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ザマの決戦8−姉弟対決
マニアケスはどこまでも駆けていく。
それをマシニッサは執拗に追跡した。
「マニアケス!どこまで逃げるつもりか!」
「ほほ。王君は草原の覇者でしょう。追いついて見せなさりませ」
兜からこぼれた黒髪をなびかせ、草原を軽やかに駆けていく。
「おのれ…女の分際で愚弄しおって。その髪を振り回してやる!」
マシニッサ、歯ぎしりした。
だが、彼の巧みな馬術をもってしても、不思議なことに、マニアケスの髪は手に届きそうで届かない。
(おかしい…なぜだ?)
マシニッサも、ようやく不審に思った。自身の乗る馬は部族一の駿馬。体力抜群で、夜通し駆けてもびくともしない筈が、ぜいぜい喘いでいるではないか。
(う…なんだ)
しかも、自身も頭がくらくらして来る。
と、その時。突然、マニアケスが馬首を巡らせ、こちらに突進して来た。
「うっ」
まさにあっという間であった。
マニアケス、間を詰めるや、先ほどの笑みが消え、鬼の形相で刃を振り上げて来た。
「ちいっ」
マシニッサ、とっさに切っ先をかわすや、剣をぶんと振り上げた。
マニアケス、柔らかな肉体を反らすや、反動を生かし、刃をぶんと振り下ろした。
「くっ!」
王は何とか受け止めた。だが、受け止めた右手ががくとなった。
(これは…!力が入らぬ…)
マニアケスは何ゆえか襲いかかって来ない。いや、薄笑いを浮かべていた。そして、先ほどからの香りが強く漂って来る。今や、異臭の如く、鼻につんと来る。
マシニッサ、はたと勘付いた。
「貴様…その香りは…もしや!」
「ほほ。ようやくお気付きか。しびれ薬ですわ」
マニアケス、悪びれず種を明かした。
駿馬の脚が鈍ったのも、マシニッサの力が入らなくなったのも、これが原因だ。
「うぬ。一対一の対決に卑怯な!」
「ほほほ」
マニアケスは冷笑し、氷のような眼差しを向けた。
「愛する女も守れぬ男が何を偉そうに」
それが全てであった。
「王よ。あなたはあの時なんと申した」
「なに?」
「ソフォニスバ様に危害を加えぬと固く約束した筈」
マシニッサにソフォニスバを会わせる時、そう誓わせてから対面を許した。
「う…」
マシニッサは言葉に詰まった。苦悩の挙げ句とはいえ、難詰する相手が戦場の敵であっても、返す言葉がなかった。
「それが何。ローマのスキピオの恫喝に怯え、その女の命を毒を盛ってすすんで奪う。そのような男に正々堂々の刃など不要」
そう。ソフォニスバの仇を討つため、マニアケスは狡猾な罠を張ったのだ。
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