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※関係地図は2月7日掲載分を御覧ください。
傭兵の乱12−決戦へ
ここチュニス。傭兵軍本営。
「なにっ!ハミルカルがレプティス(現スース近郊)を攻め落としたと!」
総司令官マトスは愕然とした。
レプティスは、チュニスから南へ百三十キロほど離れた港町で、傭兵軍が食糧や兵をリュビア全土からここに集め、各地の部隊に補給する重要な拠点である。
「ハミルカルはカルタゴに撤退したのではなかったのか」
「どうやら、ハミルカルはハンノンと和解した様で…」
「な、なにっ、ハンノンと和解したと!」
マトスは驚愕した。
ハミルカルとハンノンの犬猿は、傭兵たちにも知れ渡っていたからだ。
「はい。そのハンノンの支援を受け兵力を増強するや、ハミルカルたちまち動き出し、南方へ矛先を向け、レプティスを攻め落としました。周辺都市も、その威勢に恐れおののき、続々城門を開いているとのこと」
「なんたること…」
マトスは、副将ハンニバルの死で戦力を失ったハミルカルはカルタゴに退却するほかなしと踏んでいた。そこを包囲し、何年かけてでも攻め落としてやろうと思っていたのだ。
そこに、このレプティス陥落の知らせである。
「閣下、これは放置できませぬぞ」
副官アルケラオスが言った。
「この調子でリビュア各地の拠点が押さえられては、我らはここに孤立いたします」
「それよりも何よりも…リュビア民衆の我らへの支持が失われる」
マトス最大の懸念はそれだ。
リュビアの地を蹂躙されるに任せては、マトスの声望は失われる。リュビア民衆のカルタゴへの怒りこそ、この反乱の原動力だからだ。
「兵を分散させることになるがやむを得ん。各地に援軍を送り、拠点を守備させよう。アルケラオスよ、直ちに手配いたせ」
「ははっ」
傭兵軍は慌ててリュビア各地に援軍を差し向けたのであった。
それから半月後。
「なんだと!差し向けた援軍が悉く打ち破られたと!」
「はっ!ハミルカル、我らの来援を予期していたと見え、それぞれの道筋に伏兵を配し、不意に攻撃してまいりました。ために、いずれの隊も潰滅したとのこと」
「くそっ。誰も臨機に対応できなかったのか。役立たずめが」
マトスは吐き捨てた。
傭兵軍の弱点は、将たる人材の不足であった。先に、スペンディオスら首領級の三人を失い、一層それが顕著になってきていた。総帥マトスを除くと、満足に兵の指揮を取ることもできなかったのだ。
「閣下。このままではハミルカルによって各個撃破されてしまいましょう」
アルケラオスは懸念した。
が、そんなことはマトスも分かっている。
「こうなれば決戦に打って出るしかないな」
マトスは歯を食いしばって空を睨んだ。
各地に兵を分散すれば、今の傭兵軍の陣容では、どうしても将才乏しき人物を指揮官とすることになる。
(それではハミルカルの思うつぼ。悉く殲滅されよう)
逆に兵力を一カ所にまとめれば、ハミルカルも全軍率いてやって来ざるを得ない。
(それを打ち破ればよいのだ。ならば決着する)
とはいえ、精鋭中の精鋭ハミルカル軍との対決である。その軍は、既に彼の盟友スペンディオスを滅ぼしている。尋常ならざる覚悟が必要だ。
「決戦…」
アルケラオスはごくと唾を呑み込んだ。
「勝てましょうか…」
当然の疑問を呈した。
「今、我らは五万の兵力を擁する。が、これでは足りぬ。リュビア全土に檄を飛ばし、さらに兵を集めるのだ」
「されど敵にはヌミディア騎兵や象軍がおります」
アルケラオスは当然の不安を口にした。
寄せ集めの歩兵戦力だけでは、ハミルカルに到底敵わないことは、スペンディオスの敗北によって明らかであった。
「我が軍にもガリア騎兵がいる。また、象軍については考えがある。十分に戦える」
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