|
https://novel.blogmura.com/novel_historical/ にほんブログ村
↑
ランキングに参加しています。お越しの際には応援の1クリックをお願いいたします(1日1回有効)
アルプス越え−渓谷の激闘(さらに続き)
前方では猛烈な激戦となっていた。
ガリア人の狙いは明らか。カルタゴ軍をこの渓谷に閉じ込め全滅させること。
当然、活路を求め進むカルタゴ軍と、そうはさせじとするガリア人の間で死闘が展開されることとなった。
「ええい!なんとしても突破しろ!」
マゴーネも、今は大童となり、群がるガリア人を懸命に斬り伏せ、とにかく道を切り開こうとしていた。ここを突破できなければ味方は全滅するしかないのだ。
「突破させるな!」
「皆殺しにしろ!」
ガリア人も必死だ。突破されては地の利を失い、形勢が一変しかねなかったからだ。
だから、彼らは峡谷の道をびっしり塞ぎ、まるで湧き上がるかのように次から次とカルタゴ兵に立ち向かった。
まるで地底から湧き群がるかのように押し寄せ来る敵に、カルタゴ軍は悪戦苦闘した。
「くそっ!きりがない!」
マゴーネ、ぎりぎり歯噛みした。
「ええいっ、象を前に進ませよっ!委細構わず踏み潰せ!」
と、悪鬼の如く吠えた。
もう象の巨大な圧力に頼るしかない。
象使いの激しい鞭打ちに象は咆哮し、ガリア人の群れ目掛け突進した。
「うわっ!」「ひいーっ!」
勇猛果敢なガリア兵も、これには腰を抜かした。
象にとっても絶体絶命の危機。それゆえ、狂ったように鼻を振り回し、立ちふさがるガリア人を容赦なく踏み潰した。
「ぐわっ」「ぎゃっ」
ガリア兵は次々象の足の下に犠牲となった。
「これはかなわぬ」
そして、象軍の群れの後ろから、決死のカルタゴ重装歩兵が遮二無二突き進んだ。
次第にカルタゴ軍が盛り返し始めた。
そこに、ハンニバル率いる精鋭がようやく追いついた。
途中、潰乱する兵をまとめ、ここに駆け付けたものだ。
「頑張れ!ハンニバルだ!」
ハンニバル直属の五千の精鋭が敵に突撃した。
先頭はマニアケス。
騎馬武者の姿でまっしぐらに敵中に突っ込むや、巨木のようなガリア戦士たちを、次々なぎ倒し始めた。
「おお!」
「我が軍にあのような勇者が!」
カルタゴ兵は味方の勇戦に大いに奮いたった。
彼らはマニアケスに続いて奮戦し、形勢は俄然カルタゴ側に傾いた。
そのマニアケスに、敵兵が一人立ち向かってきた。
巨漢だ。丸太のような槍を抱えている。見事な甲冑に身を包んでいた。
この隊を任された大将に違いなかった。
「名のある将と見た!我と勝負しろ!」
馬上、槍を構えて挑んできた。
マニアケス、じろと一瞥した。
「かかってこい」
「お前…女だな」
相手は驚いたようだ。
「だからどうした。ガリアとて女が武器を握ることはあろう」
「ふん、まあいい。名を名乗れ」
「マニアケス」
「ガリアの腕飾り…ふざけるな!本当の名を名乗れ!」
「本当の名か…」
マニアケス、苦笑し、遠くを見遣った。
オリッセス族の仲間達が全滅した時に、父母や部族から授けられたものを全て捨て去った。そして、先のイベリア総督ハシュドゥルバルの愛を受けてから、彼女は別の人格になっていた。
(生まれ変わった我が身。昔の名など何の意味もない…)
「そんなもの忘れたわっ!いくぞっ!」
「おおおお!こいっ!」
二人の騎馬武者は真っ直ぐに駆けた。
「くらえい!」
ガリア武者は唸りを上げて槍を繰り出した。
が、勝負は一瞬でついた。
マニアケス、相手の穂先をかいくぐり、崩れた体勢のまま槍をずんと繰り出した。狙い違わず、それはガリアの将の胸板を貫いた。
ガリアの将は、どうっと落馬した。
「あっ!」「げぇっ」
「大将が一撃で!」
ガリア兵は仰天した。
途端、ガリア軍の戦意は急激に萎えていった。明らかに尻込みする様子が見て取れた。
「今だ!突破しろ!」
ハンニバルを先頭にカルタゴ軍は激しく攻め立て、次第にガリア兵を峡谷の脇へとぐいぐい押しやり、ついに敵陣を突き破ることに成功した。
カルタゴ軍は峡谷を奔流の如くになって先に進んだ。
|