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−これまでのあらすじ−
アルプスを越えイタリアに攻め込んだハンニバルは、カンネーの地でローマ軍を包囲撃滅(紀元前216年春)。その勢いを駆ってローマ最大の同盟国シラクサを味方に付けることに成功する(紀元前215年初頭)。
が、そのシラクサで政変が起き親ローマ派政府が樹立されると、ハンニバルが送り込んだヒッポクラテス、エピキュデス兄弟は、傭兵を味方につけシラクサ本市に攻め込みローマ派政府を打倒。
さらに、マニアケスが非常の策を用い、天才科学者アルキメデスを味方に付けることに成功。ローマのマルケルス率いる大軍の襲来も、アルキメデス考案の新兵器により見事退けた(紀元前213年)。
シラクサを押さえたハンニバル、次の標的をタラスに定め、ローマに不満を抱くタラスの若者を抱き込む策を施した。
人の心を統御す
フィレメノスたちは、それから同志を密かに集め、反ローマ決起の計画を入念に練り始めた。様々な準備も整えていった。
そして、とある日。
フィレメノスは、狩猟と称して城の外へ遠出した。親友のニコンとトラギスコスも従っていた。
フィレメノスの狩猟好きは、よく知られている。だから、誰にも怪しまれずに城外へと出ることができた。
三人は、郊外に出て市民の目がなくなるのを確認すると、
「よし、一気に駆けるぞ!」
「おう!」「行こう!」
馬に鞭打ち、飛ぶように一路、西の方角を目指した。
彼らが城の外へ出て来たのは、密かに従者に命じて調べさせ、ハンニバルの軍が接近していることを確かめていたからだ。
三日後。
「あれは…」
向こうの山麓に、軍旗閃く長大な陣営が目に飛び込んで来た。
「ハンニバルの陣営だ…」
「よし、では行って来る」
フィレメノスが意を決したよう馬から降り立った。
「本当に一人で大丈夫か?」
ニコンが心配げに訊いた。
そう。フィレメノス一人で会見に臨み、もし、事が不調に終わり、捕縛されるようなことがあれば、残った二人はそれを同志に知らせるとの手筈であった。つまり、彼らも、ハンニバルをまだ完全には信用していなかった訳だ。
「大丈夫だろう」
フィレメノス、自身に言い聞かせるように言った。
「ハンニバルは寛仁の将と聞く。そもそも人の話に耳を傾けぬ男が、勝利を重ねられる訳もなし」
そういうと、フィレメノス、ハンニバルの陣営に向かった。
そのハンニバル、既に、フィレメノスたちがこちらに向かっていることを知っていた。
「マニアケス、うまくやってくれたな」
ハンニバル、会心の笑みを浮かべた。
「は。随分と細工を重ねましたが…」
マニアケス、元のカルタゴ軍将校のいでたちに戻っていた。
「ふふ。アフロディーテの女神にも化けたとか」
冷徹なハンニバルも、愉快そうであった。
「はい。恐れ多いことでしたが、策の効果はてきめんと」
彼女は苦笑いを浮かべた。
タラスに入り、不満を煽り、反ローマの勢力を形成すること。これを命じられてタラス市内に潜入していた彼女であった。要は、語るに足りる相手がいなければ、策の施しようがないからであった。
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