ヘ短調作品34

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218.エリーザベト・フォン・ヘルツォーゲンベルクからブラームスへ(2)

3月9日

近々、ミュンヘンのもっとも有名な外科医であるアンゲレルの右足治療の診察があるはずです。右足は間違いなく変形しており、副木のような機械的な器具で矯正する他はないみたいです。ハインリッヒはクロロホルムできつい処置を受けたいのですが、わたしたちの医師はその結果を恐れています。膝の滲出傾向がなくなる保証はないというのです。いずれにしてもハインリッヒは目の前でさらに病気に苦しむことになります。たとえ足が真っ直ぐになっても、元通りにしなやかにはなれません。変形が始まった場合の機械的装置の経験を訊いていただけませんか。わたしは楽観していません。アンゲレル教授は大権威であるとされており、わたしはすぐに彼の意見を聞くことになります。あなたの愛の同情を信じて、わたしはまた書きますからね。

リーズライについてもう一件。わたしはミンナ・ヴィッケンブルク(13)に―― 彼女はミュンヘンに近い所で家を見つけたいのです――借りる気はないかと訪ねて、毎日彼女の返事を待っております。わたしは彼女に向いているとは思えないのですが、彼女を優先させなければなりませんでした。わたしは今日彼女に手紙を書き、彼女の意思をあなたに知らせるようお願います。彼女はグリースにいますので、返事はすぐに届くと思います。

皇帝のご逝去(14)はわたしたちに衝撃でした。あの尊いお姿はすっかりわたしたちの生活の一部になっていましたので、逝去されたことを実感できませんでした。昨年の22日(15)大勢の人たちと「フリードリッヒ大王記念像(Friedrichdenkmal)」の前にお立ちになっていました。角の窓からお姿が現れたと同時に、大歓声がわき上がりました。わたしたちはもうこれが最後と思い涙で目がかすみ、何も見えませんでした。

陛下が逝去された今、お気の毒な皇太子(16)は死の床です。この状態で世襲されるとは何と酷いことでしょう。この瞬間を意識して人生を送られ、「延期」とも言えません。これは世界でもっとも悲しい事の一つです。

これらの事で人が――わたしたちすべて――痛みを感じるのはなんと不思議なことでしょう。わたしたちが堅い連帯で結ばれている証拠は慰めになります。わたしはフランスの人たちが実に気の毒です。一粒の涙も流すほどに痛みを感じる死がこの国にはあるのでしょうか。

ではさようなら。「陽気すぎる曲」(17)を控えるなどという奥ゆかしい作法はもうお捨てください。わたしたち哀れな者を元気づけるものが大事なことです。わたしは確信して申しますが、わたしたちは大変、大変落ち込んでおります。

わたしたちが以前幸せだったことはご存じのはずです。運命がわたしを拒否した大事なこと(18)にもかかわらず、わたしたちは満足していました。わたしたちの心は二部の和声のように一致してきました。そこへこの試練。長い囚われの身――わたしたちの自由と快活さを奪う――ここから釈放されそうにないのです。元気を維持するのは容易なことではありません。でも一生懸命がんばるだけです。わたしに二人分の勇気がなかったら、何事が起こるのでしょうか。

さようなら。独身の人は自分の災難を被るだけですから。でもわたしは誰とも交替はしません。

すぐにお便りを下さい。あなたの友情でわたしたちをぜひ励ましてください。

あなたへの傾倒はご存じのはずです。

エリーザベト・H.より







(1)この手紙は2月16日に書き始め、中断し、3月6日に再び書き始められ、3月9日に投函されている。

(2)書簡215。

(3)詩篇の147の第10節。「神は馬の力を喜びたまわず、人の足をよみしたまわず。」(英訳者注)。

(4)ライプツィッヒのバッハ協会の出版。

(5)「満ちたれる安らい(Vergn??gte Ruh))」。コントラ・アルト独唱のカンタータ。カンタータの第17巻にから。

(6)第16巻、第59番。

(7)「フィでリオ(Fidelio)の主人公。地価牢に閉じ込められ衰弱していた。

(8)ミュンヘン在住の文学者。彼の妻は後にレヴィと結婚した。

(9)ヘルマン・レヴィ(Hermann Levi)、ミュンヘンの音楽総監督。ブラームスとは60年代と70年代に親密であった。

(10)ワーグナーが1832年に作曲した交響曲。書簡45の追伸。

(11)ハインリッヒ・ツェルナー(Heinrich Z??llner, 1854―)。彼は1887年にゲーテの「ファウスト」に基づく楽劇を発表した。

(12)カロリーネ・ベッテルハイム(Karoline Bettelheim)、ゴンペルツ教授の弟のユリウス・フォン・ゴンペルツと結婚した。

(13)ヴィッケンブルク伯爵夫人(Gr??fin Wickenburg)、書簡185。

(14)カイザー・ウィルヘルム一世(Kaiser Wilhelm I)の逝去(1888年3月9日)はブラームスにも衝撃であった。

(15)皇帝の誕生日(3月22日)の祝典。

(16)皇帝フリードリッヒ・ウィルヘルム(Kaiser Friedrich-Wilhelm)。

(17)「ジプシーの歌、作品103」。

(18)彼女は子供がないことに言及している。

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