新しいギリシア・ローマの物語2

179年、暴君フィリッポス、悪業の報いを存分に被り、死去

第8章シチリア・カンパニアの章

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 雹(続き)
 マハルバル、ハシュドゥルバル両将率いる騎兵隊が、そこに迫って来た。
「おっ!」「おおっ!」
 二人は手綱を引いた。
「覚悟を決めて戦うつもりのようだな」
「うむ」
「どうする?突っ込むか?」
「いや…」
 ハシュドゥルバルは首を振った。
「総司令が間もなく追いついて来よう。その判断を仰ごう」



 やがて、そのハンニバル率いる部隊が到着した。
 ハンニバル、ハシュドゥルバルより経過を聞くと、静かに頷いた。
「よろしい。少し様子を見よう」
 危機に際してのローマ兵の勇猛は凄まじい。それをよく知っていたからだ。
「敵は疲れております。一気に突撃してはいかがでしょう」
 マハルバルが言ったが、ハンニバルは首を振った。
「疲れているのは我らも同じ。覚悟を決めた敵の隊列にわざわざ飛び込むことはない」
「…でも、それでは決着がつきませぬ」
「ここは長く滞陣できぬ地。やがて動き出す筈。そこを襲いかかるのだ」
 ハンニバル、さすがによく観察している。
 ローマ軍は、狭隘な地形に追撃を防ぐため応急の陣を敷いているのだ。



 両軍の睨み合いが始まった。
 だが、すぐにローマ方が困惑することになった。
「コンスル閣下。このあたりは、とても陣を張ることは出来ませぬ」
 フラックスは、睨み合いが続くことを念頭に、陣所設営を命じていた。
 設営担当の熟練の副官がいうところでは、足場も悪く、水場も遠く、陣営構築に全く不適という報告であった。
「むむう…」
 フラックスは唸った。
 設営不適とはいえ、すぐに移動することは出来ない。
(ハンニバルのことだ。退却を始めれば、ここぞと襲いかかって来るに違いない)
 そう。ハンニバル軍は、柵も打ち付けずに、こちらを睨んでいるのだ。ローマ兵が動き出せば、即応して突撃して来るに違いなかった。
「どうしたものか…」
 フラックス、思案に暮れた。



 その時である。
 ぽつぽつと水滴が額に当たった。
「おっ、雨か」
 フラックスは空を見上げた。すると、真っ黒な雨雲が覆っている。
(これはいかん…足場がますます悪くなる)
 だが、雨は次第に強く地面を打ち始め、そして、かんかんと音を立て始めた。固いものが兜に当たっているのだ。
 地面を見ると、氷の塊が転がっている。



「これは…雹だ!」
 ローマ兵は騒ぎ始めた。こつこつと体のあちこちに当たるからだ。
「あたっ!」「いたっ!」
 ときに拳大のものが落下して来る。当たりどころが悪ければ、生命にもかかわる。
「盾を頭上にかざせ!馬は木陰に移動せよ!」
 矢継ぎ早に令していたフラックス、途端に目が輝き始めた。
(待て…これは天恵だぞ!)
 そう。雹の落下に伴い、ハンニバル軍前面に展開していたヌミディア騎兵も、馬を引いて木陰に避難を始めていた。他の兵も、盾を頭上にかざし、岩陰に退避し出していた。
 降雨ますます激しく、あたりは真っ白になった。数歩先も見通せぬほど。



「今だ!」
 フラックスは叫んでいた。
「全軍退却だ!」
「えっ、この視界では危険です」
 副官が驚く。
「馬鹿者。我らの姿が見えぬ今しか、安全に退却する時はない」
 そう不利な地形にあるからには、いずれ動かざるを得ない。ならば、敵の視界から消えている今しか、安全に動く時はなかった。



 ローマ軍は行動を開始した。視界悪く、あたかも手探りするかの如き行軍であったが、なんとか近くの山の上に移動することが出来た。
 そこは、守るに良く、水場もある、見通しの利く、布陣するに適切な地であった。
 そう。フラックスの決断により、不適な地形から脱することに成功したのである。


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「総司令、いずれを追いまするか?」
 訊いたのは、ボミルカルの子ハンノン。
 正面のガルバ隊も潰乱し、ガルバ以下、算を乱しローマ方面へ退却していたからだ。
「無論、フラックス隊だ」
 ハンニバル、即答した。
「ガルバ隊の混乱に乗じ、ローマに攻め入るべきではありますまいか?」
 敵国首都の近くでの勝利に、ハンノンは明らかに逸っていた。
「ローマはまだ落ちぬ」
 対するハンニバルは恐ろしいほどに冷徹であった。
 ローマ本市にはもう一人の執政官ケントゥマルス率いる部隊が控えている。しかも、いざとなれば兵役を負う全市民が立ち上がる。そうなればたちまち万余の武装兵が新たに立ち向かって来るのは分かりきっていた。ローマ攻略が、すぐに叶わぬこと明らかだ。
「主に精鋭で構成される、主力ともいうべきフラックス隊を潰滅させることがローマにとっては打撃となるのだ」



「…されど、総司令」
「なにか?」
「ローマから離れる形となり、将兵から不満が出て来るのではありますまいか」
 恐らく、それはハンノンの不満でもあったろう。将兵の不満という形で、自身の不満を代弁させたものであろう。
「これも一つの過程である」
 ハンニバルは噛んで含めるように言った。
 ローマに押し寄せたのも、最終の勝利を得るための、一つの頁であるということ。
「勝利のために最善の行動を積み重ねること、これを思わねばならぬ。目先の獲物に我を忘れては、必ずや隙を衝かれることになろう。不平を申す者があれば、そなたたち将が言い聞かせよ」



 ハンニバル全軍、アニオ川北岸に渡り、フラックス率いるローマ軍の追撃に移った。
 フラックス隊は、元来た道を、カンパニア方面に向かって退却していた。
「それっ!どこまでも追うのだ!」
 逃げる敵こそローマの主力。これを打ち破れば、ローマに再びカンネーの痛打を与えることが出来る。ハンニバルは将兵を鼓舞した。
 やがて難路に差し掛かった。
「騎兵を先に進ませよ!」
 追撃戦では進軍の速度こそが優先される。
 ヌミディア騎兵とガリア騎兵は疾駆した。



 他方、フラックス率いるローマ軍は、ハンニバルの追撃を振り切るため、昼夜行軍し続けたため誰もが疲弊し切っていた。
 武具の重みに喘ぎ喘ぎ坂を上っていく。
「プロコンスル閣下!敵の騎兵隊です!」
 後方より叫びが上がった。
「おお!」
 振り向くと、騎兵の一団が坂道を驀進して来るのが視界に飛び込んで来た。
 背後より衝かれては勝負にならない。全滅は必至だ。



「やむを得ぬ!全軍向き直れ!」
 だが、味方の多くは先の戦いで疲れている。
 そこで、フラックスは令した。
「トリアリィ隊!前に出よ!」
 トリアリィは熟練兵で構成されている。彼らは、普段、軍の危機に備え後方に控えている。ために、先のアニオ川の戦いでは、幸いほとんど打撃を被っていなかった。
 トリアリィ兵が盾を構え密集し、亀甲の態勢を取り、坂道を塞いだ。
 その後ろで、フラックス以下、未だ元気な重装歩兵たちを集め槍を立てていた。



「ハンニバルめ…そう簡単にやられはせぬぞ」
 馬上、フラックスは睨み付けていた。
 追撃の不利にあるとはいえ、自陣は坂の上。逆落とししてやるとの気概であった。


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 アニオ川の戦い(続き)
「ああっ!あれはハンニバルっ!」
 そのハンニバル、右手をすっと上げた。
 ラッパが鳴り響くと、その途端である。
 左右に並ぶ幕舎の中から、いきなりカルタゴ兵やらガリア兵が群がり現れた。そのどれもが、槍を前に構え突進して来る。今か今かと待ち構えていたに違いない。
 至近から現れた敵に、ローマ兵はたちまち突き伏せられた。
「わっ!」「ぐわっ!」
 騎兵は馬から転げ落ち、歩兵は朱に染まりどおっと倒れた。
 いきなり飛びかかられ、ローマ兵は防御の態勢をとる間もない。



「ええい!防げ防げ!」
 ガルバは叫んだ。
 だが、四方より覆い被さるように襲われてはたまらない。しかも、新兵主体であるから、浮き足立つと動揺はおさまらない。
 たちまち、ガルバ軍の隊列はずたずたに寸断された。



 その頃。アニオ川の北岸にあるフラックスの陣営からも、ハンニバルの陣でどっと喚声沸き立ち、乱れ立つ様子が見て取れた。
 こちらも既に勢揃いし、いつでも突撃出来る態勢にあった。
「プロコンスル閣下。ガルバ殿の軍勢が突入したようですぞ」
「うむ。いずれ敵兵が川に押し出されて来るに違いない。そのときに突撃だ」
「ははっ」
 と、そのとき。河の対岸に騎兵の一団が現れた。
「む…ヌミディア騎兵だな。あれを討ち取ってしまえば勝利は決まるぞ」
 ローマの重装歩兵は密集し、槍を前に構えた。逃れて河岸に上がって来るヌミディア騎兵を突き伏せようとの思惑だ。
 やがて、河の向こうのヌミディア騎兵が河を渡り始めた。



「む、これは…なんだ?」
 フラックス、違和感を覚えた。
 が、それは彼の錯覚でも何でもなかった。
 ヌミディア騎兵は、あたかも陸地にあるかの如く、こちらに駆け向かって来たからだ。
 河をあっという間に踏み渡ると、明らかに突進して来る。
 そう。それは逃げ崩れているのではなく、突撃であった。
「いかん!戦闘態勢をとれ!」
 フラックス、狼狽して命じた。
 だが、その時には、既にヌミディア騎兵はローマ軍歩兵の隊列に突っ込んでいた。



「それっ!一気に駆け破れ!」
 騎兵を率いるはマハルバル。
 敵が崩れ立つ所を討つつもりが渾身の突撃。ローマ兵は俄然動揺した。
 いや、ここだけではない。左右からも喚声が上がっていた。
 ハシュドゥルバル率いるカルタゴ騎兵とガリア騎兵が突入を敢行していた。
 フラックス隊の左右がどっと乱れたった。
 間もなく。今度はカルタゴ重装歩兵が河をざぶさぶ越えて押し寄せて来た。
 三方より攻め立てられては、どうにもならない。



「いかん!ハンニバルに図られた!」
 フラックス、ここにようやくそのことを悟った。
 そうと分かれば、ここにとどまれば味方の被害は大きくなるばかり。
「引け!引くのだ!」
 フラックス、自らも必死に槍を振るい、何とか血路を開いて逃げた。
 こうして、ハンニバルは挟撃をものともせず、各個撃破してみせた。
 アニオ河畔の戦いは、ハンニバル軍の圧勝に終わったのである。


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−これまでのあらすじ−
 アルプスを越えイタリアに攻め込んだハンニバルは、カンネーでローマ軍を撃破(紀元前216年春)し、攻防の末シラクサ支配権を獲得(紀元前213年)。さらにタラス市街を制圧(紀元前212年初頭)。
 他方、マルケルスが再びシラクサに大軍をもって押し寄せ反攻を開始。悪戦苦闘の末、ついにシラクサを攻め落とす(紀元前212年秋)。
 戦いの焦点はカンパニアの主都カプアへ。ハンニバルはカプアを包囲するローマ軍を挑発するも相手にされず。ハンニバルは、局面を打開するため、首都ローマに進撃(紀元前211年春)。
 急転直下、戦いの舞台はローマ近郊へ。


 アニオ川の戦い
 紀元前211年3月下旬。
 ローマのフォルム、元老院のとある一室。
 ここが執政官ガルバの本営となっていた。
「そうか…我が味方はアニオ川北岸に到達したか」
「は。総勢三万。士気すこぶる旺盛にございます」
 フラックス率いるローマ軍は、アニオ川北岸にあって、早、盛んに気勢を上げていた。
「よし」
 ガルバは巨躯を揺らせて立ち上がった。
「ついに、この時が来た。ハンニバルを滅ぼす時が」
 戦意を全身にみなぎらせた。
 この一戦に勝利すれば、ローマ史に輝く腐朽の名誉を獲得するのだ。
「諸君!出陣だ!」
「おおう!」
 ガルバ率いるローマ軍一万余が出陣した。
 もう一人の執政官ケントゥマルスは、五千の兵で首都ローマを守るため残った。



 ティベリス川沿いの丘陵地帯をずんずん進むと、間もなく、長大なるハンニバル軍の陣営が目に飛び込んで来た。アニオ川を背に要所に布陣している。
「なるほど…川を背にしているとはいえ、兵法に則った見事な布陣」
 ガルバは唸った。これ即ち強敵。
 だが、自信は微塵も揺るがない。なにせ、川を背に追い詰め、南北より挟撃するのであるから。
(こちらこそ絶対勝利の布陣なのだ)
「よし!合図あるまで動くことなきよう全軍に伝えよ!」
「ははっ!」
 兵はきびきび動いた。配下はほとんど新兵ばかりだったが、必勝を期して出陣しただけあり、士気はすこぶる高かった。
「コンスル閣下!」
 副官が指差した。
 アニオ川の向こう側から、合図の狼煙が幾筋も上がった。
「よし!突撃だ!敵陣を駆け破り、ハンニバルを討ち取れ!」
「おおお!」
 ローマ兵は一散に突撃した。



 ローマの重装歩兵隊が塊になって、陣門をばりばりと破っていく。
 すると、陣の後方へと敵兵の一団が慌て退いていく様子が見えた。
 あたりには、この近隣で奪った兵糧物資が置き去りになっている。
「敵は慌てて逃げ出したな」
 ガルバ以下ローマ軍団の兵は俄然、勝利を確信した。
「それっ!追えっ!敵をアニオ川に突き落としてしまえ!」
 わあっと喚声を上げ、ローマ兵の軍団は奔流となって陣内を突き進んだ。



 だが、しばらく進んだ時である。
「あっ!」
 副官の一人が叫んだ。
「どうした!」
「コンスル閣下!あれを!」
「むう」
 ガルバは日差しに顔をしかめた。
 右手の櫓の上に、一人の男が赤いマントを翻し立っている。
 それは隻眼の武将…。それは、先頃、ローマに現れた人物。
 ガルバの瞳はこれ以上ないほどに見開いた。


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 窮地に敵を動かす 
 この頃、ハンニバルの予想違わず、フラックス率いるローマ軍三万余がローマに急進していた。
 もう一人の司令官プルクルスがカプア包囲戦の最中、流れ矢に当たり負傷したため、彼がローマ防衛に戻ることになったもの。
「諸君!急げ!祖国の危急ぞ!」
 馬上、勇躍鼓舞した。
 ローマを救う、最初はそれがフラックスの頭脳の全てを占めた。



「なにっ!ハンニバルがローマへ進撃したと!」
 まさしく狼狽した。取るものとりあえず馬に鞭打ち続けた。
 だが、今は違った。
 ローマ元老院からの急報により、首都ローマは揺るがず、ハンニバルはそのままアニオ河畔に布陣していることを知った。当然、心持ちはがらりと変わった。
(ハンニバルを討つまたとない好機が訪れた!)
 ローマは、新執政官ガルバらが万余で防御に当たっている。
(我がローマが容易に落ちることはない…。ならば、彼の背後を衝くことが出来る)
 ローマ周囲は勝手知ったる地形。本市を守る軍勢と挟撃すれば、さしもの無敵ハンニバルとて打ち破れよう。その期待が高まるのは当然であった。
「今こそハンニバルを討つ時ぞ!」
 フラックスが叫ぶと、呼応して雄叫びが上がり、それが全軍へと伝播し、そのどよめきに山野揺れ動かんばかりとなった。そう。ローマ軍は、まさに必勝を期していた。



 フラックス進撃の知らせが届くと、ローマ元老院も大いに沸いた。
「ハンニバルを挟撃し、このローマの眼前にて虜にしてくれよう」
 新執政官のガルバとケントゥマルスは、就任後いきなり訪れた一世一代の好機に、武者震いしていた。
「良い策がある」
 ガルバが言った。
「背後から敵が迫っていると知れば、ハンニバルめ、必ずや北にアニオ川を越え退却するに違いない。今のうちに、その退路である橋を破壊しておくのだ」
 そうすれば、ハンニバル軍をティベリス川とアニオ川に囲まれた狭い地形に追い詰め、撃滅出来る、そういう作戦だった。
「なるほど…それは妙案だ」
 もう一人の執政官ケントゥマルスも一も二もなく賛成した。
 その夜、ローマの城から二千の兵が密かにティベリス川西岸沿いを北上した。いずれの兵も、木槌を手に抱えていた。
「物音を立てるな」「そっと進め」
 対岸からその様子をじっと見詰めている者がいた。
 樵の格好をしていたが、顔の手拭をぐっと上げた。
 マニアケスであった。



「そうか。敵軍は鎚を手に北に回り込もうとしておるか」
「あれは我が軍の退路を断たんとの策に相違ありませぬ」
「ふふ」
 ハンニバル、快心の笑みを浮かべ、すっくと立ち上がった。
「ようやく…ようやく動き出してくれたようだな。ローマに迫り、城の回りを闊歩してみせ、なおかつ川を背にし、ようやく出て来てくれた」
 そう。これこそ待ち焦がれた戦機。
 そのため、ふんだんに撒き餌してきた。これ全て大きな獲物をおびき寄せるため。
「直ちに軍議を開く。諸将を集めよ」
「はっ!」



 ハンニバルの幕舎に将たちが集まった。
 ボミルカルの子ハンノン、ハシュドゥルバル、ヒミルコ、マハルバル、そして、マニアケスである。
「諸君、時は来た」
 彼は、敵が味方の退路を断つため、橋の破壊に動き出していると告げた。
 将たちは顔を見合わせた。退路を断たれては普通は敗北するより他ない。
「だが、心配は要らぬ。このときに備え、アニオ川の流れは調べてある」
 隻眼の総司令官はそういうと、ちらとマニアケスを見た。
 当然、彼女と彼女の手の者が調査した訳だ。
「そもそも、それほどの大河でもなし。渡ることの出来る地点は、実は幾らでもある。要は、落ち着いて渡河すべき地点を選びさえすれば良いのだ」
「なるほど…」「さすがは総司令…」
 細心の化身。改めて諸将は感心していた。



「それよりも、敵が退路を断とうとしている、そのことは敵が間もなく動き出すということ。そして、敵がどう動くかも、あたかも教えてくれるようなもの」
「それはどのようなもので?」
 ヒミルコが訊いた。
「まず、後方のアニオ川北岸にどっと現れ気勢を上げ、我らを動揺せしめる。その後、ローマ本市より攻め寄せて来る、それに万々間違いあるまい」
「なるほど…」
「ならば、余の打つ手は決まっている」
「それは…」
「諸君、耳を貸し給え」
 ハンニバルは、何度も練り上げていたろう策を伝えた。どう動くべきかを、繰り返し繰り返し、諸将の頭に叩き込んだ。


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