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清廉なグラックス殿(さらに続き)
数日後。元老院で会議が開かれた。
「諸君」
監察官カトーが口火を切った。
「我がローマの美徳は、専制国家とは異なり、いかなる有力者であろうとも、いかなる英雄であろうとも、国法の前では何人も同じであるということである」
(また始まったぞ)
そんな顔つきの議員も少なからずいた。
いや、矛先が自分に向けられるのではないか、そんな警戒の色を浮かべる者もいた。
「法が支配する国家、そうでなくては国家の背骨が凛と保てぬ。このことは王制であろうとも貴族制であろうとも、我が国の如き共和制であろうとも、いかなる国制をとろうとも異ならぬ」
「人の恣意がまかり通る国家は、てっぺんから爪先まで腐敗するしかない。そのような国家はいずれ土台から崩壊すること万々間違いないのだ」
「ならば、功多き人物であっても、その科に目をつぶるということはあってはなるまい」
カトーは、視線を議席最前列に座る人物に向けた。
そこには、スキピオ・アフリカヌスが座っていた。
「ケンソル殿」
そのスキピオが口を開いた。
「何か仰せになりたいことがあるのならば、直截に申されよ。このスキピオ、事の理を聞き分ける耳は持っているつもりだ」
堂々とした声音が響いた。
スキピオ、五十二歳。この頃、病を経てやせ細り、豊かな髪は全て失われ、颯爽とした貴公子の風格は消え失せた。だが、その語気は若き頃と変わらぬ力強さがあった。
「このスキピオに何か科(とが)ありと仰せか」
その言葉に、カトーは薄ら笑いを浮かべた。
「それについては、トリブヌス・プレピス殿から申し上げてもらう」
「なに…」
スキピオの瞳が僅かに大きくなった。
護民官グラックスが姿を現したからだ。
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