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※カンネーの平原です。この丘の麓が合戦場となります。GNU Free Documentation Licenceに基づいて掲載しております。
※合戦当初の両軍の隊形は4月23日の分を御覧下さい。
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カンネーの戦い−馬を追う
ラエリウスが、眼前の強敵との戦いに夢中になっていた、その時。
「ラエリウス殿!」
ローマ兵が叫んだ。
「どうした!」
「た、大変です!馬が…馬が追いやられていきます!」
喘ぐように告げた。
「なにっ」
振り返ると、ローマ騎兵が盾代わりにしていた馬が、カルタゴ騎兵に追いやられ、アウフィドゥス川を向こうに渡っていく。馬の扱いに慣れたイベリア人騎兵らが、ローマの馬をあやし、巧みに導いていく様が見て取れた。
「あああ…」
ラエリウスは呻いた。
カルタゴ騎兵が、あたりに展開するローマ兵めがけ突進していく。
「わわわ」「どうすればいいんだ」
盾を失った格好のローマ兵、迫るカルタゴ騎兵を前に右往左往した。
散開する歩兵は、騎兵の餌食になるしかない。
馬蹄に弾き飛ばされ、馬上から繰り出される槍に突かれ、次々と討ち取られていく。
「ふふ」
マニアケスが笑っていた。
ラエリウス、きっと振り向いた。
「これは…お前の企みか」
「ようやく気付いたか…」
そう。自身ラエリウスに一騎打ちを挑み、その注意を引きつけた。
「その間に」
と、味方に言い含めておいたのだ。
「徒歩のローマ騎兵が勇戦できるのは、馬を盾に用いているため。私がラエリウスと戦っている間に、あの馬どもを遠くへ追いやれ。ローマ騎兵の手薄なところから、うまく煽れば、馬は群れなし駆け出すに違いない」
これが功を奏し、ローマ騎兵の馬は、この戦場を捨てて駆け始めたという訳であった。
「うぬ!一対一の戦いの最中に策を巡らすとは卑怯であろう!」
「ははは。戦いに卑怯も何もあるものか」
マニアケスはうそぶいた。
「味方に勝利をもたらすこと、それこそ第一ではないか。お前のように、己一人の戦いに気を取られ、味方のことを忘れる者が愚かなのだ」
そう言い放った。
確かに、それは戦いの真実の一面を衝いている。
「くっ」
ラエリウスは顔を赤らめた。
マニアケスを睨んでいたが、くるりと踵を返すや、通りかかった馬に飛び乗った。
「勝負は後日!忘れるなっ、マニアケス!」
「おう、またかかってこい」
マニアケスは追わなかった。笑顔すら浮かべ、好敵手が去るのを見送っていた。
そう。彼女は所期の目的を達したのである。
馬という身を守るものを失ったローマ騎兵は、抵抗する術無く、アウフィドゥス川に追い詰められた。
「もう駄目だ」「逃げろ」
彼らの逃げ道は、対岸への道筋だけ。即ち、川を渡るしかなかった。
「それっ、敵を一人残らず討ち取れ!」
勇気を取り戻したハシュドゥルバルを先頭に、カルタゴ騎兵は川に馬をざぶと乗り入れ、逃げ惑うローマ騎兵を思う様に突き伏せた。
ラエリウスら一部の騎兵はしぶとく抵抗を続けたが、やがて支えきれず、血路を開いて逃れていった。
こうしてローマ軍の右翼を潰滅した。
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