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複雑な国制(続き)
執政官(コンスル)を選出するのは民会である。元老院ではない。
が、ローマの民会の仕組みは複雑である。
現代に生きる私たちは、ギリシアやローマの民会を、国会によく例える。国に唯一の最高の意思決定機関である、と。
確かに、ギリシアの都市国家の場合、この説明がおおよそ当てはまる。
だが、ローマは違う。
ローマには、構成員や議決事項の種類により、三つの民会が存在した。
物語の世界を理解するために、ここで簡単に説明しておこう。頭の片隅にでも置いていただければ、と思う。
一つはクリア民会。これは氏族代表による集会だ。が、この時代には既に形骸化していた。この物語でも二度と言及しないから、忘れていただいて結構である。
次に、トリブス民会があった。トリブスとは、元来『部族』を意味するが、都市化が進むと『地区』との意味に変じた。この民会は、要は地区代表の集会である。
この民会は、全市民の意思決定をなすものとして、この時代、次第に重要度を増していた。立法は勿論、財務官(クワエストル)やパトリキ出身の按察官(アエディリス)の選出は、この民会でなされた。
最後に、古来より最も重要とされたのが、ケントゥリア民会(コミティア・ケントゥリア)である。
ケントゥリアとは、『百人隊』という軍隊の小隊のこと。国民皆兵の原則をとるローマでは、その軍制を国政の意思決定にも反映させた。
即ち、市民を、その有する財産によって、各階級(クラシス)に分類する。
最上級は、騎兵のケントゥリア。十八隊のケントゥリアがここに所属した。騎兵は、高価な馬を飼育し、重装備が必要となるから、富裕市民がここに配属された。ほとんどがパトリキであったろう。
次の階級からは歩兵のケントゥリアとなる。
歩兵の階級の第一は、完全装備をなしうる財産を有する市民。八十隊のケントゥリアがここに所属する。完全装備とは、兜、丸盾、脛当て、胸当て、のこと。これを全て自弁できる富裕な市民がここに配属された。
歩兵の階級の第二は、胸当て以外の装備を用意できる者。二十隊のケントゥリアがここに所属する。歩兵第一の階級に次ぐ資産を有する市民たちがここに配属された。
以下、装備が減ずるに従い、各階級のケントゥリアに配属される。
つまり、市民は、軍隊組織を編制するように、各階級に所属する。全てで百九十三のケントゥリア(百人隊)があったと伝えられる。
しかも、投票は、市民一人ずつではなく、ケントゥリア単位で行われた。即ち、百人前後の市民が、隊としての意思を決定して、各隊の代表者が民会に臨むことになる。
ということは−よく注意してほしい−騎兵のケントゥリアと歩兵第一のケントゥリアで既に九十八隊なのだから、ここでもう過半数である。しかも、上の階級から議案の賛否を聞いていくという議事進行をとったから、下の階級にいくまでに、民会としての意思決定は終了してしまう。
即ち、パトリキや富裕な一部有力プレプスたちによって、ローマの最高意思決定機関は牛耳られていたということなのである。
このケントゥリア民会で、監察官(ケンソル)、執政官(コンスル)、法務官(プラエトル)という上級政務官の選出をなし、和戦の決定も、条約の批准も行われた。トリブス民会が重要になったとはいえ、なお、ここがローマ国家の最高意思決定機関であった。
ケントゥリア民会は、ローマ城外のマルスの野(カンプス・マルティウス)で行われた。というのも、軍隊は凱旋式を除き市内には入れないから、軍制を前提とするケントゥリア民会も市内では行われ得ないという建前なのだ。
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