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「今日の詩」はブラウニングの「ポルフィリアの恋人」である。ブラウニングは「フェラーラ公爵夫人」で、新興メディチ家の娘と結婚した名門フェラーラ公爵の独白の詩を書いて、劇的抒情詩の新分野を開き評判となった。彼女は結婚後数年で死亡し、毒殺説の噂が立った。 今回の劇的抒情詩も「殺人」がテーマである。愛する女を永遠に自分のものにすべく彼女を殺すという話である。タブロイドの記事になってもおかしくない猟奇的殺人であるが、ブラウニングはこのストーリーの全行60行の音韻数を8行の弱強格で統一し、韻の形式も実に見事である。ちなみに韻の形式は [a, b, a, b, b] が完璧に12回繰り返されている。 ラファエル前派はこの詩に絵を書いていないので困った。イタリア系と思われる女性ポルフィリアの肖像をガブリエル・ダンテ・ロゼッティの陶酔的なベアトリーチェからお借りした。 Porphyria's Lover The rain set early in to-night, The sullen wind was soon awake, It tore the elm-tops down for spite, And did its worst to vex the lake: I listened with heart fit to break. When glided in Porphyria; straight She shut the cold out and the storm, And kneeled and made the cheerless grate Blaze up, and all the cottage warm; Which done, she rose, and from her form Withdrew the dripping cloak and shawl, And laid her soiled gloves by, untied Her hat and let the damp hair fall, And, last, she sat down by my side And called me. When no voice replied, She put my arm about her waist, And made her smooth white shoulder bare, And all her yellow hair displaced, And, stooping, made my cheek lie there, And spread, o'er all, her yellow hair, Murmuring how she loved me--she Too weak, for all her heart's endeavour, To set its struggling passion free From pride, and vainer ties dissever, And give herself to me for ever. But passion sometimes would prevail, Nor could to-night's gay feast restrain A sudden thought of one so pale For love of her, and all in vain: So, she was come through wind and rain. Be sure I looked up at her eyes Happy and proud; at last I knew Porphyria worshipped me; surprise Made my heart swell, and still it grew While I debated what to do. That moment she was mine, mine, fair, Perfectly pure and good: I found A thing to do, and all her hair In one long yellow string I wound Three times her little throat around, And strangled her. No pain felt she; I am quite sure she felt no pain. As a shut bud that holds a bee, I warily opened her lids: again Laughed the blue eyes without a stain. And I untighten'd next the tress About her neck; her cheek once more Blush'd bright beneath my burning kiss: I propp'd her head up as before, Only, this time my shoulder bore Her head, which droops upon it still: The smiling rosy little head, So glad it has its utmost will, That all it scorn'd at once is fled, And I, its love, am gain'd instead! Porphyria's love: she guess'd not how Her darling one wish would be heard. And thus we sit together now, And all night long we have not stirr'd, And yet God has not said a word! Robert Browning. ポルフィリアの恋人 夜早々に雨は降り始め 陰鬱な風は目覚め、意地悪く ニレの樹のてっぺんを引き裂き 湖を思い切り掻き回した。 この音で私の胸は張り裂けんばかり。 ポルフィリアが入ってきた。彼女は 寒気と嵐をきちんと締め出し しゃがみこみ、わびしい火床を 燃え立たせて、家中を暖めた。 終わると、立ち上がり、まとった 滴るマントと肩掛けを脱ぎ 汚れた手袋を置き、帽子の紐を ほどき、ぬれた髪を下げ 最後に側らに腰を掛け 私に声を掛けた。返事がないと 彼女は私の手を腰にやり 滑らかな白い肩をはだけさせ 彼女の金髪は大きく揺れた。 かがんで、私の頬を肩に沈ませ 金髪を肩一杯に広げ、小声で 私を愛していると言った。 心の中では懸命であったが 燃え上がる情熱を誇から解放し うぬぼれの拘束をすてぬまま 体を永遠に私に任せた。 しかし時として情熱がまさり 今夜の楽しみで抑えられぬ ひらめいた思い付き、彼女の愛から 青ざめてしまうが、すべては無駄だった。 そう、彼女は風雨の中を来たのだ。 私は彼女の目を見上げたが、確かに 幸福感に満ちている。ついに悟った ポルフィリアは私を崇拝しているのだ。 驚きで胸は膨らみ、どうしようかと 考える間もますます動悸は激しくなる。 この瞬間に、彼女は私のものになった。 美しく、清く、親切。私はあること を思い付き、彼女の長い金髪を束ね 愛らしい喉に三重に巻きつけて 絞め殺した。彼女に苦痛は無かった。 今でも苦痛は無かったと信じている。 蜂を閉じ込めた蕾のような目 私は用心して瞼を開いてみた。 青い瞳はもう一度清らかに微笑んだ。 それから彼女の首の回りの髪の束を 弛めた。彼女の頬は私の燃えるような 接吻で赤みをおび、光り輝いた。 彼女の頭を元通りに持ち上げ 今度はただ彼女の頭を肩にのせたが 顔は静かに肩に垂れていた。 微笑をたたえたバラ色の愛らしい顔は 喜びに満ち、究極の願いが叶えられ 嫌がっていたもの全てがすぐに去り その代わりに私、恋人を手に入れたのだ! ポルフィリアの恋人。彼女は想わなかったろう 切なる願いがこのよう聞き入れられるとは。 こうして二人は一緒に腰を下ろし 一晩中じっとしていたが 神は一言も言われなかった。 ブラウニング
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桜と日本人ですね。なぜか、三島由紀夫を思...




渡辺淳一「愛の流刑地」の下敷きになったような詩ですね
2007/8/30(木) 午後 4:32 [ ftm*m* ]
ftmzmt さんのご指摘の小説には気が付きませんでした。いつものようにウィキペディアを読みました。ブラウニングの下敷きは実話です。金髪、碧眼、白い胸の女を何度も刺して殺します。男は無上の喜びを感じ、女は悲鳴を上げなかったそうです。ブラウニングは刺殺を絞殺にし、二人で夜を過ごす点が違うそうです。首を絞める点では渡辺純一と類似しますね。興味深いコメントありがとうございました。
2007/8/30(木) 午後 5:32 [ fminorop34 ]
(少しずつ拝見させていただいています^^)ラファエル前派でもこの強烈な詩に絵を残すことはなかったのですね。「ベアタ・ベアトリクス」とこの詩とを重ねながら不思議な気持ちで読みました。心理分析というよりは状況描写が多い分、不可解さも残って余計狂気を感じるのかもしれません。fminorop34さんが画像に永遠の女性ベアトリーチェを選ばれたのは、わかる気がします...。
2009/5/6(水) 午後 7:15 [ - ]
みつるさんコメント有難うございます。ブラウニングはラファエル前派を評価していたかに記憶しますが、ブラウニングの劇詩にラファエル前派の絵があるのか、その後調べていません。また調べて成果がありましたら、ベルギーにお届けします。
2009/5/6(水) 午後 8:55 [ fminorop34 ]
大変昔の記事にコメントしてすみません。
インターネットでこの詩に触れてくださっているのはあまり多くなくて。。 最後の文 “And yet God has no said the word”の部分をどのように捉えていらっしゃいますか?いくら考えてもあまり納得する考えが浮かびません笑
2018/11/13(火) 午後 4:49 [ alba_edu_user00 ]
"And yet God has not said a word!"のことでしょうか。嵐の夜は終わり、あたりは静まり返っていた状況を語るとき、このような表現になったのではないでしょうか。すみません、お答えになっていないかと思いますが、英詩は初心者でして申し訳ありません。
2018/11/13(火) 午後 5:32 [ fminorop34 ]