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ハンニバルその後−ビュテニアの日々(続き)
アンティオコスの地を追われたハンニバルは、覇者ローマの大罪人。アパメイア和約発効当初、どこの国も匿ってはくれなかった。やむなく、ポントス王国やらカッパドキア王国、アルメニア王国など、アジアの地をさまよい、逃亡の月日を送った。
「この上は、スキタイもしくはインドにまで逃れるしかないのかも知れぬ」
ハンニバルは覚悟を決めた。スキタイは北方の草原地帯、インドはこの時代東方の最果て。いずれもローマ・ギリシア世界からすれば人外の地に等しい。
ならばいっそ自決をという覚悟でもあった。
「お待ちを。一つ受け容れてくれる可能性のある地がございます」
諌めたのはマニアケス。彼女は、ずっとハンニバルに付き添っていた。
「どこだ」
「ビュテニアにございます」
「ビュテニア…ローマの同盟国ぞ」
「そうですが、同国は、西にマケドニア、南にペルガモンの両大国に挟まれております。さらに、東からはポントス王国の攻勢。説きようによっては閣下を受け容れてくれる可能性は充分にございます」
プルシアス一世は名うての策士。アンティオコスとの対抗上ローマと同盟を結んだものの、決してローマに盲従するつもりはなかった。だから、有力な手駒を欲していた。
そのため、プルシアスは、ハンニバルの密かな希望に喜んで応じた。
「貴君ならば、いかなる敵の襲来にも、我が王国を守ってくれよう」
この時、ビュテニアがペルガモン王国と対立していたことも幸いした。ペルガモンはローマの最も信頼する同盟国。即ち、ビュテニアは半ばローマの規矩(きく)から離れていた訳だ。
こうしてプルシアスの宮廷に身を寄せることとなった。
ハンニバルは安堵したが、同時に苦笑いを浮かべた。
「結局、スキピオ君の言った通りになる訳か…。彼をピュロスに次ぐ三番目の武将に据えるべきであったかな」
スキピオは、自分がハンニバルならばビュテニアに身を寄せると、暗に勧めてくれていた。まさに運命はそのように辿っていく。それが面白くてならなかった。
「歴史とは不可思議の連続であるが、案外単純なのやも知れぬ」
だが、ハンニバルは不思議な安心感に包まれていた。彼が認める人物スキピオの指し示す地に向かうことが正しい方角なのだ、その確信を与えてくれたからだ。
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