新しいギリシア・ローマの物語2

179年、暴君フィリッポス、悪業の報いを存分に被り、死去

第1章アカイアの章

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索

全28ページ

[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11]

[ 前のページ | 次のページ ]


https://www.blogmura.com/ にほんブログ村

ランキングに参加しています。お越しの際には応援の1クリックをお願いいたします(1日1回有効)



 プトレマイオスの迷い 
 ここエジプト王国の首都アレクサンドリア。
 港には、スパルタに送る物資を満載した船が鈴なりになっていた。
「よーし!碇を上げろ!」「帆を張れ!」
 今は夏。熱い南風が、船を、アフリカからエウロペ(ヨーロッパ)へと運んでくれる。
 そこに、北の空から一隻、帆をたたんで懸命に櫂を漕ぐ船がやってきた。


 エジプト国王プトレマイオス三世は、海を望む窓辺、心地よい潮風のそよぐ中、寝椅子の上にまどろんでいた。
「陛下」
「何か」
 王は横たわったまま応えた。
「マケドニアから使節が参っております」
「マケドニア?アンティゴノスの使者か」
「左様にございます」
 プトレマイオスは上半身を起こした。そして、
「ふーむ」
いつものように、あご髭を撫でた。
(スパルタとの決戦を目前に何を言って来た…。何らかの工作を施すためであろうが…)
「誰を寄越してきた」
「ファロスのデメトリオスにございます」
「ほう」
 プトレマイオスは少し驚いた。大物だ。
「よかろう。会ってみるとしよう」
 王は立ち上がった。


 謁見の間に出ると、そのデメトリオスが立っていた。
 その姿と恰好は、およそ使者らしくないものだった。
「イリュリアの摂政デメトリオスにございます」
 そう。正式なイリュリア国王は、亡きアグロン王の子ピンネスであるが、まだ幼かったので、彼が摂政として全権を握っていた。
 その権勢を身にまとうように贅沢な装飾に身を包んでいた。
 その見え見えの虚栄に、プトレマイオスは冷笑を浮かべた。
「よくぞ、かかる遠方に参られたものよな。御苦労なことではある」
 ねぎらいの言葉にも、どこか冷ややかな響きがあった。
「天下泰平のためならば、いかなる遠方でも厭いませぬ」
 デメトリオス、にっと笑った。
(見え透いたことを…)
 デメトリオスが海千山千の男であることは、王も知っていたからだ。
ギリシア人でありながらイリュリア王を頼り、その後、ローマと通じてイリュリア国家を事実上乗っ取った。その生涯は、およそ泰平を語るにふさわしくない。


「…して、何の用で参られたか。そなたは、マケドニアと友誼を結び、こたびのラケダイモンとの戦いにも大軍をもって参戦しているとか。余はマケドニアの敵ぞ」
「このたびは、陛下のおんため、まかり越しましてございます」
「余のため…一体どういうことだ?」
「陛下は必ずや後悔なさいましょう」
「なに」
 王は、ぎろりと鋭い眼光を見せた。
「小賢しいことを申す。なにゆえ、そんなことが言える」
「陛下は、クレオメネスの力を過小に評価されております。が、クレオメネスの力は侮り難いものあり」
「そんなことか」
 王は失笑した。
「クレオメネスと我が国は同盟を結んでおる。クレオメネスの勝利は余の望むところ。困ることなど何もない」
「ギリシア世界を制覇しても、でございますか?」
「なに」
「クレオメネスがギリシア世界全土を掌握しても、陛下はそのように仰せになることができましょうか」
「何を愚かな…」
 プトレマイオスは笑った。
 実のところ、王は、クレオメネスの力を、せいぜいペロポネソス全土を平定し得る程度と考えていた。要は、マケドニアの勢力が強くなり過ぎないよう、クレオメネスが睨みを利かせてくれればよいのだ。
 時が来たれば自ら海を渡り、マケドニア王国を滅ぼしてやろう、そしてギリシア世界もそっくり頂戴しよう、そう考えていた。
 富強を誇るエジプトの王が、クレオメネスを、自分の一部将のように思いこんだとしても、あながちおかしくはなかった。

イメージ 1


https://www.blogmura.com/ にほんブログ村

ランキングに参加しています。お越しの際には応援の1クリックをお願いいたします(1日1回有効)


 セラシアの地へ(続き)
 その頃、アンティゴノス三世率いるマケドニアの大軍は、テゲアの城に入っていた。
 こちらも、本国の援軍、さらにはアラトス率いるアカイア同盟の軍勢、メガロポリス・メッセニアの連合軍などが加わり、総兵力五万の大軍に膨れ上がっていた。
 テゲアは、これまでスパルタの忠実な同盟国であった。
 ために、テゲアの市民は、
「マンティネイアの二の舞になるのではないか」と戦々恐々であった。
 が、アンティゴノスは、かつての傲慢が嘘のように、テゲア市民に親しく接した。集まった指導者たちや町の長老たちを前に、こもごも言葉をかけた。
「このような大軍で押しかけて済まぬ。速やかに進軍いたすゆえ、しばし堪えてくれ」
「今後は、アカイア同盟の傘下に入るがよい。我がマケドニアはそれで満足じゃ」
 ために、テゲアの人々は大いに安堵した。
 彼らしくないといえば、これほど彼らしくない言葉はなかったであろう。
 彼も反省していたのだ。確かに、この時代、マンティネイアの如き裏切り繰り返す国を滅ぼすことは、決して悪ではないし、むしろ功業の一つに数えられていた。
 が、反省していた。
(マンティネイアを滅ぼしたことは、あまりよい結果につながっておらぬ)
 その反省である。あの乱暴が、マケドニアのギリシア平定を遅らせているといえないこともなかったからだ。
 しかも、テゲアは、スパルタ攻略作戦の後背地にあたる。この土地に不安を残したくはなかった。


「クレオメネスは、どのような陣容で我らを待ち構えておるのか」
「はい。こちらをご覧くださいませ、陛下」
 側臣メガレアスは地図を広げた。
「スパルタの北にあるセラシア、この街に程近い地点に、東西にわたって強固な陣営を築き、我が軍を待ち構えております」
「ふむ。兵力は」
「およそ二万。弟のエウクレイダス、勇将のエウリュクレイダスはじめ主だった将はみな従っている模様です」
「ということは、これを打ち破れば、すなわちラケダイモン滅亡、ということになるな」
「御意にございます」
「ふむ」
 アンティゴノスは冷たく微笑んだ。


「陛下」
 細身の男が進み出た。
「おう、デメトリオス殿、なにかな」
「一つ御献策いたしたいのですが…」


 デメトリオス。アドリア海内奥に浮かぶファロス島の支配者だ。
 その名からギリシア人であると知れるが、特異な経歴を有した。
 まず、ギリシア人が蛮族と蔑むイリュリア王国に接近し、アグロン王の信任を獲得して王国の将軍に任じられた。ところが、アグロン王死後の紀元前229年、イリュリアがローマと戦争を開始すると(第一次イリュリア戦争)、敵国ローマと通じ、戦争をローマの勝利へと導いた。
裏切りの代償として、戦後、ローマの後ろ盾でイリュリアの摂政となり、国の実権を握った。客将に過ぎなかった男が、王国を乗っ取ったのである。
 今や、彼は、イリュリア王の如き勢威を振るっていた。
 元来、マケドニア王家と密接な関係を結んでいた彼、この決戦に大軍を率いて参戦していたものだ。


 そのデメトリオスの進言に、アンティゴノスは鷹揚な笑顔を見せた。
「何なりと申されよ」
「セラシアは要害の地。城と周辺の砦に立て籠もられては、長期戦となるは必至」
「うむ」
 それは、アンティゴノスにとって、ずっと頭痛の種であった。
というのも、北方の諸部族がマケドニア本国を虎視眈々と狙っていたからだ。長期戦となれば、それら諸族が、豊かな国土を蹂躙することは明白であった。
「確かに困る。良い手はありますか」
「敵の補給を絶つことにございます」
「敵の補給…エジプトのことを申されておるのか?」
「はい。プトレマイオス三世王に、クレオメネスに味方することをやめさせます。補給に窮すれば、クレオメネスも砦に立て籠もっている訳にはいきますまい」
「ふーむ。それは理にかなってはおるが…」
 クレオメネス軍の補給は、エジプトから輸送される物資に依存している。それを絶つことが勝利の早道であることは、誰にでも分かること。
「しかし、我らマケドニア王家とプトレマイオス王家は犬猿。プトレマイオスは首を縦に振ることはあるまい」
 プトレマイオス三世は、クレオメネスをして、マケドニアを討たしめるために援助しているのだ。そう。エジプトにとって、これは代理戦争なのだ。
「いえ。プトレマイオス三世は聡明な君主。クレオメネスに味方することの非を説けば、必ずや迷い始める筈。この決戦を前に、一時でも兵糧の補給が止まればよいのです。スパルタはたちまち兵糧に窮しましょう。ならば、焦ったクレオメネスが飛び出してくること間違いありませぬ」
「なるほど…」
「是非とも、拙者をアレクサンドリアに御遣わしください。ならば、必ずやプトレマイオスを説得してご覧にいれましょう」
「ふーむ」
 アンティゴノス、すぐに頷かなかった。
(デメトリオス、荒業は得意な男だが…果たしてこのような機微を要する策をやり遂げることができるかどうか)
「陛下。これはアラトス殿にも賛同を得ております」
「ほう…」
 すると、アラトスは小さく頷いて見せた。何か成算があるのであろう。
 ならばと王は頷いた。
「よろしかろう。貴殿にお任せいたそう」
「ははっ」


https://www.blogmura.com/ にほんブログ村

ランキングに参加しています。お越しの際には応援の1クリックをお願いいたします(1日1回有効)


 セラシアの地へ 
 数日後、クレオメネス率いるスパルタ軍は出陣した。
 出陣前、プブリウス少年は
「是非とも供したい」と従軍を願ったが、これはクレオメネスから拒まれた。
「ならぬ。そなたは祖国の希望であろう。そんな者を連れていくわけには参らぬ」
 そう。プブリウスは、将来、法務官(プラエトル)、さらには最高官たる執政官(コンスル)に就くとも期待されていたし、それは、彼が貴顕(パトリキ)の名門スキピオ家の子であることからすれば、十分可能な目標でもあった。そんな彼だからこそ、父は、彼を遠くギリシアに遊学させていたものであろう。
 プブリウスとアッティクスは、クレオメネスの出陣を見送った。
 少年は、雄々しく輝く王を見上げた。
「王様、御武運をお祈りいたします」
「うむ。必ず勝利して戻る。それまで、この街にて人々を笑わせておれ」
 クレオメネスは笑った。
 総勢二万余の大軍が、スパルタの人々の歓呼に送られて出陣していった。
 クレオメネス以下、一方の大将に、弟でもう一人の王エウクレイダス、そして賢臣エウリュクレイダスが続き、さらにはパンテウス、テリュキオン、フォイビスという勇将が従った。まさに、スパルタ国家総力を挙げての出撃であった。


「アッティクス、どう思う」
「どう、とは?」
「セラシアの地を戦場に選んだことが吉と出るか凶と出るか、だ」
「難しゅうございますな。…ただ、セラシアは要害の地と聞いております。スパルタ軍は寡勢ゆえ、やむなき選択かと」
「都の近くに戦場は置くものではない」
「え」
「都に近いということは、ときに人を奮い立たせもし、勇気付けるやも知れぬ。が、ひとたび逆変あらば、たちまち祖国滅亡の危機に陥る」
「ならば御曹司は、この作戦には綻びがあると」
「あの偉大な王があり、そのそばをエウリュクレイダス殿、エウクレイダス王という賢人が固め、あまたの勇猛な人々が続くのだ。華々しい戦いを見せよう。…が、この都に近すぎる。それが不安でならぬ」
 少年は北の空を見た。ほんの向こうに浮かぶ雲の下が、おそらくギリシア世界の運命を決する地になろう。
「祈ろう、アッティクス。今の私には、クレオメネス王の勝利を祈ることしかできぬ」
「はい」
 主従二人は、北の空に向かって、クレオメネスに神の加護あらんことを祈った。


https://www.blogmura.com/ にほんブログ村

ランキングに参加しています。お越しの際には応援の1クリックをお願いいたします(1日1回有効)


 王を励ます(続き)
「なんだこれは」
 そう言いながら、ぱらと広げると、そこには嫋かな女性の文字が綿々と並んでいた。
「これは!母上の!」
 そう。今はアレクサンドリアにて人質生活を送っている、母クラテシクレイアの手跡に違いなかった。
『クレオメネス、元気にしておるか。こちらは、プトレマイオス王の慈悲深き配慮をいただき、日々ゆったりと過ごしております』
「は、母上」
 近況がつらつら書き連ねてあった。王族並みの待遇を受け何不自由ない生活を送り、プトレマイオスとも時折会って親しく言葉を交わしているとも。
『近頃、そなたの友人と名乗る、少年とその執事に会いました。愉快な人たちですね』
「お前ら、アレクサンドリアまで行ってきたのか」
 王は二人をじろりと睨んだ。
 どうやら、プブリウス少年とアッティクスは、アレクサンドリアにまで足を伸ばし、この手紙を手に入れたようであった。
「王よ。是非とも、先へお進みくださいませ」
 プブリウスは促した。
「生意気な、指図するな。なになに」
『その方たちのお陰で、遠く離れたこの地にあって、ギリシアの昨今の情勢がよく分かりました。あなたの活躍にもかかわらず、アンティゴノスの勢いますます盛んとなり、いよいよ決戦の時が近づいているとも聞き及びました。まことに心配でなりません』
 王は一字一句を凝視した。
『されど、思い起こして欲しいのです、我が母の祈りを。私は、あなたの大望のため、メギストヌス殿に嫁ぎもしました。それは、あなたの大望が、ギリシアを救う唯一の道と信じているからです』
「母上…」
『忘れてはなりません。あなたがヘラクレスを祖とするラケダイモン王家の末裔であることを。その振るう槍と剣には、ゼウスの御加護のあることを』
 王は、その手紙を丁寧にたたむと、押し頂くよう胸に当てた。


「確かに…確かに力をもらった。感謝いたすぞ」
 王は涙ぐんでいた。
「なんの。喜んでもらえれば…。が、もう一つ、このわたくしめから言葉を王様に捧げたいのですが」
「はは、なんだ。この際、洗いざらい申せ」
「では、お言葉に甘えて…」
 プブリウスはえへんと咳払いすると、途端に目を剥いた。
「こらっ!クレオメネス!」
 拳を上げて、いきなり叱り付けた。
 クレオメネス、びっくりして目を丸くした。
「何をしておるか!マケドニアといえば、かつて北の寒空に萎縮していた国に過ぎぬ!わがラケダイモンはおろか、あのテバイにもコテンパンにしてやられた国ぞ!その国に後れを取るとは何事か!絶対勝て!勝つのだ!勝たぬと許さぬぞ!」
 プブリウス少年は、あたかも、ラケダイモンの先祖たちの如く雷を落とした。
 そのあまりに大胆な振る舞いに、執事アッティクスは絶句した。
 クレオメネスも、驚きのあまり、ぽかんとしていたが、やがて
「はははは」と笑い始めた。
 そして、しばらく笑った後、神妙な面持ちとなった。
「このクレオメネス三世、ラケダイモン王位を歴代の王より継ぎし者。その名を辱めますまい。必ずやマケドニアの野望を打ち砕き、ラケダイモンの栄誉の旗を掲げて見せましょうぞ!地下にあって、しかとご覧くださいませ!」
 それは、真実、クレオメネスの叫びに違いなかった。
 それからしばらく、プブリウス少年とクレオメネスの二人は、真面目な顔をなおも突き合わせていたが、
「ふ」「はは」と笑い出し、
「ははは」「わははははっ」と高らかに笑い出した。
「確かに受け取ったぞ、小僧!力をもらった!」
 クレオメネスは、プブリウスを抱きしめた。
「お前は面白い。いや、大したものだ。大したものだのう」
 クレオメネスは、心底感動していた。
 ときに、人の機知は、勇気を与え、感動を与える。だからこそ、人は知恵を求めるのだ。



https://www.blogmura.com/ にほんブログ村

ランキングに参加しています。お越しの際には応援の1クリックをお願いいたします(1日1回有効)


 王を励ます
 この頃、クレオメネス以下スパルタ首脳は、連日、軍議を開いていた。
「兵糧の蓄えはどうだ」
 王の下問に、弟でもう一人の王エウクレイダスが応えた。
「はい。当面の兵糧は、国庫のありったけを傾け、なんとか確保いたしました。また、使者をプトレマイオス三世の許に送り、さらに兵糧物資を送られたしと申し遣っております」
「うむ」
 クレオメネス王は大きく頷いた。
「兵はどうだ。集まっておるか」
 その下問に、今度は賢臣エウリュクレイダスが応えた。
「はい。全土の若者が、祖国の危機に応じ続々駆けつけております。また、傭兵も一万ほど集まっております。総兵力二万ほどになっています」
 さすが、衰えたりとはいえ、軍国ラケダイモンの底力というべきであろう。この時代、ギリシア世界でこれほどの動員力を有するのは、マケドニアを除けばラケダイモンをおいて他はなかった。
 それからも、軍議では、陣の配置や、合図の方法など、細部にわたるまで詰めていった。
 しばらくして、休憩に入り、王や諸将は別室に下がっていった。


「ふーっ」
 別室に入った王は、椅子にどかっと座ると、大きくため息をついた。
「王よ、連日の軍議、お疲れでございましょう」
 記録官ソシュロスが気遣った。
「ふ。戦働きを思えばこれしきのこと。…されど、頭を使うというのも、肩が凝るものよ」
 クレオメネスは、右手で左肩をぐいぐい揉んだ。
 そこに、エウリュクレイダスが現れた。
「王様。その肩の凝りをとる珍客が参っておりますが」
 彼がニヤとして来客を取り次ぐと、クレオメネスはすぐ察した。
「はは。あやつらが参っておるのか」
「はい。忙しい折とは重々承知なれど是非ともお目通りを得たいと、別室にてずっと控えております」
 クレオメネスに懐かしげな笑みが浮かんだ。不思議な縁に結ばれた人と人。心地よい感覚が彼を包みこむ。
「…そうか。よし、会ってやろう。ここに通せ」
「はい」


「王様、お久しゅうございます」
「ははは。よく来たな」
 王は、つかつか近寄り、プブリウスの肩に手を乗せた。
「おっ、随分大きくなったのう」
「当年で十五歳になりましたゆえ。多少は成長しておりましょう」
 まるで、親戚筋の間柄のような会話が交わされた。そんな言葉が不自然でないぐらい、二人は親愛の情を互いに示していた。
「ふふ。して、何しに参ったのだ」
「王様に不足するものをお届けに上がりました」
「ほう。余に不足するもの…。なんじゃ、兵糧か、兵か?」
「いえいえ。そのようなものは、王様を支える人々が充分に整えてくださいます」
「では、なんじゃ」
「はい。力ある言葉にございます」
「言葉?」
「はい。王様は頂点に立つお方。それゆえ、人々に力を分け与えるお言葉をおかけなさいますが、王様に言葉を与える方はいません」
「ふーむ」
「それゆえ、わたくしが、王に力を与える言葉を持参いたしました」
「おかしなことを申すの。で、どんな言葉をもってきたというのか」
「まずは…」
 プブリウス少年がアッティクスを促すと、執事は懐より書付を取り出し、それを恭しく王に捧げた。


全28ページ

[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11]

[ 前のページ | 次のページ ]


.
アバター
Dragon
男性 / 非公開
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

過去の記事一覧

スマートフォンで見る

モバイル版Yahoo!ブログにアクセス!

スマートフォン版Yahoo!ブログにアクセス!

Yahoo!からのお知らせ

友だち(3)
  • ダイエット
  • 時間の流れ
  • JAPAN
友だち一覧

よしもとブログランキング

もっと見る

プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事