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70年以上一族の所有であった、ゴッホの 『アルルの女、マダム・ジヌー(L'Arlésienne, Madame Ginoux)』 が5月2日に Christie's New York.でオークションにかけられる。
ニューヨーク・タイムズ紙によれば、個人蔵のゴッホの肖像画は12点以下だそうだが、そのうち2点は過去16年に競売にかけられ、「自画像」は7150万ドル、「ガッシュ医師」は4000万ドルという記録的な値段で落札された。ということは出物がなかなか無いということである。
夫婦ともに小児科医師でヨーロッパに毎年のように出かけていたアメリカのバックウィン夫妻が1929年に5桁の金を払って買ったもので、夫婦の持っている絵で最高値の絵だったそうである。母親が亡くなったときに息子のエドワードが相続したものである。今年83歳になる彼が売りに出したものである。購入から77年間一族のものであったゴッホはきわめて珍しいというのがクリスティーの専門家の話である。相当の落札金額が期待されている。ホリエモンさんが拘置所にいなければ、落札価格をつり上げる役割を果たすためにニューヨークに代理人を送るか、あるいは彼のことだから話題性のために、本人がでかけたかもしれない。
マダム・ジヌーはゴッホのアルル時代にモデルになった人であり、その後も彼女の旦那さんから手紙を受け取っているので、郵便局員のルーランとともにゴッホには思い出に残る女性なのであろう。
マダム・ジヌーは特徴のある風貌から皆さん良く記憶されているとおもうが、今回の絵はアルル時代にゴーギャンと一緒に描いた絵ではない。数ある肖像画で一風変わったエピソードがある。この絵は、彼が自殺する前に、酬われることのなかった片思いの友情の相手であるゴーギャンに残した遺書である。
ゴーギャンが描いて、アルルに残していったスケッチを基にして、ゴッホが努めて自分を押さえてゴーギャン風に描いた絵である。そういう意味で、芸術家の理想の共同体を夢見たゴッホが一つの結論を出そうとした努力が伺えるものである。芸術史上屈指のヒーローの描いた絵、そして美術的価値を超えたこのヒューマンなエピソードが、どう金銭的に評価されるのか興味がある。
結局自殺の一ヶ月前に書きかけて、未完のままになり、ゴーギャンが手にすることのなかった6月17付けの手紙でこのあたりの事情が分かる。書簡のサイトは
http://webexhibits.org/vangogh/
であり、サムネイル付きの丁寧な注釈がある。
その手紙は
http://webexhibits.org/vangogh/letter/21/643.htm
にある。関係の所だけ訳すと、
≪親愛なるわが友ゴーギャン
再度の手紙有り難う。信じて欲しいが、戻ってきて以来、君のことを考え続けてきたよ。僕はパリには3日いただけだ。パリの騒音等は僕には良くないので、精神衛生のために田舎に行くことにしたが、そのせいで君のことばかり考えるようになってしまってね。
それから、『アルルの女』のことをいってくれて大変嬉しい。この絵は厳密に君の素描に基づいており、君の好みに合わせてある。僕は君の素描に良心的かつ忠実に描くべく努力した。それでも色彩については真面目な性格と素描の様式に自分なりの解釈を加えたけどね。これは『アルルの女』の合作なのだ。もしご希望なら、『アルルの女』の合作は珍しいものだから、君と僕の共同作業の総括として、君と僕の作品として受け取ってくれたまえ。≫
いか続くが、省略する。
ゴッホのおそらくは自分の最後を予期しての遺書かもしれないが、ゴーギャンに送られることもなかった。ゴーギャンには迷惑な友情だったようである。
彼の死後、友人が遺作展を計画した。記憶は正確ではないが、ゴーギャンは、
≪あきれたね、あんな気違いと俺たちが一緒にされたらどうなるんだ。お前らアホと違うか≫
という内容の手紙をその友人によこしている。他の前衛画家達もゴッホの死を悲しむというより、自分たちの商売に関係するかもしれない画商テオへの儀礼的なお悔やみの手紙を送っている。
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この二人の逸話は、モームあたりがモチーフにでも使いそうですね?
2006/4/25(火) 午前 10:03
モームの小説がありましたね。一度読みなおして見たいですね。
2006/4/25(火) 午前 11:48 [ fminorop34 ]