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−これまでのあらすじ−
アルプスを越えイタリア進出を果たしたハンニバル。連戦連勝し、さらに、これを迎え撃つため出陣して来た平民の英雄フラミニウスの大軍を、トラスメネス湖畔におびき寄せ、濃霧の中に奇襲して潰滅せしめる。
この非常事態に、ローマは、重鎮のファビウスを独裁官に選任する。
ハンニバルとファビウス、穀倉地帯カンパニアで、駆け引きを繰り返し戦線は膠着。決戦を諦めアプリア地方に退却を開始するハンニバルに対し、ついに要撃に動き出すファビウス。
これに対し、ハンニバル、火牛の計を施し、無事アプリアへ通過する。
軍内の不満にローマに帰還したファビウスに代わり指揮を取るミヌキウス。ハンニバル追跡を再開する。
ゲルニウムの戦い−上(続き)
ヌミディア兵の一隊も、それぞれが馬を引き、丘の下を流れる小川の岸に、思い思いに散開していた。そこで、のんびり馬に水を飲ませたり、岸辺に生える草を食ませたりしていた。
馬は、あちこちで喜びにいなないた。ここ数日、ろくに餌や水にありついていなかったから、はむはむ食み、ごくごく呑んでいた。
「はは。落ち着いて食事せよ」
「そんなに急ぐと体に悪いぞ」
この際にと、水をかけ、馬の体を洗ってやる兵もいた。このかいがいしさが、馬との信頼関係を培っているのであろう。
そして、そこここで、兵士らは様々に話に興じていた。
「戦利品は山と獲得したし、総司令の待遇も文句はないが…」
ハンニバルの、ヌミディア騎兵に対する配慮は並々ならぬものがあった。彼らこそ戦略の要であったからだ。
「それでも、早く国に帰りたいものだなあ」
「うん。父母が首を長くして待っていよう」
やはり、異郷の果てにあって話題の中心になるのは故郷のこと。
「なんの。このまま勝ち続ければ、ローマは間もなく音を上げよう」
「そうだそうだ。そうなれば、我らは晴れて故郷に凱旋できるのだ」
「いや。ここに広い土地を与えられ、妻子を呼ぶことも出来るのだ」
望郷の侘しさを紛らわすのは、眼前の戦果であり、ハンニバルが約束した恩賞だった。
しかも、そのことは、連戦連勝と莫大な戦利品により、日々現実味を増しつつあった。
と、その時であった。
「うん、あれは」
一人が指差した。
騎馬の一隊が、こちらに接近するのが見えたからだ。
「カルタゴ人の騎兵たちであろ」
「彼らも、ここらの草が良いと見たのだな」
「ふふ、少し遅いな。ま、我らは済んだから譲ってやっても良いがな」
遊牧の民らしく、自分たちの眼力を誇った。
「どれ、そろそろ行くか」
と、立ち上がった彼ら。
遠目の利く目で、騎兵のやって来る方を見た。途端、彼らは愕然とした。
「ああっ!」
「違うぞ!」
「ローマ軍の騎兵隊だ!」
ヌミディア騎兵は仰天すると、馬の方へと脱兎の如く走った。
が、その時には、喚声を上げてローマ騎兵が突っ込んで来た。
「それっ!一人残らず討ち取れ!」
率いるは、副官ガイウス・ラエリウスの隊。
ヌミディア騎兵がいかに世界最強とはいえ、馬から下りてしまえばただの歩兵に過ぎない。しかも、武装を半ば解き油断しきっていたのだ。
これまでの痛打のお返しとばかり、ローマ騎兵の格好の標的となった。
逃げ惑う彼らを、ローマ騎兵の槍が襲いかかった。
「わあっ!」「ひいっ!」
次々と突き伏せられた。戦うどころではなかった。
「逃げろ!」「丘の方へ逃げるんだ!」
鎧や剣は捨て、馬に飛び乗るや、鞭打って一目散に逃げるしかなかった。
とはいえ、騎兵は、まだ馬があるから良かった。
その頃、ミヌキウスの令を受け、ローマ軍は、散開するカルタゴ歩兵の部隊を次々襲撃していた。
元来、ローマ重装歩兵は野戦を得意とする。その軍団に、油断を衝かれてはひとたまりもなかった。カルタゴ軍は彼方此方でたちまち打ち破られた。
「わああっ」「ひいいっ」
カルタゴ兵は蜘蛛の子を散らすように逃げるしかなかった。
ミヌキウスは躍り上がって叫んだ。
「今こそハンニバルを討ち取る時ぞ!奮えや人々!」
「おおお!」
将兵は喚声を上げ応えるや、丘の上を目指し突進していく。
上にある敵の総大将を討ち取れば、この戦争は終わるのだ。
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