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カルペタニ族
ハンニバルの快進撃は続いた。
翌紀元前220年春。ハンニバルは再び行動を起こすと、イベリア半島北西に大勢力を誇るウァッカエイ族の領地に進攻した。そして、遭遇した部族の大軍を撃破すると、ヘルマンティケ(現サラマンカ)を包囲した。
これを昼夜問わず猛攻を加え、僅か数日で陥落させると、さらに北に進み、アルブカレ(現トーロ)を包囲した。ここは要害で、さすがのハンニバルも攻めあぐねたが、ひと月に渡る激しい攻防戦の末、ここも攻め落とした。
ウァッカエイ族は抗戦を諦め、降伏を申し入れてきた。
ハンニバルは、ここでも、人質を取り、貢納金を納めさせる代わりに、領土を安堵してやった。
ハンニバル軍は意気揚々凱旋の途に就いた。
が、彼の敵は、この退却する時を虎視眈々と狙っていた。
大軍がタグス川(現タホ川)付近の山麓に隠れていた。
「ハンニバルを討つ時は今ぞ」
カルペタニ族の兵だ。
打倒カルタゴ、打倒ハンニバルのため立ち上がったものだ。
カルペタニ族は、タグス川流域を支配するイベリア最強の部族である。
新カルタゴの総督政府とは、これまで特に対立することはなく推移してきた。カルタゴの勢力がここまで浸透するに至らなかったということもあるし、カルペタニ族の力にバルカ家が一目を置いていたからでもあった。
そういう両者の関係もあり、ハンニバル軍のウァッカエイ族討伐に際しても、その領土通過を黙認していた。
しかし、ウァッカエイ族降伏は、ここにも少なからざる影響を与えた。
部族の首都トレトゥム(現トレド)の街には、戦いに敗れたウァッカエイ族の指導者たちが、ハンニバルの追及を逃れるため、大勢流れ込んでいたのだ。
彼らは王や長老たちに懇願した。
「貴公らが、もしカルタゴに降れば、もはやこのイベリアでは、バルカ家に敵対する勢力はなく、全土がカルタゴ人の所有物となり下がりましょう」
懸命に説いた。もし、カルペタニ族が、カルタゴとの和親を選べば、新カルタゴに身柄を送還され処刑されること間違いないからだ。
「あなた方の部族は、今はイベリア最強。されど、バルカ家の勢威が今以上に大きくなれば、あなた方といえども、太刀打ちできなくなりましょう」
大いに持ち上げ、大いに危機感を煽りたてた。
カルペタニ族の長老たちは不安を抱いたものであろう。
「よろしい。長老と主だった者を集め、会議を開きましょう」
こうして長老会議が開催された。
会議は紛糾した。
これまでどおり是々非々でカルタゴ国家と相対すべきであるとの意見も強かったが、
「今こそ好機。いかに強いとはいえ、ハンニバルはまだ青二才に過ぎぬ。戦勝に驕っているところを急襲すれば、討ち取ることは容易だ」
「そうだ。ハンニバルさえ討ち取れば、あとは雑魚だ。弟のハシュドゥルバルもマゴーネも、若年で取るに足りぬ」
と、開戦を求める熱気で充満した。
長年の平穏が戦いを求めるものか。平和を求める大人たちの声はかき消された。
こうして、長老会議は、対カルタゴ開戦を決議したのであった。
戦いの地はイベリアのど真ん中。しかも、一方はイベリアの雄カルペタニ族。
その檄が各地に飛んだこともあり、続々兵が集まって来た。
総勢十万。
その軍勢をタグス川北岸の要所に配置した。
「ふふふ。ハンニバルが意気揚々と渡河する際に一斉に襲いかかり全滅してしまうのだ」
勝利すれば、一躍イベリアの覇者となる。
カルペタニ族の兵の戦意は旺盛であった。
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