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大平原の戦い−正攻法(さらに続き)
「プロコンスル閣下。ケルト・イベリア兵が進んで来ますぞ」
リクトル(警吏兵)に扮したセルギウスが言った。
「よし。ハスタティ(青年兵)に前進を命じよ」
スキピオの命に、ハスタティの隊列が動き出した。それはローマ市民兵とシチリア奴隷兵の混成部隊であった。
先頭の隊列は、穂先を前方に向けた。そして、わあっと喚声を上げて突撃を開始した。
それに負けずにケルト・イベリア兵も突進して来る。
中央で両軍激しく衝突した。
「イタリアの羊飼いめ、くらえいっ!」
「イベリアの蛮族めが、思い知れっ!」
互いに言葉を解しない。だが、憎悪というものは全身に伝わる。
ケルト・イベリア兵が躍り上がるようにして獲物を振り下ろすのを、ハスタティは盾で防ぎ、槍をずんと繰り出す。次第に間合いを詰め、ついには乱戦となり、互いに槍を捨て、剣を手に激闘が始まる。
接近戦となって、不思議な光景が現れた。それは、両軍将兵、同じ短剣を手にしていたからだ。
それは、スキピオが、ヒスパニアにあった頃から工夫したもので、イベリア人の短い剣をローマ兵士に持たせたものだ。というのも、接近戦となると従来の長剣は扱いづらい。飛び込まれると大いに不利ですらある。
「我が兵にも短めの剣を与えよ」
だから、両軍将兵、同じイベリアの剣を手に奮戦格闘した。
「総司令。ケルト・イベリア兵が押し込んでいますぞ」
今回、一方の大将として指揮するアドヘルバルが言った。
そう。ケルト・イベリア兵の猛攻に、ローマ側はプリンキペス(中堅兵)を繰り出したが、さらにそれを突破していく勢いで、ついにはトリアリィ(熟練兵)の隊列が動き出すのが見えた。危機要員であるトリアリィが動くというのは、ローマ側が押されている証左に他ならない。
「よし!今だ!騎兵隊に突撃を命じよ!」
ジスコーネは命じた。
「ははっ!」
旗が振られ、ラッパが鳴り響くと、連合軍両翼の騎兵隊が動き始めた。
左翼のマサエシュリ騎兵部隊、右翼のカルタゴ騎兵部隊。
それぞれ、王家の勇者テュカイオス、アドヘルバルを先頭に駆け始めた。
「それっ、敵の騎兵を破れば、勝利は決まるぞ!」
「この戦いこそ祖国興廃の一戦ぞ!奮起せよや!」
こちら、マッシュリ騎兵の隊列。
「王よ、カルタゴ騎兵がこちらに突撃して来ますぞ」
甥のマッシワが言った。
そう。王国を失っても、彼らマッシュリ人には、あくまでも、目の前に立つ雄々しい男こそが部族の君主であった。その男は、あまりの体躯堂々のため、草原の駿馬がまるで驢馬に見間違うほどであった。
「よし」
その男は僅かに身震いした。武者震いであろう。
マシニッサである。
(ついに…この時が来た。ついに)
彼は槍をぐっと握ると、味方に令した。
「我らも突撃だ!カルタゴ騎兵を突き崩せ!」
「おーっ!」
マッシュリ騎兵は、自慢の馬技を駆使し、一散に突撃した。
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