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−これまでのあらすじ−
アルプスを越えイタリアに攻め込んだハンニバルは、カンネーの地でローマ軍を包囲撃滅。カンパニアの大半を勢力下に収めると(紀元前216年春)、ローマ最大の同盟国シラクサを味方に付けることに成功(紀元前215年初頭)。
が、そのシラクサでは新君ヒエロニュモスが暗殺され(紀元前214年)、親ローマ派政府が樹立される。ハンニバルから派遣されたヒッポクラテス、エピキュデス兄弟と、親ローマ派政府との対立が激化。
ヒッポクラテス兄弟は、傭兵を味方につけシラクサ本市に攻め込みローマ派政府を打倒。ついに政権奪取を果たす。
プブリウスとラエリウスは、ハンニバル派政権にアルキメデスが取り込まれることを防ぐべく、シラクサに潜入。だが、そのアルキメデスに不穏な影が忍び寄る。
やむにやまれず
年が明けて紀元前213年。
「先生、さあ、こちらへ」
テレクレスとプブリウスたちは、アルキメデスの手を引かんばかりにして、港の桟橋を先に進んでいた。
アルキメデスは、なにぶん著名人であるので、頭巾をかぶってもらっていた。
いや、警戒するのは市民の目だけではない。ヒッポクラテス一派の手が伸びていることが察知されたからであった。
「セイレーンがやって来た」
アルキメデスがいうことを、はじめ、何のことか皆目分からなかったが、ラエリウスがその正体を看破した。
「そやつは、ハンニバル秘蔵の密偵マニアケスに相違ありませんぞ」
すわとなった。
彼女が迫っているとなると、一刻の猶予もならない。
すぐさま船の手配をし、プブリウスたちとその従者、さらにテレクレスら学生たちと力あわせ、書物の山を、夜を徹して運び込んだのであった。
アルキメデスを船の中に導き得ると、プブリウスは、ほっと一息ついた。
「よし。すぐに帆を上げるのだ。テレクレスが来たらすぐに艫綱をほどき出航だ」
プブリウスは命じた。
そのテレクレスは、様子を窺いにアクラディナ地区に出ていた。
「ヒッポクラテス一派の動きを確かめて来る」といって走っていったものであった。
「ちっ、遅いな。何をしているのか」
プブリウス、しきりに船内から街の方を望んだ。
風向きも気にかかる。南風に乗り、一気に北上したいと思っていたのだ。
その時であった。
市街の方から、そのテレクレスが駆け戻って来た。
血相を変えていた。
「先生!た、大変です!」
船内に飛び込むなり叫んだ。
沈着な彼が、狼狽しきっている。
「どうしたのだ」
プブリウスが訊いた。
「町中の少年少女がアゴラに集められている」
「何があったのだ」
「それが…」
ちらとアルキメデスの方を見て、躊躇した。
「どうした?早くその先を言え」
一刻も早く出航したいプブリウス、先を急かした。
「ヒッポクラテスは子どもたちにこう申したそうな。アルキメデス先生はお前たちを見捨てた。だから、お前たちを神への生け贄として捧げると…」
すなわち、ヒッポクラテスは、兵に命じて大きな穴を掘らせ、子どもたちを生き埋めにして神への犠牲にしようとしている、と。そのため子の親たちは、狂わんばかりに悲泣の叫びを上げているという。
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