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255.エリーザベト・フォン・ヘルツォーゲンベルクからブラームスへ [ベルリン]1890年12月16日 先日あなたの五重奏曲を聴いた Kammermusik の 後でわたしはヨアヒムにせがんでスコアをもう一度見せてもらいました。それがすでに夜でしたので、最終便で発送しなければならず、当初意図したようにこの 曲についてすぐに手紙を差し上げられませんでした。聴いたときに印象に残った箇所は、すべて読むのではなく、短時間の間に傑作の一部を軽く弾き、アダージ オを記憶に刻み込みました。この曲は何と美しく、何と印象的なのでしょう。まさに完全に納得のいく音であり、整った比率のせいで明晰です。聴く耳を持ち、 感じる心を持った人をすべて虜にします。作品全体には大喜びしたことについてはご存じです。お怒りにはならないでしょうけど、二つの中間楽章が気に入りま した。ここに感情と活力と効果の完全な一体性が認められるからです。第一楽章では、特定のパートの音には馴染めませんでした。スコアを読んだときよりも日 当たりの良い感じがしました。第一主題の性格は静かな扱いの指示とはそぐわないと感じました。6/4の分散和音は結局野蛮でも、未開でもありませんでした。チェロの浸透を困難にしました。他の4人はリーダーの役割のチェロを溺れさせまいと、時々抑制する努力をしていました。あるいはチェロが聞いてもらおうと情け容赦なくギーギー鳴り、効果は一層悪 くなりました。最初の版が明らかに良く、伴奏楽器はメゾフォルテを越えることは決してありませんでした。先生、この楽節をもっと美しくする方法はないもの でしょうか。連続性は非常に美しいのです。第二主題と見事な導入部の小節(1)で 目がくらむ前にすこし試験してみてはいかがですか。展開部の冒頭は、バッハ風に力強く進行し、喩えようもないほど良い出来映えです。すなわち、へ音、変ホ 音、変ニ音、ハ音それにト音、へ音、変ホ音、ニ音と。ヨアヒムとハウスマンがそこで視線を交わします。わたしたちにとって何と嬉しい瞬間でしょう。その 後、展開部の終結部分(2)でチェロが再び呻き始めました。ハウスマンが(木の音だけ聞こえ、弦の音は聞こえなかったのですが、彼は夢中で気付かなかったのです)呻いたのではなく、楽器が途方もない要求に抗議の印を見せたのです。謙虚に考えても、あなたのような人物は心にも耳にも絶対的に楽しくはない曲を書くべきではありません。 こ の生意気な人物をしからないでください。あなたはわたしたちに「批評のために」を送りつけたでしょう。この新しい傑作への感謝と喜びは実際の音の失望で時 々損なわれました。もちろん銀と金で鋳造された中間楽章に失望することはありませんでした。そして最終楽章に関して、あなたは荒々しく、才気があり、抜け 目なく、少しばかり奔放ですから、音の粗野は正当化できます。でも第一楽章。読んでみると春の微風ですが、聞いてみると春分の疾風です。これは3月のことでしょう。事実です。ですから3月は春ではないのです(4)。 「魔法の島」(5)の気象官さん、どうかもう少し温和をお示しください。まるで炭で描いたようなこの数カ所を柔らかい鉛筆を持って検分され、塗り直し、調子を少し和らげてください。展開部の最後(6)に近い、へ短調(と思います)の高くひっかくような部分は決して美しくはありません。この楽章はすべて美しく響かねばならないのに、非常に不自然です。 非常に感動的な詩(6)の同封に感謝いたします。感謝の印にハインリッヒの最新作を送らせていただきますが、わたしには非常に良いと思われます。これは合唱――ありがたいことにソロはありません――とオーケストラのためのラテン語のレクイエム(7)です。 でも、3月 にライプツィッヒで公演する予定ですので、ここには予備の楽譜はありません。あなたの気に入るのではないかとわたしは秘かに自負し、あなたの感想をお聞き したいと思います。ハインリッヒはこの冬に一気に書き上げましたが、これはおそらく霊感のたまものだと思います。流れるように旋律的で合唱曲として良く書けていると思います。 今日はさようなら。改めて元気の出る貴重な五重奏曲の贈り物に感謝します。歌っているときのあなたのように効率よく終わりたいと思います。 {楽譜挿入}(8) それ以前にここに登場するへ音は美しすぎます。 崇拝するあなたのE.H.より (1)作品111の5ページ第3小節。 (2)14ページ第3小節。 (3)書簡252の「送り状」 (4)「プラター公園のブラームス」というのは、ウィーンと北の風味が感じられる五重奏曲にはぴったりの献辞である。友人の一人がリハーサルの後にこのことを言った。ブラームスはにんまりと笑って「その通りだよ」と言った。「可愛い女の子がみんな集まっているでしょうが。」 (5)フェルディナント・レイモント(Ferdinand Raimond )の戯曲の題。 (6)作品111の11ページ第8小節。 (7)___の詩。ブラームスが総譜を___に貸し、ブラームスのアダージオの間にそれが入っていた。それがベルリンに行き、やがて返却され、フラウ・フォン・ヘルツォーゲンベルクのおかげでついにブラームスの目に留まった。その詩は: Wegesm??de hingesunken An den Rand der Bergsquelle Hab’ Erquickung ich getrunken Und den Blick gewaschen helle Weiter will ich nun erproben Meine Kraft am Wanderstabe, Und du Felsenherz dadroben, Nimm den Dank f??r deine Labe! (8)ヘルツォーゲンベルクの四声のコーラスと管弦楽のためのレクイエム、作品72。 (9)作品111のアダージオ、27ページ、第8小節。
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