|
https://novel.blogmura.com/novel_historical/ にほんブログ村
↑
ランキングに参加しています。お越しの際には応援の1クリックをお願いいたします(1日1回有効)
筋道を通す
「こいつ、離せ!離せったら!」
プブリウスは、手足をばたつかせ、腕を振りほどこうと、もがいた。
が、その腕は、有無を言わさず、彼の体をずるずる引きずっていく。
使節団の控え室に至り扉が閉められると、その腕がすっと解かれた。
「申し訳ございませぬ。御曹司」
腕の主は、深々と頭を下げた。
ラエリウスであった。
「何だ。君だったのか」
プブリウスは、やれやれと首筋をさすった。そして、安堵したものか、
「随分乱暴じゃないか」と、今度は苦情を述べた。
「は。御曹司のこと、必ず無茶をするに違いないとフラミニウス閣下の仰せに従い、控えておりました」
顔を上げたラエリウス、にこと笑みを浮かべた。
そう。プブリウスが、今回の使節団一行に紛れこめたのは、監察官フラミニウスに頼み込んでのこと。
「お主の父上スキピオ殿に頼めば良いではないか」
フラミニウスは、はじめ難色を示した。
「いえ、あの父が許す筈がありません。かかること」
「では、なおさら許可する訳にはいかんではないか」
子の行状の監督権は、全て父親に帰属する。
「そこを英邁なる閣下の御力に縋るのでございます」
プブリウス、得意の褒め殺しにかかった。
「また、そのようなことを」
「いえ、本当でございます」
プブリウスは、その後も、あらん限りの美辞麗句を並べたて、ついにフラミニウスの許しを得て、従者の一人に加えられたものだ。父スキピオには内緒で。
が、当然のことながら、フラミニウスは釘を刺してきた。
「お主は、あくまでも従者であるぞ。そのことを忘れるなよ」
「勿論でございます。大人しく成り行きを見守っております」
素直にそう答えておいたプブリウスであったが、フラミニウスはそれを鵜呑みにせず、見習士官ラエリウスに言い含めておいたものらしい。
「ちぇっ。フラミニウス殿はお見通しであったか」
「はい。あの御曹司が大人しくしている訳がないと仰せになられ、万が一のときは取り押さえよと厳命されました」
ラエリウスは笑った。
「でもな、ラエリウス」
「はい」
「これは最後の機会かも知れなかったのだぞ」
「最後…とは何の?」
「平和に戻る機会だ」
「平和、どういうことにございます?」
ラエリウスは、きょとんとして首をかしげた。
彼にとっては、奴隷の境遇から解放してくれた恩人フラミニウスの命令は絶対。それ以外のことに頓着していないのであろう。
プブリウスは苦笑した。
「まあ、お前にこんなことを言っても仕方がない。どうせ、国政に携わる父やフラミニウス殿がお決めになることだからな」
そういうと、彼は、ふてくされたように長椅子に寝転がった。
そして、大胆不敵にも、寝息を立てて、眠り込んでしまった。
|