新しいギリシア・ローマの物語2

179年、暴君フィリッポス、悪業の報いを存分に被り、死去

第5章アルプスの章

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 アルプス越え−閉ざされた渓谷(さらに続き)
「おい!本当に大丈夫なのか!」
 ボイイ族の王マガルス、不安に駆られ、最前から執拗に問い質していた。
 が、案内人の男は、
「大丈夫だ!俺に任せろ!」
 と同じ言葉を繰り返すばかり。熱にうなされたように、人の言葉が耳に入っているようにも見えない。
「…貴様」
 マガルス、顔面蒼白になっていた。本能が生命に迫る脅威を知覚したに違いない。
「貴様が大丈夫だというから全軍こちらに進んでいるのだぞ!」
 詰め寄り相手の胸倉をぐっと掴んだ。
 剛腕マガルスに締め上げられ、案内人はジタバタもがいた。
「ち、ちきしょう、離しやがれ!」
 腕を振りほどくと、数歩下がり、げほげほ咳き込んだ。
 そして、そこにうずくまり動かなくなった。



「おい、どうした…」
 マガルス、強く締め上げ過ぎたかと思った。が、それは違った。
「ふふ、ふはははは」
 案内人は笑いだした。
「何がおかしいっ!」
「わーっははははっ」
 顔を上げた案内人の人相は一変していた。
 ここで、ついに、その正体を現したのだ。
「そうとも!貴様らは死地に陥ったのさ!」
「なに…」
「お前らは絶対助からぬ谷に入り込んでしまったのさ!これ全て俺様の才覚!この俺様の勇気のなせる業!」
 目をらんらん輝かせ、得意満面、事の真相を暴露した。
「なんだと!」
 マガルスは愕然とした。
「ははは!お前らは、もうおしまいさ!はははは!」
「き、貴様!」
 マガルスは歯ぎしりし、腰の剣に手をかけた。
「わははは!俺はやり遂げたのさ!敵の大軍を一挙に滅ぼすという大事を!俺様は部族の英雄!未来永劫語られるであろうよ!」
 くるくる舞い踊りながら、彼は吠えに吠えた。
 完全に自己に陶酔していた。
「お前らは、ここから冥界の神の許に旅立つのさ!あばよ!」
 吐き捨てると、一散に駆け出した。



「この野郎!待て!」
「へん!待てと言われて待つ阿呆がどこにる!」
 マガルスの怒声が追いかけて来るが、男は構わず、前方の峡谷へ向かった。
(あの岩を曲がったところで合図を…)
 が、その時。
 何ゆえか、突然男は前につんのめり、そのままどおっと倒れ込んだ。
「おっ!」
 マガルスが駆け寄ると、男の背に短剣が深々と突き刺さり、既に絶命していた。
「これは…」
 振り返ると、遠くにマニアケスが立っていた。その目は妖しい光を放っていた。
「あいつ…あんな遠くから」
 マガルスは背筋を凍らせた。



 その彼女はマゴーネの許に駆け寄っていた。
「弟君っ!」
「マニアケスか…」
 マゴーネは、真相を知り、呆然自失となっていた。
「一刻も早くここを抜けましょう!」
 彼女が強く迫っても、マゴーネは、顔をこわばらせたまま、身じろぎしなかった。
「取り返しのつかぬ失態をしでかしてしまった。…兄上に顔向けできぬ」
「弟君!」
「申し訳ない…」
 死人のように顔色を白くしていた。あまりの大失態に、脳が思考停止となっていたものであろう。
 途端、ぱあんと音がした。マニアケスが彼の頬を平手打ちしたのだ。
 マゴーネはびっくりして彼女を見た。
「くよくよしている暇はありませんっ!」
「あ…」
「とにかく早く駆け抜けるのです!貴方様にこんな所で死なれては、わたくしこそ、先の総督様に顔向けできませぬ!」
 いつも冷徹な彼女の顔が、怒気で真っ赤になっていた。
「わ、分かった」
 ようやく我に返ったマゴーネ、馬上に戻ると、槍を高々と掲げて味方に令した。
「者ども!急げ!急いでこの谷を駆け抜けるのだ!」
 カルタゴ兵は駆け始めた。
 渓谷を吹き抜ける風は、鬼気たるものに変じていた。


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 アルプス越え−閉ざされた渓谷(続き)
 後方のハンニバルも、峰々に現れたガリア人部隊に気付いた。
 が、彼は落ち着いていた。あたりの兵にも心配する必要はないと知らせていた。
「マニアケス、あれをどう見る?」
「あれは擬兵でしょう」
「そんなことは分かっている。訊いているのは、我らを脅かして何を求めるつもりか、ということだ」
「罠を仕掛けた地が近いのやも知れませんな」
「ふむ」
 感ずる所は同じだったようだ。ハンニバル、僅かに眉間に皺を寄せた。
「マゴーネに注意しておくか…。伝令を出せ」
「私が駆けて参りましょう」
 マニアケスがそういった、その時。部隊の兵がざわめいた。味方が、右の険しい道筋をとったことに気付いたからだ。
「どうしてこちらに進む…?左の川沿いの方が平坦な道が続くではないか?」
「これは…敵の計略ではありますまいか」
 マニアケス、顔色を一変させていた。
 ハンニバル、咄嗟に後ろを振り返った。途端、愕然とした。
(これは…)
 人質たちは皆悄然とし、明らかに顔を土気色にし始めていたからだ。まるで供犠の祭壇の前に引かれゆく犠牲獣のようだ。
 恐らく、部族の長老に因果を含められたものに違いなかった。はじめから彼ら人質を、この峡谷で生贄として捧げるつもりでいたものであろう。



「しまった…図られた」
 ハンニバル、声を押し殺したが、苦渋の色は否みようがなかった。
「総司令、猶予はなりませんぞ」
 マニアケスの語気は切迫していた。
「案内人を始末しろ」
 ハンニバルは囁くように命じた。
「え?」
「案内人は、待ち伏せる者どもに合図を送ろうとするに違いない。その前に始末しろ」
「なるほど」
「急げ。時間がない」
「はっ!」
 マニアケス、脱兎の如く前方へ走った。
 ハンニバルは、彼女の背を見ながら、祈るような心地となっていた。
(僅かな時を稼ぐに過ぎぬであろうが…)
 彼は、既に暗澹たる事態を見通していた。が、稼いだ僅かな時が、少なからぬ将兵の命を救うことができよう。そう思ったし、心底願っていた。



 その頃、先頭の騎兵隊と象軍は、狭隘な谷へと突き進んでいた。
 現在のケラース渓谷である。
 歩兵は横に三人並ぶことさえ難しくなってきた。三人のうち一人は、川床を、膝下を濡らしながら歩くしかなかった。
 マゴーネも大いに不安を覚えたろうが、いったんこの地形に入り込んでしまえば、引き返すことは、もはや不可能であった。
「急げ!急いで荷駄を運ぶのだ!」
 続いて輜重部隊ががらがらと進んでくる。
 敵が狙うとすれば、この荷駄に他ならない。マゴーネも気が気でない。
 やがて、カルタゴ軍の隊列は、峡谷の中で細長く伸び切ってしまった。



 この時、山岳民の案内人の顔が、異様な歪みを見せていた。
 汗を顔一杯噴き出し、こめかみはぴくぴく痙攣している。生涯一度の興奮、それと背中合わせの生命の危機。それらが混ざり、極度の緊張にあったのだ。
(早く仲間に合図せねば…)
 そのことばかりを思っていた。
 そうだった。
 ハンニバルやマニアケスの看破した通り、これまで一連の行動は全て山岳部族の企み。兵糧を提供して歓心を買い、人質を差し出し信頼を獲得し、この峡谷に誘い込む。そのための犠牲であり媚態であったのだ。
(あの谷合まで進めば…)
 人質たちには、部族の長老が因果を含め、部族皆々のため死んでくれるよう説き伏せていた。提供した食糧は、冬を乗り越えるため貯蔵していた貴重なものだったが、これから獲得する物資に比べれば僅少なもの、そう割り切って策略の材料に供したものだ。


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 ギル川です。フランス領です。険しい峡谷の間を急流を伴って下っていきます。
 GNUフリードキュメントライセンスに基づいて掲載しています。

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 アルプス越え−閉ざされた渓谷 
 翌日、ハンニバル軍は、川筋が二つに分かれた地(現ギレストル)に到達した。
「どちらに進むのが良いのじゃ」
 先頭を進むはマゴーネ。迷った彼は、まずマガルスに訊いた。
「左に進むべきかと存じます」
 マガルスは即答した。
 左はデュランス川の本流。そのまま川沿いを進めば、現在のブリアンソン、ジュネーヴル峠に至る。比較的平易な道が続く。真っ当な選択だ。
 が、これに山岳民の案内人が強硬に反対した。
「右に進むべきかと存じます」
 右はギル川。峡谷へと続く。こちらは明らかに難路である。
「なぜだ。そちらは道狭く難所だぞ」
 マガルスが反駁した。
「確かに悪路の箇所もあります。されど、こちらの方がかなりの近道となります」
 確かに、地図を見ると、こちらは険難ではあるが、パドゥス川(現ポー川)流域に出るには最短の道筋。峠を下れば、そこはパドゥス川上流。ハンニバルの同盟者ガリア人の勢力範囲内だ。



「うーむ」
 マゴーネは悩んだ。
(兵糧のこともある。行程が短いに越したことはないが…)
 補給の問題について、彼は兄ハンニバルと苦悩を共にしている。部族から提供された兵糧も、早、尽きつつあった。
 それを見透かしたかのように、山岳民の案内人はさかんに続けた。
「総司令閣下は速やかにイタリアの地に入ることを望んでおられます。ならば、少々の悪路であっても突き進むべきかと存じます」
「なるほどの…」
 この数日、彼と山岳民との間も、かなり打ち解けてきた。これまでの案内も的確であったし、誠実に欠ける素振りも全く感じられなかった。
 念のためマガルスに目で確認しても、彼らの申し述べている事実そのものに偽りはないとの反応が返ってきた。
(ふむ…念には念を入れ、兄に相談するか)
 もし、腹に一物あらば、先に進むのは危険だからだ。
 マゴーネは手綱をぐいと引いた。中軍にいる兄の許に駆けようとしたものだ。



 が、その時である。
「あっ!将軍!」
 兵士たちが北の山々を一斉に指差した。
 突如、峰々に大勢のガリア人が現れ、咆哮を上げ始めたからだ。そう、まさしくそれは野獣の咆哮の如くに、谷間に轟いた。
「ああっ!」
 マゴーネは仰天した。
「将軍!このままここにいては不利な隊形を襲われます!」
 山岳民の案内人は叫び、右の道へ走り始めた。
 狼狽したマゴーネ、
「ええい、ままよ」
 と馬に鞭打ち案内人の後に続いた。
 こうして、ハンニバル軍は、ギル川沿いの峡谷の道を取ったのである。



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 アルプス越え−平和の使者(続き)
「おっ」
 マガルスが短く声を上げた。
「どうした?」
「閣下、前を」
 指差す方を見ると、現地の住民であろうか、草の冠を戴き、木の枝を手にした人々が現れた。平和を求める使節ということだ。
 なお、このあたりの住民もアロブロゲス族の一派である。
「私が話を聞いて参りましょう」
 マニアケスが駆けだした。そして、用件を手短に聞きとると、すぐに帰ってきた。
「何と申しておる」
「は。和平を求めたい、と。我らは閣下の軍勢に逆らって滅びた部族のことを耳にいたした。そのような末路は辿りたくない、人質を差し出しますゆえ、我らとの友好を約束いただきたい、そう申しております」
「ふむ…」
 ハンニバルは思案する顔となった。
 渡りに船ではあった。なにせ、消費する日々の兵糧は莫大。山間の行軍で補給もままならず、近隣の部族を攻めてでも兵糧確保を、と思っていた矢先だったからだ。
 とはいえ、申し出に飛びつくほど軽薄ではなかった。彼の脳裏には、先の山岳民との戦いがあった。
あの山岳民たちも、部族の王ブランクスの意向に逆らい、物資欲しさに大挙押し寄せて来たからだ。その経験が、ガリア人という人種に対する不信を増幅させていた。
(…が、申し出を拒めばどうなる)
 当然、すぐさま敵対勢力に変じるであろう。先の山岳民と同じく激しい戦いとなるであろう。
(それは避けたい)
 先の戦闘と山越えで一万余の兵が失われている。大損害だ。これ以上の消耗は避け、なるべく兵力を温存してイタリアに入る、それが彼の、只今の念願であった。



「よろしい。ここに連れて来るがよい」
 山岳民は、馬前に来て恭しくハンニバルに挨拶した。
 そして、マニアケスが訳したのと同じことを述べた。
「うむ」
 ハンニバルは小さく頷いた。
「有力者の子弟五十人を人質として差し出すならば、諸君の誠実を信じよう。そして、諸君が我らに協力してくれるならば、事なった暁には莫大な恩賞を授けるであろう」
 使者たちは直ちに了承した。



 その日、彼らは、約束通り人質を連れて来てハンニバルに引き渡すと共に、食糧を山のように陣営に運び入れた。
 そして、マニアケスを通じて、こう申し述べた。
「これが我らの偽らざる誠意。なろう事ならば、閣下の軍を行軍の平易な道へと案内いたしとうございますが」
 これも、ハンニバルの心くすぐる提案であった。安全な道を進むこと、これが兵糧確保以上のハンニバルの関心事だったからだ。だから、優秀な案内人を、喉から手が出るほどに欲していた。
(うーむ、どうしたものか)
 注意深い彼も悩みに悩んだ。もし、彼らが企みを抱いているのならば、死地に導かれることになる。とはいえ、
(ここで疑う態度を見せるのは、いずれにしろ良くない)
 そう考えると、また小さく頷いた。
「よろしい。諸君に道の案内を頼もう」
 ボイイ族の案内人マガルスと彼らを並べることとした。
 そして、マガルスには、こう言い含めておいた。
「案内人に怪しい節あればすぐに知らせよ」と。
さらに弟のマゴーネを呼び、
「そなたは兵糧部隊と象軍及び騎兵隊を率い先頭を進め」と命じた。
 これは、敵の奇襲があっても兵糧を守り、虎の子の象軍・騎兵隊に損害が及ばないように、との配慮からであった。
 ハンニバル自身は精鋭の直属部隊を従え、中軍にあって、人質を厳しく監視することにした。



 山岳民が案内人に立って三日間。何事もなくハンニバル軍は進んでいく。
 あたりの地形は、川岸に平坦な道が続き、人馬の行き交いも難しくない。そのため、大軍の行軍には好都合であった。兵が並んで歩くことができる訳で、全軍がより長距離を進むことができることになる。また、隊が横に広がれば、当然、敵の攻撃に対する備えが分厚くなる。
 この頃、ハンニバルは、人質となった山岳民らと談笑するようになっていた。
 無論、マニアケスの通訳を介して、であるが。
 そのマニアケス、少し懸念したものであろう。



「総司令」
「なにか」
「そのようにお心を許してしまってよろしいものでしょうか」
「ふ」
 ハンニバル、唇の端を僅かに上げた。
「心配いらぬ」
「なぜ、そのようにいえまする」
「彼らの顔を見ていれば分かる」
「どういうことで?」
「何かあれば彼らの顔色が変わって来るであろうよ」
 ハンニバルは、前を向いたまま瞳だけを動かし、人質たちを指した。
 人質とはいえ、建前は友邦の賓客という扱いであるから、至って和やかな空気の中に雑談などして歩いている。
 マニアケスは腑に落ちないのか、首をかしげた。
「ふふ。そのうち分かる。ともかく、険しい地勢に差し掛かった折には、彼らの様子をよく観察しておけ」
「かしこまりました」

 

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  現在のガップ、デュランス川上流域にある街です。フランス領となります。 

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 アルプス越え−平和の使者 
 翌朝。
 全ての戦利品を台車にうず高く積み上げた。台車に運びきれない物は小分けにして袋に詰め、将兵が身分の上下なく、分かち合って背負った。総司令官のハンニバルも副司令官のマゴーネも、鞍に袋をくくりつけている。
 また、捕虜となった山岳民も、手足に鎖をつけられ連行されていく。
 マゴーネは彼らを連れていくことに極力反対した。
「総司令。奴隷として売り飛ばす御算段でしょうが、これから兵糧が乏しくなることが予想されます。処刑してしまうか置き去りにしてしまいましょう」
 酷薄な意見だが、アルプスの険路を考えれば、情けをかけている余裕はなかった。
「いや…考えがある。こいつらには使い道があるのだ」
 ハンニバルは、そういった。



 進発の際、ハンニバルは命じた。
「火をつけよ!全てを焼き払え!」
 この飢寒の山中で住処を奪うことこそ最大の報復。
 何百年にもわたり営々生活してきた場所であったろう。自業自得とはいえ、それが、ハンニバルの手により炎となり、ぱちぱちと焦がす音と共に黒煙が上がっていく。
 捕虜たちは哀しげな眼で、故郷の家々が灰燼となるのをじっと見ていた。
 山岳部族は、眼前の欲望と引き換えに、生きる足場を失ったのであった。



 ハンニバル軍は、イサラス川支流(現ドラック川)の渓谷を、南へ南へ、断崖の上を、峡谷の間を、用心深く進んだ。
 先の山岳民との戦闘で多くの犠牲が出たが、それでも四万の兵力が続いていた。
 それから数日、何事もなく平穏に推移した。
 山岳部族を徹底的に打ち破ったことが伝わったものであろう。敢えて立ち向かう勢力は現れなかった。たまに、物資を奪おうとする盗人の集団が現れるが、その多くは捕縛するや、崖の底に突き落とした。
 やがて、河の流れは消え、さらに南へ山道を登り、ドーフィネ・アルプスを越え、現在のガップあたりに出る。このあたりまで来ると、地形は随分と楽になる。
 そこをさらに進むと、現在のデュランス川の上流に出る。
 現在の地名ばかりで表記するのは、当時何と呼ばれていたか皆目分からないからだ。



「おお!川だ!」
 先頭に立ち案内役を務めるマガルスは喜んだ。
 おそらく、この川筋を求めていたものであろう。ほっと安堵した顔となった。
「閣下、これからはこの川沿いを進むだけ。峠を幾つか越せば、そこがイタリアの地にございます」
「…そうか。案内よろしく頼む」
 ハンニバルは、このボイイ族の族長を、今は深く信任していた。
 が、その幾つかの峠こそが最大の難所。既に越えたドーフィネ・アルプスは、アルプス山脈の中では低い部類に属する。これから立ち向かう山々こそ、アルプスの主峰なのである。

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