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東西巨大勢力の遭遇(さらに続き)
紀元前196年春。アンティオコス大王は、艦隊を率いてさらに北上し、ケルソネソス半島に上陸した。ついに、ヨーロッパ大陸の一角に足を踏み入れたのである。
大王は、ここを陸路北上し、半島の付け根にある都市リュシマケイアを占領した。
ここは、アレクサンドロス大王の部将でトラキア王となったリュシマコスが、王都として建設した都市である。先年フィリッポス五世に占領され、彼がローマとの戦いのため退去した後にトラキア人の略奪に破壊され、廃墟のままとなっていた。
「この由緒ある都市を打ち捨てたままにするのはよろしくない」
そういって都市再建に取りかかった。ここはアジアとヨーロッパの陸海路を扼する地。肚に一物あるのは明らかであった。
その年の秋。ローマ使節団が海路リュシマケイアにやって来た。
「もう来たのか」
大王は苦笑した。
この年の夏、イストモスで開催されたイストミア競技祭で、ローマの指導者フラミニヌスは、全ギリシアの自由を宣言していた。その自由独立の対象には、アンティオコス大王の占領した地域や都市も含まれていた。
大王は、使節をイストモスに派遣し、ローマの動向を探ったが、その折、既にローマ側からケルソネソス、イオニア、リュキアからの撤退を要求されていた。
「いずれ大王に直接お会いし、同じ要求をするつもりである」
そう啖呵を切ったというローマの使節団が、早くもやって来たというではないか。
いや、ローマとすれば、フィリッポスとの戦いを切り上げ、戦後処理を速やかに進めて来たのは、大王の侵略を食い止めるため。大王の勢威がギリシア世界に及べば、新たな大敵の出現を東方に見ることとなるからだ。
大王は、リュシマケイア市内の新築なったばかりの迎賓館で会見に臨んだ。
共に連戦連勝を重ね、日の出の勢いのセレウコス朝シリアとローマ共和国。
使節団の一人に、スキピオ・アフリカヌスの弟ルキウスがいた。
「メガス(大王)と讃えられる陛下にお会い出来て光栄の至り」
「余もハンニバルを破ったローマ人に会いたいと思うていた所」
最初は挨拶に雑談を交え、和気あいあいとした雰囲気であった。
だが、本題に入ると、空気は一変した。
ローマの使節団は途端に強面となった。
ルキウスが代表して主張した。
「陛下の占領した、エフェソス、サモス島、リュシマケイアは、いずれも我がローマが偽英雄フィリッポスを打ち破ったためもたらされた戦果。それを横から陛下が横取りするのは、いかにも戦いの掟に反するもの」
確かに、上記の都市は、全てフィリッポスがローマとの戦いに追われ撤退した地域。
「そして、自治を保つギリシア諸都市を侵さないで頂きたい。それが、このギリシア世界の掟であり、我がローマがフィリッポスと戦った大義なのですから」
ローマとてギリシア世界に野心はあったろうが、この時点で、ローマがギリシアの独立と自治に貢献したことは確かな事実であった。
「しかも、陛下は何の意図があって、驚くような大軍をもってこのリュシマケイアに入られましたか。素直に推測すれば、ギリシア世界への野心を疑わぬ訳にはいきませぬ」
なにせ、リュシマケイア沖に二百隻の艦隊、地上に八万余の大軍勢が控えていた。
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