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現在のティチーノ川(古名ティキヌス川)です。パヴィア周辺でポー川(パドゥス川)に合流します
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遭遇(続き)
その頃、ローマ軍も停止していた。
執政官スキピオは、手をかざした。
日没直前の夕陽眩しく、その光が野に反射し、きつく照り返っていたからだ。
「戦闘配置につけ!」「隊列を整えろ!」
スキピオの命令を受けた副官たちが、駆け回り怒鳴っていた。
投槍兵とガリア騎兵を前面、その後ろにローマ騎兵を配した。
こちらも闘志満々。マルキウス率いるローマ騎兵は先にヌミディア騎兵を打ち破っていたからだ。
「敵の斥候かの」
スキピオは手綱をぐっと握りながら訊いた。
「いや…それにしては兵数が多うございますぞ」
マルキウスが言った。
その間にも、敵の騎兵隊がみるみる迫って来る。
「あれは…」
プブリウスが、その大きな瞳をぐっと見開いた。
迫る敵の中央に、見覚えある人物がいたからだ。
それは、かつて学園アカデメイアでいつも遠目で見詰めた人物。そして、イベリア使節団に随行した折りに、間近に見詰めた人物。
「父上っ!」
その声は上ずっていた。
「どうしたプブリウス」
「ハンニバルです!ハンニバルがいますぞ!」
「なにっ!ハンニバルだと!」
その途端、執政官の周囲は騒然となった。いきなり大将同士の戦いとなったからだ。
単なる敵情視察の筈が、急転直下、決戦となったことに、ローマ兵は大きく動揺した。
特に、初年兵で構成される投槍兵の動揺は大きかった。
「ハンニバルだ!」「敵将ハンニバル自ら攻めて来たぞ!」
隊列が大きく乱れ立った。
彼らは第一撃を放つ役割。それが乱れては戦いの秩序が崩れる。
「落ち着け!」
スキピオは、その浮足立ちぶりを叱咤した。
そして、何とか鎮めると、すぐさま命じた
「槍を投擲せよ!」
が、遅かった。
槍の投擲は、相当の距離をおいてなさねばならないが、敵騎兵隊は間近に迫っていた。時を逸していたのだ。
駆けて来るは、百戦の猛者、人馬一体のヌミディア騎兵。
戦闘経験のない投槍兵は、猛然と迫り来る姿に恐怖した。
「馬蹄に蹴飛ばされるぞ!」
「駄目だ!間に合わない!」
怯えた彼ら、回れ右して後方に退き始めた。
投槍兵は投槍を一斉に放ち、それから後退すること、そう決められていた。それが槍を放ちもせずに持ち場を捨てたのは、よほど怖かったものであろう。
「馬鹿者っ!誰が下がれと申したかっ!」
「踏み止まれ!止まって槍を投擲せよ!」
味方の指揮官の怒声もお構いなしに、投槍兵の隊は、味方の隊列の間を通って、後方へ一目散に逃げていった。
次の瞬間。
「我がカルタゴの名を輝かせ!」「それ!一気に駆け破れ!」
マゴーネ、マハルバルを先頭に、カルタゴ軍の騎兵隊が突入してきた。
西地中海を二分するカルタゴとローマの両大国。
イタリアを舞台に、新たな戦いの火蓋がここに切って落とされた。
ヌミディア騎兵隊は右へ旋回し、ガリア騎兵の左を攻め立て始めた。
「それっ!それっ!」
ヌミディア騎兵は自在に馬を操り、巧みに槍を繰り出した。
他方、マゴーネ率いるカルタゴ騎兵は左から、つまりガリア騎兵の右に突っ込んだ。
「敵の右側に回れ!」
盾で守られない右側は弱点とされる。
投槍兵が逃げ出したこともあり、ローマ軍のガリア騎兵隊の左右は無防備となってしまっていた。そこを烈しく攻め立てられると、あっという間に崩れ立った。
「ようし!一気に敵将を討ち取れ!」
ハンニバル軍、ここぞと嵩にかかってきた。
だが、ローマ軍の備えはこれだけではない。
「そうはいくかっ!」
後方からローマ騎兵の隊がどっと繰り出してきた。
マルキウス率いる騎兵隊である。彼を先頭に、マゴーネの騎兵隊に斬り込んだ。
ローマ騎兵は勇猛、そして、先に勝利した記憶もまだ新しい。だから、勇敢にカルタゴ騎兵と斬り結んだ。
あたりは敵味方入り乱れての激闘となった。
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