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−これまでのあらすじ−
アルプスを越えイタリアに攻め込んだハンニバルは、カンネーの地でローマ軍を包囲撃滅(紀元前216年春)。その勢いを駆ってローマ最大の同盟国シラクサを味方に付けることに成功する(紀元前215年初頭)。
が、そのシラクサで政変が起き親ローマ派政府が樹立されると、ハンニバルが送り込んだヒッポクラテス、エピキュデス兄弟は、傭兵を味方につけシラクサ本市に攻め込みローマ派政府を打倒。
さらに、マニアケスが非常の策を用い、天才科学者アルキメデスを味方に付けることに成功。
敵対を鮮明にしたシラクサに、ローマの名将マルケルス、大軍を率いて海陸から自信満々迫ったが…。
アルキメデスひとり(続き)
「な、なんたること…」
想像を絶する新兵器の出現に、さしもの猛将マルケルスも茫然自失となった。
「コンスル閣下」
プブリウスがいった。
「このままでは被害が甚大となるばかり。一度ご退却あるべきかと」
「うぬぬ…アルキメデス一人に…」
マルケルス、歯ぎしりした。確かに、アルキメデス一人にしてやられた格好。
が、味方は見たこともない兵器の出現と、巨大な威力に大混乱に陥っていた。
「引け!引き揚げるのだ!」
旗艦の合図に、ローマ艦隊は船首を返し、退却を始めた。
だが、それにもアルキメデスは、容赦なく攻撃を加えた。
城壁の上に、今度は投石兵器が現れた。これまで諸国に普及している型ではない。てこの原理を活かした、何百メートルもの射程を有するもの。
猛烈に射撃を開始した。
「うわっ!」「げっ!」
石は的確に船体をずどんずどんと打ち抜いた。
船内に海水がどっと流れ込む。
「わあっ、沈むぞ!」「逃げろ!」
ローマの多くの艦船があちこちで沈み始めた。
マルケルスの艦隊は、ほうほうの体で北の方角へ退散するしかなかった。
同じ頃。
北西のヘクサピュラの大門の方角から、エピポラエの台地に攻めかかったアッピウス・プルクルスの軍勢も手痛い目に遭っていた。
当初、プルクルスは自信満々であった。
なにせ彼には野望がある。
(戦果を挙げ、近くコンスル選出選挙に立候補せねばならぬ)
名門クラウディウス家の当主の彼、栄達を絶対の義務とされていた。
だから、初めから猛烈な戦意の下、采配を振るった。
「それっ、攻めかかれ!」
陸上における攻城戦はローマ軍の大いに得意とするところ。
防護壁を進めながら、城壁の真下まで道路を伸ばし、攻城塔を前進させ、最後には大きな破城槌をもって城壁を打ち砕く。
だが、ここにもアルキメデスの新兵器が威力を発揮した。
彼の弟子たちの指図により、エピポラエの台地に最新鋭の投石兵器をずらりと並べた。
「撃て!」
城壁から遠く離れたローマ軍陣地に、石がぶんぶん落下して来た。
「ば、ばかなっ、こんな遠くまで」
ローマ兵は仰天した。
さしもの勇猛なローマ兵も血しぶき上げ倒れていく。
プルクルスの本陣にも、容赦なく石が落下して来る。
兵は悲鳴を上げ逃げ惑う。
「ええい、射程が長いということは、城壁の近くは射程の外ということ!一気に城壁の下に押し寄せ取り付くのだ!」
明敏なプルクルス。新型投石兵器の弱点を即座に見抜いた。
だが、それについても、アルキメデスは抜かりがなかった。
ローマ兵が接近すると、かたんと城壁に穴が無数に開いた。
シラクサ兵が弓を構えているのが、視界に飛び込んで来た。
「あっ!」
身を隠す間もない。無数の矢が飛び出した。
至近からの一斉射撃である。悉く命中した。
「わあっ」「ぎゃあっ」
城壁に取り付くどころではない。ローマ兵は、ばたばた倒れるだけであった。
遠くには石が天高くから落下し、近くには矢が土砂降りとばかりに降り注ぐ。
「引け!引け!」
プルクルスは退却を命じるよりほかなかった。
その背後には、無数の犠牲が放置されていた。
この緒戦に、マルケルス率いるローマ軍は大打撃を被ったのであった。
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