|
153.エリーザベト・フォン・ヘルツォーゲンベルクからブラームスへ
[ライプツィヒ、1885年1月14日]
親愛なる友へ
今日再度お手紙したとしたら、悪いのはあなたが親切すぎるからです。先ず、あなたは黙って受け取れないものをお送りくださいます。それから、こんなに困ってしまうほど魅力ある慰めの手紙を下さいました。これにも感謝しなければいけません。これはわたしたちに大いに役に立ちました。おかげで突然穏やかな状態 になり、お粗末なブルックナーのこの上なく贅沢ながらくたを動揺することなく聴くことができるようになりました。ヘルダーリン(今読んでいます)が シラーについて言うように、わたしたちが「不可抗的に依存する」人物の同意により強くなりました。わたしたちが危機に臨んで穏やかな心で武装しても、外観 がもっともらしく飾ってあると、実に多くの人たちがたちまち、膨らんだ空気袋にだまされるという事実にたいして誰も慰めてはくれません。一つか二つひょっとしたらモティーフかもしれませんが、貧しいスープに浮かんでいる油滴のようなのが、マイスター・ブルックナーの在庫品のすべてです。でも直ちにお辞儀をしない人は[http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%9E%E3%82%B9_%28%E4%BD%BF%E5%BE%92%29 疑い深いトマス]の刻印を押されます。彼ら納得するだけの印と不思議が必要なのです。
わたしは知りたいのですが、誰がブルックナー十字軍の口火を切ったのでしょうか。どうやって出来上がったのか。ワーグナー派の中にフリーメイソンのたぐいがいないのか。それはタロッコ遊びみたいな物に違いありません。あるいはそんな[http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%88 ホイスト]かもしれません。「ミゼール」が宣言されたら、最低のカードが勝ち札になるのです。
わたしは今ソフォクレス(1)を心底愛読しています。あなたの反対尋問にべつに不審に思わずお答えして、ドンナー(2)のことで肝を冷やすような無知をさらけ出したことがありました。あなたがその時、わたしの教養で心配しておられるとは夢にも思いませんでした。ギリシャ物の愛好者ヘルダーリンを一部買いました。シュワブ(3)の版ですが、彼の注が増えました。
ハインリッヒは尊敬と愛情あふれるあいさつ送ります。彼は三つのカンタータのオルガン部と3月21日の聖ヨハネの受難曲(4)に没頭しています。
わたしたちは先日久しぶりで、「担水夫(Wassertr??ger)」(5)を聴きました。わたしたちが年を取るとともに、これらの曲の真価をいっそう評価し、真の神々への忠誠を強めることができるのは何と素敵なことでしょう。
心からの配慮と多くの感謝とともに、そして不快感の痕跡はまったくなく。
E.ヘルツォーゲンベルクより
注
(1) グスタフ・ヴェント(Gustav Wendt, 1827―)のソフォクレスの新訳書、ブラームスに献呈され、フラウ・フォン・ヘルツォーゲンベルクにプレゼントされた。
(2) ヨーゼフ・ヤコブ・テオドール・ドンナー(Josef Jakob Christian Donner)。有名な古典翻訳家。
(3) クリストフ・テオドール・シュワッブ(Christoph Theodor Schwab)、ヘルダーリン全集の編集者。
(4) ライプツィッヒ・バッハ・フェラインはバッハの誕生日にヨハネ受難曲を演奏した。
(5) ケルビーニのオペラ。
|