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少女コルネリア(続き)
「果たしてお受けしてよいのやら…」
誠実なグラックス、なおもためらった。
スキピオはその手をぐっと握りしめた。
「グラックス殿。頼む。受けてくれ。我が娘の、我が一族の力になってやってくれ」
それはまさに懇願であった。
彼が懇願する理由はあった。
長男プブリウスは病弱で、将来の栄進を期待できなくなっていた。弟ルキウスも昨今のカトー一派の攻勢に押され、随分立場が弱くなっていた。
数年前の栄光が嘘のように、スキピオ家は弱体化していたのだ。
スキピオ家には、将来有望な人物の助けが必要不可欠であった。
グラックスは微笑んだ。
「分かりました。喜んでお申し出を受けましょう」
「おおお」
スキピオは喜悦した。
彼は見抜いていた。この人物が、いずれローマ政治に重きをなす人物であることを。
「ならば…」
スキピオは幼い愛娘の手を引き、グラックスの前に立たせた。
そして、膝を床に付き、その耳許に言って聞かせた。
「コルネリア。よくお聞き」
「はい」
「この人物がそなたの許婚だ。未来の花婿殿だ。挨拶しなさい」
「はい」
少女は素直に頷いた。
恐らく父の言葉の半分も理解出来なかったろう。
「コルネリアです。よろしくお願いします」
とにかく、たどたどしく挨拶した。容儀まことに上品、名門の躾の賜物だ。
グラックスは、その少女の手をそっと取った。
「グラックスです。以後、お見知りおきを。未来の花嫁殿」
それから12年後の紀元前172年。
グラックスとコルネリアは結婚した。
グラックス四十五歳、コルネリア十八歳。
当時としても異例の年齢差であったが、この夫婦はとても仲睦まじかった。
そして、人望篤きグラックスは昇進に昇進を重ね、グラックス・マイヨール(大グラックス)と称されることになる。
「まずは夫に、そして、この結婚を約束してくれた父アフリカヌスに感謝しなければ」
コルネリアはよくそう言っていたとか。
その彼女は、やがて二人の子を産んだ。
ティベリウスとガイウスの兄弟である。
いわゆるグラックス兄弟である。この二人が後にローマ史を彩ることになる。
が、そのことをここで語るのは相応しくない。また別の機会に譲るとしよう。
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