新しいギリシア・ローマの物語2

179年、暴君フィリッポス、悪業の報いを存分に被り、死去

序章−ある王国の物語

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 シキュオンのアラトス-下(さらに続き)
 コリントス解放の成功により、アラトスの名は雷鳴の如く天下に轟いた。
 フィリッポス二世、アレクサンドロス大王の登場以降、ギリシア諸国はマケドニアには全く歯が立たなかったのである。それを見事に打ち破ったのだ。
「これは我らも味方に付いたほうが良い」
「そうじゃ。今こそマケドニアから独立するときだ」
 独立の機運にわかに高まり、メガラ、トロイゼン、エピダウロスの諸都市がマケドニアとの同盟を絶ち、アカイア同盟に加盟してきた。
 さらに、アラトスは、将来のマケドニアとの対決に備え、マケドニアと敵対するエジプト王プトレマイオス三世と同盟し、その資金援助を受け軍備を強化していった。
 こうしてアカイア同盟は急速に強大化した。
「この機を逸してはならぬ」
 アラトスは、アカイア同盟の軍勢を率いて、メガラ領を通過しアテネに進攻した。アテネは、マケドニアと休戦条約を結び、外港ピレウスにマケドニア軍を駐留させていた。事実上マケドニアの影響下にあったからだ。
 アラトス率いる軍は、アテネ領に進撃するや、ピレウスに駐屯するマケドニア守備隊を打ち破った。そして、対岸のサラミス島に上陸し、大いに武力を見せつけた。


 その後もアラトスの活躍は続き、アルゴスの独裁者アリスティッポスを攻めて討ち滅ぼし、さらに、メガロポリスの独裁者リュディアダスには説得をもって独裁権力を捨てさせてアカイア同盟に加盟させた。
「ギリシア諸国を団結させなければ、マケドニアに勝ち抜くことはできぬ」
 そう考えたアラトス、外交手腕を発揮し、長年対立関係にあったアイトリア同盟と講和し、攻守同盟を締結した。
こうしてギリシア世界の二大勢力が手を結んだのであった。
 紀元前235年の頃には、アラトスの威望は絶頂に達した。



「待て、アッティクス」
 少年プブリウスは、執事の物語の腰を折った。
「なんでございます御曹司。これからが良いところというのに」
 アッティクス、興を妨げられた吟遊詩人の如く、眉を八の字にした。
「そんな顔をするな」
「御曹司が水を差すからにございます」
「それより分からないことがあるぞ。いや、不思議というべきか」
「なんでございます」
「今の話を聞けば、アラトスは一世の巨人ではないか。なにゆえクレオメネス王と対立するのか。全く理解できぬ」
「それはこれからの話で分かります」
「いや、話はもういい」
「え」
「行こう。その舞台に。ペロポネソスへ行こう」
「されど危険が…戦乱の巷に等しき有様。御父上も許しますまい」
「なにをいう」
 プブリウスは、聞かん坊の如く口を尖らせた。
「お前は、私の好奇心をこれほどまで掻き立てておいて、その実を見せないというつもりか。多くを語るより、見て聞くに如かず。行こう!そして、クレオメネス王の真実を、アラトスの真実を見聞しに参ろう!」
 執事アッティクス、目を丸くして、主人の息子の言うところを聞いていたが、やがて微笑んだ。
「…そうですな。これはまたとない見聞になるやもしれませんな」
「そうとも。さすが我がスキピオ家の執事よ。物分かりがよいわ」
「御曹司、褒めても何も出ませんぞ」
「そんなもの期待していないぞ。あ、道中、今の話の続きを頼む」
「はははは」
 こうして、少年プブリウスと執事アッティクスは、ペロポネソスの地に向かった。
 そこは、両雄激突する、旋回する歴史の舞台であった。


序章終わり。第一章アカイアの章へ。


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 シキュオンのアラトス-下(続き)
 戦いの様子はコリントス城外に待機するシキュオン兵からも見えた。
「おお!アクロコリントスから火の手が上がったぞ!」
「直ちに加勢に行くのだ!」
 シキュオン兵三百は城内に突入した。
 途中、遭遇したマケドニア軍の一隊を不意に襲って打ち破ると、そのままアクロコリントスに登っていった。
 彼らがアクロコリントス頂上の砦に攻め上がると、守備隊の兵士は大きく動揺した。
 というのも、彼らがひらめかせる剣と槍の穂先が満月の光に反射し、あたかも大軍が押し寄せてくるものと見えたからだ。
「ここにこんな大軍が攻め寄せて来るとは…」
「街は全て敵に押さえられているに違いない」
「もう駄目だ」
「逃げよう!」
 守備隊は途端に戦意を失うと、砦を捨てて、街に向かって逃げ出した。
 シキュオン兵は、それを存分に追い討ちし、コリントスの街からマケドニア軍をついに全て追い払った。
 

 その頃、ようやく夜が白々明け始めていた。そして、事態が明らかとなるや、コリントスの人々が家々から飛び出してきた。
「あのマケドニア軍がいなくなったと!」
「長らく我らを圧迫していた夷狄の軍隊が消えたか!」
 そう。マケドニアは、フィリッポス二世以来、コリントスに兵を置き、また占領していない時にも影響力を及ぼし、事実上属国の如くに扱ってきた。
 支配は百年余りに及んだ。それから解き放たれたのだ。
 驚きは狂喜に変じ、その喧騒はアゴラに集まり始めた。
 アラトスたちシキュオンの兵もアゴラに集まってきた。
 人々は、彼らを揉みくちゃにした。
 夜を徹しての激戦に、さしものアラトスも疲労の色を隠せなかったが、民衆の前に立つと、英気凛々たる気風を見せて演説を始めた。
「コリントス市民諸君!」
 アラトスは、大きな鍵を高々と掲げた。
「これは城門の鍵である。マケドニア守備隊の手にあったものである。諸君は、あのフィリッポス以来百年、ずっとマケドニアの支配下に置かれてきた。諸君は、今こそ独立を回復したのだ!古のコリントスびとの誇りを取り戻したのだ!」
 アラトスが市民の代表に鍵を手渡すと、大歓声が巻き起こった。
 アラトスは、一夜にて、難攻不落の要害アクロコリントスを攻め落とし、コリントスをマケドニア百年の支配から解放したのだった。


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 シキュオンのアラトス-下 
 アクロコリントスに通じる間道は、とても険しく、アラトス達はふうふう言いながら行軍した。
「皆の者!頑張れ!あと少しだ!砦さえ押さえれば、町にいるマケドニアの軍勢はものの役にも立たぬ!」
 やがて城壁が現れた。確かに、ここの壁は低く、手をかけて登れるほどであった。
「城壁にとりつくのだ」
 アラトス達は、そろそろと地を這うようにして城壁に接近した。
 ところが、この日、あいにくなことに満月であった。幸い、それまでは雲が彼らを覆い隠していてくれたが、今、その雲がみるみる晴れ渡っていく。
 砦を守るのは選りすぐりの精兵たち。彼らは油断なく巡回していた。
 ために、アラトスの兵は、たちまち発見された。
「あっ!敵兵だ!敵兵が現れたぞ!」
 砦の中は騒然となった。と同時に、矢がびゅんびゅん飛んできた。


「ちぃっ、気づかれたか」
 とある岩陰に隠れたアラトス、舌打ちした。
「アラトス様、いかがなさいます」
 アイギアスが訊いた。
「こうなれば一気に壁を飛び越えて砦を押さえる」
 アラトスは自身抜刀すると命じた。
「弓兵!砦の内に矢を射かけよ!」
 弓兵たちは、砦めがけて一斉に矢を射かけ始めた。
「わあっ」
 砦の兵はばたばた倒れた。
 その隙にシキュオン兵が壁に取り付いて登り始めていく。
「そうはさせるか!突き落とせ!こちらからも矢を射かけよ!」
 砦の将はペルサイオス。
 哲学者で、王室の家庭教師を務めたほどの人物である。その彼を置いたということは、アンティゴノスがいかにここを重視していたかが分かろう。
 ここは、ギリシア世界制覇を目論むマケドニア宿願の地。明け渡すなど思いもよらぬこと。従って、守将以下、砦の兵は必死に防戦した。
 城壁をはさんで激戦となった。

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 手前がコリントス市街にあるアポロン神殿。背後に聳える山がアクロコリントスです。
 この時代、ここが、ギリシア世界攻防の地となりました。


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 シキュオンのアラトス-上(さらに続き)
 ストラテゴスとなるや、アラトスは縦横無尽の活躍を始めた。
 彼がストラテゴスとなった翌年の紀元前244年、アンティゴノス二世率いるマケドニアの大軍が大挙南下し、コリントスに進駐した。そして、アクロコリントスに要塞を構築した。
 アクロコリントスとは、コリントスのアクロポリス(聖域)をいう。アテネやスパルタのアクロポリスが丘の上に築かれているのに対し、ここは標高574メートルの山頂にあった。従って、天下無類の要害であった。
 ここは、フィリッポス二世がギリシアに覇権を打ち立てて以来、マケドニアのギリシア統治の最重要拠点となっていた。ここに守備隊を配し、ペロポネソス諸国に睨みを利かせてきた。


「むうう、これを放置すれば、マケドニアは、コリントスを根拠にペロポネソス全域に勢力を拡大していくに違いない」
 アラトスがそんな危機感を抱いていた折である。
 そのアラトスの許に、コリントスに住む両替商アイギアスから密書が届いた。アイギアスとは、亡命時代のアラトスを何かと世話し、彼の志に共感していた人物である。
 書面にはこう記されていた。
『私の客に、アクロコリントス守備隊の兵がおります。その者は王や軍の物資を横領し、店にやってきて金に換えていきます。壁破りは死刑だと脅し、千金を得る道があるぞと唆すと、様々な秘密を語るようになりました。その者から砦の軍の配置、城壁のどこが高く低いか、つぶさに聞き取ることができます』
 壁破りとは泥棒のこと。当時の庶民の住居の壁は土で造られ、とても脆いものだったので、泥棒は、玄関や窓からではなく、壁を破って侵入したのである。
 とにもかくにも、この知らせにアラトスは喜んだ。
「これはよい。奇兵をもってアクロコリントスを奪うことができるぞ」


 アラトスは、シキュオン兵四百を率い、コリントスとの国境に向かった。
 コリントスの町近くの女神ヘラの神殿(へーライオン)でアイギアスたちと合流すると、三百人の兵はそこに残し、百人の兵を率いてコリントスの城に向かった。
 天下無敵のマケドニア軍が進駐しているとあって、城兵の警戒は薄く、アラトス達は梯子をかけて登り、なんなく城内に潜入を果たした。
 彼らは、市街を風の如く走り抜けると、内通したマケドニア兵の手引きに従い、アクロコリントスに登り始めた。
「アラトス様、あれが砦への近道にございます」
 そういって、兵は、絶壁に一筋走る、亀裂の如き細道を指した。その道はずっと上のほうに続いていた。
「ほう。どこに通じるのか」
「は。砦の城壁の一番低い個所に通じております。そこからならば容易に砦の内に攻め込むことができましょう」
「よし!登っていくぞ!」

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 紀元前235年頃のギリシア世界の勢力図です。アカイア同盟とアイトリア同盟が、海を挟んで対峙していることが分かります。また、マケドニア王国が絶えず南進しようとしていました。


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 シキュオンのアラトス-上(続き)
 弱冠二十歳にしてシキュオンの指導者となったアラトスは、周辺諸国を見渡した。
「シキュオン一国では大国と渡り合えぬ。いや、独立さえままならぬ」
 当時、最強を謳われたマケドニア王国が北方に君臨し、また、コリントス湾を挟んで対岸のアイトリア地方には、アイトリア同盟が勢力を誇っていた。両勢力とも、ギリシア世界の覇者たらんと、ペロポネソスを虎視眈々と狙っていたのだ。
 アイトリア同盟に加盟する選択もあったが、アラトスは考慮に容れなかった。
「アイトリア同盟の政治はよくない。私利私欲に満ち満ちている」
 アイトリア兵の強さは轟いていたものの、その評判はすこぶる悪かった。略奪や海賊行為に走り、果ては同盟国の領地すら荒らすこともあったからだ。
「この勢力は、早晩、行き詰まる」


 そこで、アラトスは、当時成立して間もないアカイア同盟に加盟することにした。
 アカイア地方とは、ペロポネソス北岸一帯の地域を指し、断崖ばかりの海岸に、痩せた土地の広がる地方だ。従って、大国と呼べる国は皆無で、所々に港町ともいうべき小都市と、山間の土地を細々守る小国が点在するのみであった。
 アラトスは、敢えてこの弱小の同盟を選択した。
 というのも、アカイアの人々は、独立精神旺盛で、ペロポネソス全域がスパルタの勢力下にあった時にもその支配に屈せず独立を守り抜いたほどであった。
「大国マケドニア、アイトリア同盟に対抗するためには、これらの人々と手を携えていくことが肝要」
 シキュオンは有力国。アカイア同盟はアラトスの申し出を喜び、加盟を承認した。
 加盟後、アラトスは、同盟指導者の命令、会議の決定を忠実に守り、かつ遂行した。
その公正無私な態度は、アカイア諸国の人々にも認められ、ついに彼は、同盟の最高官職であるストラテゴス(将軍。定員が一人なので最高司令官と訳すべきか)に選ばれた。
 紀元前245年、アラトス、二十六歳であった。

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