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マグネシアの戦い−睨み合い(続き)
「我が軍の陣立てに乱れはないか」
ルキウスは念を押した。
「はい。事前の作戦通りに配置いたしてございます」
ローマ・ペルガモン・アカイア連合軍は整然と持ち場についていた。
左翼に重装歩兵部隊。前列からローマ同盟国兵、アカイア兵、ペルガモン兵が順に並び一万三千。ペルガモンの投石兵と弓兵などの軽装歩兵部隊もここに混じっていた。この左翼の指揮はペルガモン王エウメネス二世に委ねられた。副将にアカイア同盟のディオファネス。
中央にローマ軍重装歩兵一万。ここに総司令官ルキウス・スキピオがいた。
右翼にローマ騎兵、ペルガモン騎兵。軍団長ドミティウスが指揮をとった。
中央にローマ軍の主力ありとはいえ、歩兵の大半をエウメネスに委ねる陣立て。この戦いは、同盟国であるペルガモン、アカイアの命運を左右するものだからだ。
「敵の動きをよく見張れ」
ルキウスは目を真っ直ぐに向けたまま言った。
「はっ」
ミルトは馬を飛ばしてどこかへ駆けていった。
ここローマ軍の右翼騎兵隊の隊列。
「軍団長殿」
セルギウスが声をかけた。彼はドミティウスの側にあった。
「何かね、副官殿」
事実上、この戦いの作戦を決定し、采配を取る男は、静かに前方を見詰めていた。
「戦車隊は、どうやらエウメネス隊の前に集結しておりまするな」
はじめ中央に位置していた戦車隊であったが、ローマ軍の隊形を確認すると、斜め前方に移動し、エウメネス率いる歩兵部隊の前へ集まった。
「うむ」
これも予想されたこと。戦車隊最大の武器は機動性だ。機動性に劣る歩兵隊の前に持って来るのは常道といえよう。それだから、セルギウスは、
「我らも戦車隊の側面を衝かねばなりませんな」
と言った。戦車隊の機動性に騎兵の機動性で対抗せよ、ということ。。
「最後には、な」
「最後には…?」
「我らにも前の敵があるからな」
ドミティウスは苦笑した。
そう。前面には、セレウコス王子が最精鋭の騎兵隊アゲーマを率いて控えてあるのだ。これこそ敵の中核の一つ。騎兵を乗せた馬は、よほど逸っているのか、足摺している。士気旺盛な証だ。
(敵も考えている…)
ドミティウスも唸っていた。
戦車隊を活かすには、ローマ軍騎兵を封じなければならない。そのためのアゲーマ。しかも大王親子自ら率いているのだ。士気が上がらぬ方がどうかしている。
「いっそ我らから攻めかかってはどうでしょう」
冷静沈着なセルギウスにしては珍しく、よほど逸っているのか、またまた軍団長の横顔に訊いた。
というか、朝から続く睨み合いは果てしなく続き、早くも日が傾き始めていた。誰もが焦れていたのだ。
「戦車隊が動き出してからだ」
ドミティウス、言い聞かせるように語気を強めた。
戦車隊の動向で戦局を見極め得ると判断していた。
「我慢だ。これは国家の興亡を決する戦いなのだから」
彼自身も今にも駆け出しそうになるほどに焦れているに違いなかった。
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