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ハンニバルその後−閉ざされた途(さらに続き)
ここニコメディア、ハンニバルの屋敷。
「なに、プルシアス王子がお召しとな」
「ペルガモンとの講和も成りました。王子様は、一席設け慰労申し上げたいとのこと」
王城からの使者は淡々と用向きを述べた。
「ほう…」
ハンニバルは隻眼を僅かに見開いた。全く意外であったのだ。
(あの王子が…)
プルシアス王子は、ローマとの関係を慮り、ハンニバル招請を喜ばず、王に盛んに諫言していると聞こえていたからであった。それが自分をもてなすとは、どういう風の吹き回しであろう。
案の定、マニアケスは警戒の色を浮かべ僅かに首を振っている。
(御断りなさいませ)
しかし、ハンニバルはこう答えた。
「承知しました。速やかに参上いたします」
(王子は次代のビュテニアの王者。ここは機嫌伺いも悪くはない…)
そう判断したのだ。
使者が帰ると、マニアケスは明白に反対した。
「プルシアス王とフラミニヌスがキュジコスで様々にやりとりしておるとか。どのような思惑が働き出しているやも知れませぬ。しかもプルシアス王子は酷薄無残、その相、険悪狡猾。油断なりませぬ」
居候先の王太子に、容赦なく君主落第の烙印を押した。
「はは」
ハンニバルは笑った。
「そなたのように警戒の眼差しで見れば、全てが疑わしく見えよう。講和は成ったのだ。事態が変わるとすれば、もう少し先のことであろうよ」
それは自身のもやもやするものを敢えて打ち消すかのようであった。
その言葉にマニアケスは悲しげな眉を浮かべた。
(細心の化身と謳われた閣下。かつては僅かな不安にも手当てしたものであるが…)
だが、彼女は、もはやこの人物と運命を共にするしかない。
「かしこまりました。ならば、お供仕ります」
「うむ」
ハンニバルは衣服を換えると、マニアケス一人を連れ屋敷を出た。
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