新しいギリシア・ローマの物語2

179年、暴君フィリッポス、悪業の報いを存分に被り、死去

第12章アジアの章

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※↑東方ヘレニズム世界です。東南はインド亜大陸に接し、東北は草原地帯、いわゆる遊牧の強国の月氏や匈奴、中国の歴史世界と接しています。

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 大王への道20−遅れて来た味方(続き)
 その後もバクトリア軍の優勢に戦いは続いた。
 アンティオコスは自ら剣を振るい、敵兵の頭上に振り下ろしていた。
 しかし、彼のきらびやかな軍装に敵兵が後から後から群がって来る。




「アンティオコス王と見た!勝負!」
 そうギリシア語で叫んだようだが、訛が強く、王は聴き取れなかった。
「何と申した!小癪な蛮族めが!」
 王はくわと剣を振りかぶったが、その瞬間、敵兵の槍が王の顔面を強打した。
「ぐわっ!」
 王の体勢ぐらと崩れ、あわや落馬しそうになった。
 傍らのポリュクセニダス、慌てて手を差し出した。
「陛下!大丈夫にございまするか!」
 見ると、口から血を流していたが、どうやら歯が数本折れただけのようであった。
 が、その有様では、すぐに采配はとれない。
「陛下!後方に退きましょう!」
「な、ならぬ。踏ん張るのだ…」
「陛下のお命が最優先!御免!」
 ポリュクセニダス、王の手綱を握ると馬首を巡らせた。
 これを境にアンティオコス軍は崩れ立ち、敗走に転じた。




 勇躍したのはバクトリア王エウテュデモス。
「アンティオコスを捕えよ!奴を捕えた者はアラコシアの太守とするぞ!」
 アラコシアとはバクトリア王国南部の大州。
 それを聴くと、兵の顔色はがらと変わった。
「アラコシア太守とな!」
「そう仰せになったぞ!」
 バクトリア兵は、もはや隊列も何も関係ないと言わんばかりに、わあっとアンティオコス隊の追撃にかかった。




 眼前に肉をぶら下げられ猛獣となったバクトリア兵、騎兵を先頭に、どこまでも追いかけて来る。
「くっ、このままでは」
 ゼウクシス、幾度も背後を振り向き、歯ぎしりした。
「早まるなよ」
 そう言ったのは、馬のたてがみを握るアンティオコス王。
 顔面の激痛に耐えながらも、彼の頭脳は澄み切っていた。
「戦機はこれから到来するのだからな」
「え?」
 思わぬ言葉にゼウクシスは戸惑った。
「間もなく見えよう」
 その王の言葉が終わったまさにその時、
「陛下!前方より軍勢です!」
 それは、後方より遅れて進んで来たファナイトロス率いる八万余の重装歩兵隊。
 進発した時に比べ、さらに大軍勢に膨れ上がっていた。王軍の威光、アレクサンドロス大王と同じくする『ヴェルギナの太陽』の御旗。その旗の下に、周囲の部族や国々より続々馳せ参じて来たものだ。

※パルティア、バクトリアの位置・地図は10/7の「大王への道19−遥かなるバクトリア−アジアの章45」をご覧ください。

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 これまでのあらすじ
 小アジアで王位を僭称したアカイオスを数年がかりの戦いで滅ぼしたアンティオコス三世。
 209年春より念願の東方遠征を開始し、パルティア王国へ進攻。
 麾下にポリュクセニダスやニコメデスらギリシア人猛将を従え、パルティア王都ヘカトンピュロスを攻略。パルティア王アルサケスをラボス峠の戦いに破り、アルボルズ山脈を越え草原地帯(ヒュルカニア)へと追撃し、ついにこれを降伏せしめる。
 残る大敵バクトリア平定に向けて、さらに東に進む。
 バクトリア王エウテュデモスが大軍を率いてこれを迎え撃つ。


 大王への道20−遅れて来た味方
 夜が白々と明け始めた頃、アンティオコス軍は、グリアナ西方でバクリトア騎兵と激しく交戦していた。
 彼ら騎兵は中央アジア遊牧民から徴募されており、当然ながら馬術に優れ、間合いを保ち、巧みに騎射し、アンティオコスのマケドニア人騎兵を散々に悩ませた。




「引くな!踏ん張れ!」
 アンティオコス王は軍勢の先頭に立ち、味方を鼓舞した。
 マケドニア騎兵は奮起し、次第に敵勢を押し返し始めた。
 だが、そこに新手のバクトリア軍が現れた。エウテュデモス王率いる大軍である。
「敵は小勢だ!包み込んでアンティオコスを捕えよ!」
 アンティオコスは先頭に立って急進して来たため、彼の回りで戦うのは二千のマケドニア騎兵に過ぎない。
 わあっと雄叫びを上げ、バクトリアの大兵が押し寄せて来る。



 バクトリア軍は、三方よりアンティオコス軍を攻め立てた。
「勝ったぞ!」
 エウテュデモス、喝采を上げていた。
(一介の傭兵に過ぎなかったこの俺が、バクトリアの王環を頂き、さらにはアジアの王環を戴冠するのだ)
 確かに、アンティオコスを捕えれば、それは現実になる。インドからアナトリア(小アジア)に至る大地に覇権を打ち立てることが出来るのだ。
 が、そんな夢想に浸っていた時…。
「バシレウス様!敵の新手です!」
「なに」
 背伸びすると、アンティオコス隊後方から砂埃を巻き上げる真っ黒な集団があった。
 ゼウクシスとポリュクセニダス率いる八千の騎兵隊である。




「ふん」
 エウテュデモスはせせら笑った。
「あんな小勢で何が出来る」
 なにせ彼の率いるは五万余の大軍。兵力では圧倒的優位にある。
「デメトリオス」
 自慢の息子を呼びつけた。
「はっ!」
「そなた、ソグディアナ騎兵を率いて蹴散らして参れ。その間に我らはアンティオコスを虜にしていようからな」
「かしこまりました」
 デメトリオスは、自ら騎兵隊を率いて前方に飛び出していった。




 デメトリオス隊とゼウクシス・ポリュクセニダス隊は激しく衝突した。
 思えば、これほど民族の入り交じった戦いも珍しい。両軍とも指揮官はギリシア・マケドニア系の王や傭兵。だが、兵はペルシア人やらバクトリア人、インド人、ソグディアナ人、果てはスキタイ系、モンゴル系も混じっているようだった。


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 これまでのあらすじ
 小アジアで王位を僭称したアカイオスを数年がかりの戦いで滅ぼしたアンティオコス三世。
 209年春より念願の東方遠征を開始し、パルティア王国へ進攻。
 麾下にポリュクセニダスやニコメデスらギリシア人猛将を従え、パルティア王都ヘカトンピュロスを攻略。パルティア王アルサケスをラボス峠の戦いに破り、アルボルズ山脈を越え草原地帯(ヒュルカニア)へと追撃し、ついにこれを降伏せしめる。
 残る大敵バクトリア平定に向けて、さらに東に進む。
 バクトリア王エウテュデモスが大軍を率いてこれを迎え撃つ。

 大王への道19−遥かなるバクトリア(続き)
 アンティオコス率いる一隊は、一日目、二日目は、普通に行軍した。だから、日が昇り食事し行軍し、昼食、夕食を摂り、そして就寝した。
 だが、三日目になると。まだ日が昇らぬ内から食事し、行軍を開始した。
「今日は急ぐぞ」
 王は言った。
 早足で進んだ。やや多めの昼食を摂らせると、夕食もとらず、さらに足を速めた。
 そのため、日が沈んだ頃には、アリオス川を視界に捉えることが出来た。




「陛下、敵兵がもうおりませぬ」
 ポリュクセニダスが指差した。
「うむ。そのため急いで来たのだからの」
 アンティオコス王は笑った。
 そう。彼は、敵兵が退去する夜に川岸に到着するよう、歩速を調整していた訳だ。
「さあ!今のうちに、川を渡るのだ!」
 アンティオコス軍一万は、何の妨害を受けることもなく、なんなく渡河していった。




 その頃。グリアナ城内。
 バクトリア王エウテュデモスは、重臣たちと宴会に興じていた。
 この男は、元々マグネシア出身のギリシア人傭兵で先王ディオドトス二世に重用されていたのを突然反旗を翻し、王を殺し、その一族を皆殺しにし、王位を奪った梟雄。とはいえ、先代の王家も、セレウコス朝に反旗を翻し王号を称した一族である訳だから、この転変は、ただただディアデマ(王環)を奪い合う血みどろであった。
 エウテュデモス、己の王位を確認するため、そのディアデマを撫でるのが癖であった。



「よし…」
 何しろ苛烈な闘争の末に今の地位がある。
 だから、今回の迎撃にも細心の注意を払っていた。
(バクトラは無双の要害。そこから遠い地点で迎撃し、長期戦に持ち込めば、勝利は必定我らのもの)
 彼は、アンティオコスのアカイオス征討の経緯を、人をやって詳しく調べさせていた。
(アカイオスは、サルディスに立て籠るのが少し早過ぎたようだ)
 そう結論付けた。
 そこで、首都から遠い国境のこの地域に出兵し、アリオス川を盾にアンティオコスを足止めにする作戦に出た。バクトラに到達する時間の引き延ばしを図った訳だ。が、その思惑は、決して消極的なものに留まらない。
(業を煮やしバクトラに向かえば背後を衝いてやる。兵糧の補給に窮し退却しても、やはり背後を衝くことが出来る)
 そう計算していた。ここらは傭兵らしい計算高さであった。




「父上!」
 飛び込んで来たのは、王子デメトリオス。
 聡明かつ威厳に満ちた振る舞いに、臣下や民衆の信望の篤い、自慢の息子であった。
「今日もアンティオコスは現れなかったそうな。そなたも一杯やれ」
「アンティオコスは既に渡河しておりますぞ!」
「なんだと」
 エウテュデモスは目を見開いた。
「南岸で我が騎兵と戦闘に入っておりますぞ!」
「げっ」
 エウテュデモスは仰け反った。

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↑209年頃の勢力図と東方諸国の地図です。アンティオコスの進路は、はエクバタナからカスピ門を通過し、さらにヘカトンピュロス(ヘカトンタピュロスは誤記です)、そしてラボス峠に北進、シュリンクスを包囲。再びをアルボルズ山脈を南に越えて東進。

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 これまでのあらすじ
 小アジアで王位を僭称したアカイオスを数年がかりの戦いで滅ぼしたアンティオコス三世。
 209年春より念願の東方遠征を開始し、パルティア王国へ進攻。
 麾下にポリュクセニダスやニコメデスらギリシア人猛将を従え、パルティア王都ヘカトンピュロスを攻略。パルティア王アルサケスをラボス峠の戦いに破り、アルボルズ山脈を越え草原地帯(ヒュルカニア)へと追撃し、ついにこれを降伏せしめる。
 残る大敵バクトリア平定に向けて、さらに東に進む。


 大王への道19−遥かなるバクトリア
 紀元前208年初秋。
 アンティオコス軍は東進した。パルティアに圧勝したこともあり、途中、周辺の部族が王に面会を求め、こぞって臣従を誓った。
「我ら、王家に忠誠を誓う者どもにござる」
「兵も差し出します。兵糧も水もこの通り」
 王は物資を受け取り、代わりに彼らの支配権を公認してやった。
 このため、王軍は驚くべき速さでバクトリア東の国境に達した。




「…なるほど。こういうことなのだな」
 王は、馬上、大層感じ入っていた。
 もし、パルティアに峻烈な制裁を加えていたら、残党の討滅など、その戦後処理に恐ろしく手間取ったことだろう。また、日和見を見せていた周囲の部族も、自身の存続を危ぶみ、どんな敵対を見せるか知れなかった。
「左様」
 重臣アポロパネスは大きく頷いた。
「かつてアレクサンドロス大王が、この道を通った時も、土豪どもの支配権を認めてやったそうにございます。これこそ、王者の上に立つ王者の振る舞いにございます」
「なるほど…王者の上に立つ王者」
 アンティオコス、その言葉をしみじみと味わった。




 そこに、先方に出していた斥候が戻って来た。
「どうやら、バクトリア王エウテュデモス自ら出陣して来ておるようです」
「ほほう」
 エウテュデモスとは、マグネシア(小アジアの都市)出身のギリシア人。
 紀元前230年頃、先代ディオドトス二世から王位を簒奪した男である。
「エウテュデモスは、グリアナに一部の兵を置き、あとはアリオス川南岸に大軍を集め、我らの進軍を背後より止めようとしている模様」




 グリアナとは、現アフガニスタン領ヘラートの西、現グリアーンと思われる。アリオス川とは、ヘラートの南を流れる現ハリ川のことである。
 王国の首都バクトラ(現マザリシャリフ)は、ここから東北約五百kmもの遠くに位置する。しかも、都の方角とは異なる川の南側に陣取っている。
 アンティオコス軍に、首都への道を開け放しているような格好だ。




「ふーむ」
(エウテュデモスめ、持久戦に持ち込み、あわよくば背後から攻める肚だな)
そう。エウテュデモスは、わざと河の南にあって敵の鋭峰を避け、敵がバクトラに進めば背後より衝かんとの肚であった。




「河の守備はどうなっている」
「は。一万ほどの兵が橋を守備しております。ですが、夜になると、20スタディオン(3.5km)離れたグリアナに戻るようにございます」
「ほう…」
 アンティオコス、目を光らせた。
「ここから、その橋まで道程はどれくらいだ」
「は。普通に行軍して三日ほどにございます」
「三日…」
 王は思考を素早く巡らせた。
 遠征が進むに連れ、彼の行動は次第に精緻の度を加えてきた。パルティア平定の大戦果に己を確信し、されどそれに慢心せず、さらに切磋琢磨せんとの心の作用が、彼を次第に優れた指揮官の思惟へと誘っていた。それは、時にして頭脳に閃光をもたらす。特に、荒野に囲まれた沈黙の世界においては、一層研ぎ澄まされる。




「ゼウクシス、ポリュクセニダス」
「ははっ」「はーっ」
 かつて、彼ら将軍たちは、この王を、セレウコス王朝の継承者として仰ぎ見ているだけだったが、近頃、その視線に尊崇の念が加わっていた。それは、あのアレクサンドロス大王の配下が、驚くべき戦果の連続に次第に無二の忠誠を誓う、あの熱狂に似ていた。




「そなたらは、我と共に、騎兵、軽装歩兵、軽盾兵を率いて進むぞ」
 軽盾兵とは、重装歩兵の如き密集して戦うのではなく、散開して戦うことを目的とした歩兵。機動性の重視される歩兵である。装備は軽装備では決してなかった。
「はっ」「ははっ」
 王は背後を振り返った。
「ファナイトロス」
 テオドトスの腹心で、共にエジプトから降って来たアイトリア出身の将軍である。
「はっ」
「そなたは、後ろより騎兵を率いて進んで来るのだ。三日とも普通に行軍せよ」
 普通に行軍せよとは、不思議な命令であったが、傭兵出身のファナイトロス、一切の疑問を差し挟まない。
「はっ」
 只命令を畏むだけ。傭兵とは、雇い主の求めを完璧に遂行すること、それが最善なのであるから。あたかもそう言っているかのようであった。


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 これまでのあらすじ
 小アジアで王位を僭称したアカイオスを数年がかりの戦いで滅ぼしたアンティオコス三世。
 209年春より念願の東方遠征を開始し、パルティア王国へ進攻。
 麾下にポリュクセニダスやニコメデスらギリシア人猛将を従え、パルティア王都ヘカトンピュロスを攻略。パルティア王アルサケスをラボス峠の戦いに破り、アルボルズ山脈を越え草原地帯(ヒュルカニア)へと追撃する。


 大王への道18−寛容をもって神速(さらに続き)
 アンティオコス軍の追撃の急に、アルサケス王はニサまで落ち延びることは出来ず、途中の小さな都市に逃げ込んだ。
 だが、そこが包囲され、さらにアンティオコスの雲霞の如き大軍を後から続くのを目にすると、ついに抵抗を諦めた。降伏の使者を寄越して来た。
「なにとぞ国家の存続を。ならば、以降、アンティオコス陛下に臣従いたしまする」
 この申し入れに、アンティオコス王の重臣たちは怒った。
「虫のいい話」「散々刃向かっておいて」
 彼らも、先日目にしたギリシア人虐殺に立腹していた。




 だが、アンティオコスは熟慮した。
「…アポロパネス、そなたはどう思うか」
 元侍医の賢人に下問した。
 彼は武の人ではないが、ここでは鎧を着用していた。
「お許しあるべきと存じます」
 元侍医は即答した。
 その意見に、すぐさま異論が噴出した。
「何を言われる。奴は道義も弁えぬ夷狄」
「奴に恩をかけても裏切られるのがオチ」
 アンティオコス、手を上げて重臣たちの声を制した。




「なぜ、そう思う」
「王の大望のため」
「大望のためと?」
 訊き返す王に、アポロパネスは小さく頷いた。
「帝国再興の事か」
「寛容は必須です」
「ふむ。寛容か…」
「なればこそ神速」
 短いやり取りに、重臣の間には理解出来ぬ顔をする者もいた。
 そこで、王は、にこと微笑み、聡明な頭脳で要約してみせた。
「要は、アルサケスを許してしまえ、そうでなければ、速やかに進軍も出来ぬ、と」
「はい。ここで時を浪費すれば、必ずや東方からバクトリアの大軍が現れましょう」
 侍医も微笑んだ。
 この頃のバクトリアは、現在のアフガニスタンから中央アジアを支配する大国。象軍を擁し、ギリシア人傭兵やインド人傭兵など精強な部隊を抱えていた。




「よろしい」
 王は大きく頷くと、パルティアの使者を招き入れた。
「アルサケスに伝えよ」
 王は決定を伝えた。
「我がセレウコス王家に忠誠を誓うこと。王号は認めぬ。支配地はヒュルカニアに限る。息子をアンティオケイアに寄越すこと。先に虐殺したギリシア人の生命財産の賠償をなすべきこと。…以上を呑むならば、和平を認めよう」
 至極穏やかに言い渡したが、厳しい和議の条件だ。
 自治権を認めるものの、その代わりパルティア王国を事実上属州に格下げし、しかも、国号『パルティア』の基となったパルティア州からの退去すら命じた。
 だが、もはやこれを受け容れるほか、パルティア王国の存続はない。
 使者は国家存続さえ認められれば全てを受け容れよと言われていたに違いない。
「ははっ、かしこまりましてございます。我が主に伝え、必ず受諾の運びといたします」
 間もなく、セレウコス朝とパルティア王国との間で、正式に和議が締結された。




 和睦が成ると、すぐさまアンティオコスは動き出した。再びアルボルズ山脈を南に越え、ヘカトンピュロスに戻ると、今度は東に進路を取った。
 最後の内なる敵バクトリアを征討するためである。


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