブリウスなのであるから、その名を継承したスキピオが長子であることは明らかというのに。
「弟は大丈夫か」
スキピオはそのことをまず訊ねた。
兄の彼がローマを去った後、弟ルキウスへの訴追の動きがあると伝えられたからだ。
「はい。コンスルの権限を逸脱したものとの批判を強めているとか」
「むむう」
スキピオは顔を歪めた。
昨今のローマ政界の急変が心外でならなかった。
(法を杓子定規に解し、もって慣例を攻撃する。悪辣なやり方よ)
「ですが、グラックス殿が懸命に取りなし、何とか事なきを得ていると」
グラックスは、スキピオ弾劾中止を発議して以降カトー派と袂を分かち、政治的には中立を保ち、スキピオ兄弟に対する逆流を何とか阻止していた。
「そうか…彼がいれば」
スキピオはほっと息をついた。
彼が次女コルネリアを託した男。その誠実に間違いはなかったようだ。
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