ヘ短調作品34

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26.エリーザベト・フォン・ヘルツォーゲンベルクからブラームスへ

ライプツィッヒ、1878年1月19日

 待望のお手紙ただいま受け取りました。朝食にすてきな香りを添えてくださいました。わたしたちはあなたが手紙でおっしゃっていることと、おっしゃりたいことすべてに喜んでいます。でもあなたはビュルナーにそのプログラムを変更させるべきです。「一匹の野うさぎを殺すには猟犬がたくさん要る。」(1)けれどもフラウ・シューマンの場合には「魔の炎」(訳注1) 一曲で十分でしょう。彼女が演奏するなんて信じられません。選曲に品位がありません。真に芸術的な作品と「魔の炎」を同じ夜にどうやって鑑賞させようというのでしょう。まあー、ビュルナー、ビュルナー、私はあなたのことを紳士だと思っていたのに。このプログラムを組むようでは、興行師ではりませんか。絢爛たる「炎の曲」で満場は興奮するでしょう、その夜の栄冠はワーグナーに授けられるでしょう。「おおなんと遙かなる」(2)その他は穏やかなニ長調で、美の光を放ち、心に安らぎの香油を注ぐものですし、「幻想曲」は選ばれし者のために書かれた曲です。これらの前に「魔の炎」を持ってくるなんて。どうしてビュルナーは辛抱ができないのでしょう。どうしてワーグナーの魔術をわたしたちの劇場に入り込ませる必要があるのでしょうか。しかるべき場所でもないし、唯一の場所でもないでしょう。

火は主人に見守られて力を発揮する(訳注2)とはいいますが、ニ長調に持ってくるなんて。まあ本当に、本当に。フラウ・シューマンは演奏を拒否して当然ですし、あなたはビュルナーにいって、プログラムを変えさせるべきです。あなたのだいじな、だいじな交響曲のためにも中立的態度を捨てるべきですし、同じ夜に、わたしたちの高尚な本性と低俗な本性に同時にうったえるのは非芸術的であることを悟らすべきです。ラファエルとマカールト(訳注3)の絵が並んでいる展覧会があったら、ビュルナーは何というでしょうか。本当に腹が立ったものですから、何度も同じことを繰り返してしまいました。あなたが少しは憤慨して不機嫌になり、ビュルナー殿宛の手紙だけではなく、フランツ君宛の手紙を出してくださっていたらよかったのに!

 ハインリッヒはあなたの楽譜を送る準備をしていますが、彼の感激も一緒に詰め込んでいます。ところで、わたしたちの親愛なるフラウ・フォン・Bはまたしても私のお人形を取り上げ(3)、誕生日のお祝いと一緒にユトレヒトのフラウ・エンマに送ってしまいました。お荷物はあなた宛になっています。あなたが適当な洒落を言ってフラウ・エンゲルマンに渡したら楽しいでしょうから。大事なお方にはよろしくお伝えください。彼女はいろんなことができます。白い小さな手で上手に弾くことができますし、鳥のように笑い、だれもが彼女の虜になります。そして子供たちをこの世につれてくるのです。これこそ女のできる最上で最高の仕事ですものね。私の心底からの、惜しみない尊敬の念を彼女にお伝えください。

* * * * *

 アムステルダムでニ長調を演奏されるというのは大変な朗報です。お父さまのユリウス(4)もそれを聞かれて、喜ばれることと思います。

 さようなら。またすぐにお葉書を送ってくださいね。ビュルナーさんを説得してください。

 ぜひそうして、私の尊敬を受けてください。いやとおっしゃるなら、私は苦しむことになります。

エリーザベト・ヘルツォーゲンベルク



(1) ドイツの格言。

(2) デュエット。「修道女(Kloisterfräulein)、作品61第2曲」の第二詩節の第一行。

(3) おそらくライプツィッヒの見本市の人形。

(4) ユリウス・レントゲン。


訳注:

1.

問題になっているワグナーの「魔の炎」であるが、複雑な事情がある。ロベルト・シューマンは音楽評論で、リストやワグナーの「新音楽」を批判した。ワグナーもロベルト・シューマンを誹謗した。それでクララは生涯ワグナーを許さなかった。音楽界はワグナーとブラームスのいずれがベートーベンの正統な後継者であるかをめぐって論争を続けることになる。エリーザベトはもちろん反ワグナー派である。

ビュルナーは演奏会形式で公演したはずであるが、この場面だけの演奏会形式のヴィデオはなかった。ブーレーズが1976年に指揮したバイロイトの「ワルキューレ」の最後の見せ場を紹介する。ウォータンは サー・ドナルド・マッキンタイヤである。



2.

 「火は主人に見守られて力を発揮する」は有名なシラーの「鐘の歌」Das Lied von der Glocke に登場する、芸術的・教育的価値とその長大さで、あまりにも有名な詩の引用であるから、マックス・カルベックはドイツ語版に注を付ける必要はないと考えたのだろう。ドイツでは義務教育で必ず暗誦させられる詩である。エリーザベトが引用したのは430行中の次の2行である。

Wohtätig ist des Feuers Macht,

Wenn sie der Mensch bezähmt, bewacht

3.

彼女はシュトックハウゼン男爵家を継ぐエルンストが住むドレスデンには度々行っているから、ラファエルの有名な聖母子像を見ている。


マカールトは官能的な「赤」で有名なウィーンの画家である。彼のアトリエは上流社会のたまり場であった。クリムトら世紀末ウィーンの画家に影響を与えた。彼が聖母子像の画家ではないことは明らかである。


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