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ハンニバルその後−駸々滔々(さらに続き)
「とはいえ、妻の実家だからの…」
王は渋い顔をした。
彼はフィリッポス五世の妹を妻に迎えていた。ここだけではない。ヘレニズム諸国は姻戚関係で複雑に絡み合っていた。
王家の婚姻は、近世まで、国家安全保障の重要な政策遂行手段であった。
「義兄君はなかなか恐ろしい人物だからの」
プルシアスは心底恐れていた。
なにせフィリッポス王の謀略は見境ない。彼の怒りを買えば、どのような危険が迫るか知れたものではなかった。
「はは」
ハンニバルの隻眼が笑みを浮かべた。
「フィリッポス王も、今はビュテニアに構う余裕などありますまい」
マケドニアが対ローマの交渉に忙殺されていることを指摘した。
「それゆえ、ここは行動あるのみかと。さればこそ後に譲ることも出来るというもの」
それは、取れる時に取れ、ということ。そうすれば、押し込まれて譲歩しても国益を保持出来る、そういうまことに厳しい国際政治の現実であった。
紀元前183年初夏。
ローマ使節団がギリシア本土の諸国を経て、アジア諸国を歴訪すると伝わって来た。
「使節団を率いるはフラミニヌスらしいぞ」
それが伝わると、ビュテニアとペルガモンの戦争も自然と中断した。
ギリシア世界では、フラミニヌスの名声はなおも燦然と輝いていた。
彼が来てもなおも戦闘継続となれば、ローマの威光を傷つけることになり、ひいては自国の立場が不利になることは明らか。特に、ビュテニアは、ローマの意向に背く形で戦争を続行していたから、率先して停戦した。
こうして、戦争は終息に向かったが、これがハンニバルの運命に急旋回をもたらすこととなった。
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