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今日のエミール・ネリガンはフランスのシャンソン風の詩 “Frisson d'hiver” tashou直訳すれば「冬の身震い」であるが、仮題「冬のガス灯」にした。パリでは信じられない寒さのケベックであるが、ガス灯など舞台道具は揃っているので、演歌にすれば「ケベック冬景色」といったところか。 困ったのは各詩節に出てくる “Gretchen” という女の子の名前をどうカタカナ表記するかである。もちろんこれはゲーテのファウスト博士が誘惑した純情可憐な乙女の名前である。移民社会のカナダで純然たるドイツ系の “Gretchen” がいてもおかしくはない。ただ彼がこのドイツ娘の名前をどう発音したのか不明である。 余談になるが、“Gretchen” はフランスで非常に有名なドイツ娘の名前だそうである。ネリガンが詩を書いていた頃の歴代のフランス政府は、反ドイツ感情を煽り、国論を統一しようとしてきた。その犠牲になったのが “Gretchen” 。彼女はデブで、無教養で、田舎くさく、さらに貞操観念のないドイツ娘のイメージを植え付けられ、ドイツ文化全体の蔑称として大いに利用された。 ネリガンがフランスで不人気な女性を登場させた意図を詮索するのは差し控えよう。一応「グルシャン」とカタカナ表記しておいた。日本人には知らなくてもロマンチックに響く「グレートヒェン」も寒いケッベクの「グルシャン」になるとくしゃみが出そうな寒い感じに響く。 Frisson d'hiver Les becs de gaz sont presque clos : Chauffe mon coeur dont les sanglots S'épanchent dans ton coeur par flots, Gretchen ! Comme il te dit de mornes choses, Ce clavecin de mes névroses, Rythmant le deuil hâtif des roses, Gretchen ! Prends-moi le front, prends-moi les mains, Toi, mon trésor de rêves maints Sur les juvéniles chemins, Gretchen ! Quand le givre qui s'éternise Hivernalement s'harmonise Aux vieilles glaces de Venise, Gretchen ! Et que nos deux gros chats persans Montrent des yeux reconnaissants Près de l'âtre aux feux bruissants, Gretchen ! Et qu'au frisson de la veillée, S'élance en tendresse affolée Vers toi mon âme inconsolée, Gretchen ! Chauffe mon coeur, dont les sanglots S'épanchent dans ton coeur par flots. Les becs de gaz sont presque clos... Gretchen ! Emile NELLIGAN (1879-1941) 冬の身震い ガス灯は消えかかっている。 僕の心を暖めておくれ 僕のすすり泣きで溢れる君の心 グルシャン! 僕の心が君に悲しい話を知らせたように 僕の神経のクラブサンは早く散った あのバラにリズムを合わせる グルシャン! 顔を見せておくれ、手を握らせておくれ 君は青春の道をいく僕の 大事な夢の宝物だ グルシャン! 霧がいつまでも消えることなく 冬にはヴェニスのガラスと よく合うとき グルシャン! 僕たちの二匹の大きなペルシャ猫が 火が音を立てる暖炉に近付き 嬉しそうにしているとき グルシャン! 夜のパーティーで震えながら 僕の慰まぬ心は驚くほど優しく 君の所へ飛んでいくよ グルシャン! 僕の心を暖めておくれ 僕のすすり泣きで溢れる君の心。 ガス灯は消えかかっている グルシャン! エミール・ネリガン
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