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勝者と敗者
ザマの決戦から数日後。
スキピオ率いるローマ軍は、東へと引き返し始めた。
莫大な戦利品を引く馬車が延々続き、その後に、捕虜となった二万人のハンニバル軍の兵士が続く。無論、捕虜には手枷がはめられ、腰に縄で数珠つなぎに括られている。
先頭を進むは総司令官スキピオ。
彼は青空突き抜ける秋天の下、気持ち良さげに闊歩した。
鎧兜に陽光が反射してきらきら輝き、深紅のマントも鮮やかに映じた。
この威風堂々の勝利軍の行進に、土地の民草たちは驚き恐れ見送った。
「この天地の様は変わるぞ」
「カルタゴの世は終わるか」
アフリカの大地は、三百年間、長らくカルタゴの巨大な権威下にあった。
直接間接を問わず、この地に住む民族はその支配下にあったといえよう。
だが、この統治体制が、この決戦を境に急速に崩壊していくことになる。
ローマ軍は東に進んで、ウティカの東の岬にあるコルネリウス要塞に戻った。
既に勝利の報は届いている。軍の帰還に、留守の兵たちも歓喜を爆発させた。
「よくやった!」
「でかしたぞ!」
スキピオ麾下の兵士は、アフリカ上陸から二年、生死を共にしている。その勝利の喜びもひとしおであるし、何よりも、
「国に帰れる」「家族に会える」
その喜びもとてつもない大きなものであった。
要塞の守備司令官として残していた法務官格司令官(プロプラエトル)のバエビウスも、転がり出るようにスキピオの馬前に現れた。
「スキピオ閣下、おめでとうございます!」
あとは言葉にもならず、感涙にむせていた。
スキピオは頷いた。
「そなたたちが後方を固めてくれた御蔭で、前線で存分に戦うことが出来た」
砦の兵たちの慰労に務めた。そして、こう言明した。
「そなたたちの功績は、前線で戦った兵士と変わらぬ」
前線の兵士と同じ褒賞を約束した。
そうでなくてはなるまい。さもなければ、戦利品目当てや栄誉を願い、誰もが前線の働きを志願し、結局後方がおろそかになる。後方をおろそかにする軍が勝利した試しなど、古今東西どこにもないのだ。
スキピオは、ここで戦利品の後始末やら捕虜の処遇などについて指図し、あらかた片付けると、今度は二万の兵を率いて南に進んだ。
再びチュニスに入城した。
迎賓館のある丘の上から、敵の首都カルタゴを見詰めた。
「さあ勝負はついた。どうするカルタゴの諸君よ」
ザマの決戦は、カルタゴが和平の誓約を踏みにじったことで勃発した。だから、和戦の選択はカルタゴのなすべき事柄。ボールはカルタゴ側にあるのだ。
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