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ハンニバルその後−閉ざされた途
ローマ使節団は、ビュテニア王プルシアス一世と面会し交渉した結果、王はペルガモン王国との戦争終結に同意し、正式に和睦の運びとなった。
条約の詳細は伝わっていないが、ビュテニアの本領安堵は約束されたようだ。要は、それほど悪い中身ではなかったということであろう。
講和条約締結は、中立の都市キュジコスでなされることとなった。
もう一方の当事者、ペルガモンのエウメネス王一行もやって来た。
この時、ペルガモン王家についての逸話が残っている。
エウメネス王は、この外遊に、王家の重臣ともいうべき弟アッタロスに加え、母アポロニスを伴ってやって来た。
「母上にキュジコスの街並を愉しんで頂こうよ」
ペルガモン王家の兄弟は親孝行で有名であった。
キュジコスは壮麗な都市だったらしく、アポロニスは市内各地を巡り、神殿参詣やら名所の観光を愉しんだ。その老母の左右には、エウメネスとアッタロスが付き従った。
「おお、なんと麗しい光景」
「母御の仁徳の賜物であろ」
キュジコス市民は称賛した。
ペルガモン王家の名声いよいよ高まることとなった。同じ時期、マケドニア王家が、ペルセウス、デメトリオス兄弟いがみ合い、大いに不評を買い、国家の土台を揺るがしていたのとなんという違いであろう。偉大なる指導者は、外遊一つで名声を高めることが出来るのだ。
諸国の代表による講和条約調印が滞りなく済んだ後、大宴会が催された。
ペルガモン王やビュテニア王のほか、周辺諸都市の代表が集まっていた。
「祝着にござる」
フラミニヌスが流暢なギリシア語で、プルシアス一世王に語りかけた。
「これもフラミニヌス閣下の御尽力の御蔭」
老王は安堵していた。
ローマの意に反するのを承知で三年もペルガモンとの戦いを強行し続けた後に、このような軟着陸を見ることが出来たのだ。在位五十年の底力と自負したに違いない。
だが、ローマ政治家は決して生易しくはない。彼はそのことをすぐに思い知る。
「老君、ひとつ気掛かりなことを耳にしましての」
そのローマの政治家フラミニヌスが意味有りげに微笑んだ。
この時、四十五歳。いよいよ気力充実、野心満々を見せていた。
「はて、何ですかな」
「貴国に重罪人が匿われているという話です」
声を落とした。
「重罪人…」
老王はすぐさまピンと来たに違いない。
だが、交渉の際の弱腰は禁物とばかり、ふてぶてしい笑みを浮かべ、
「それは初耳ですな。誰のことでしょうかな」
と空とぼけた。
「アパメイア和約により我が国に引き渡されるべき者。老君にはよく御存知かと」
フラミニヌス、敢えて名前は伏せたが、和約でローマに名指しされた者は、一人を除いて全てローマに引き渡されている。だから、それが誰かは明らかであった。
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