新しいギリシア・ローマの物語2

179年、暴君フィリッポス、悪業の報いを存分に被り、死去

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 ハンニバルその後−駸々滔々(続き)
「父上。我々もローマの同盟国なのですぞ。ハンニバルを匿えば、同盟の信義に反することになり、ローマ軍に攻め込む口実を与えましょう」
 同盟の信義を裏切った国々がどうなったか、アイトリアやギリシア本土の諸国が実証していた。




「案ずるな」
 父王は冷笑した。
「アジアは複雑である」
 アジア(今日のトルコ=小アジア)には幾つもの王国が乱立していた。ペルガモン、ビュテニア、ポントス、カッパドキアの四王国が有力であったが、それ以外にもガリア人の小王国群、さらにはギリシア人の独立都市国家が点在する。これら諸国家は離散集合、対立と均衡を繰り返して来た。
 古来、この地域はこんな感じで、ために、アレクサンドロス大王もアンティオコス大王も、諸勢力の支配権を認め、彼ら諸侯を統御する間接統治を選択した。一つずつ攻め潰すとなると、大変な手間と犠牲を伴うからだ。
「ローマとて、この地域の秩序を重んじぬわけにはいかぬよ」
 そこは在位五十年の自信だ。戦乱に明け暮れたこの地域で、長らく王位を保つこと自体稀有のこと。




「王君」
 そのハンニバルは進言した。
「いずれ、エウメネスの要請に応じ、ローマが使節団を派遣して来るでしょう」
 既に、エウメネスの使者が頻々とローマに赴いていることは伝わっていた。
 当然、それはビュテニアを弾劾するものでローマの仲裁を仰ぐ使節たちだ。
「ですから、それまでになるべく勢力を拡大しておくべきです」
 それはペルガモンに大攻勢をかけよということだ。




「ほう」
 王は目を丸くした。
「ローマを刺激せぬか」
「なんの」
 ハンニバルは笑った。
「今、ローマが注視しているのは、ここではありませぬ。マケドニアにございます」
 この時(紀元前183年)、マケドニア王フィリッポス五世の暴政いよいよ凄まじく、ローマ元老院はフィリッポス王の一挙手一投足を警戒していた。




「マケドニアとの関係を切り札となされませ」
 いざとなればフィリッポスとの敵対も辞さず、ならばローマとも和解できよう、ということだ。敵の敵との関係は、国際関係では有力な手札となる。
 ビュテニアは、対ペルガモン戦にフィリッポス王の援軍を得ていた。マケドニアにとってもペルガモンは宿敵だからだ。というより、ローマへの当てつけでもあったが。

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