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現代詩人はなんとじれったい。魅力的な女に関心を持つのにどうしてこうも言い訳が必要なのだろう。 どんな美女といえども、その頭蓋骨を想像すれば、その女の魔力から解放される。エリオットはウェブスターやらジョン・ダンの講釈から始まる。ようやくグリーシンなるロシアの女性が登場する。若干解剖学的な続きがあるが。彼が好きな猫族のジャガーが登場する。ジャガーは猫の臭いもなく一匹で樹上に暮らし、周囲を静かにさせる威厳がある。 グリーシンも一人で小さな家に住みながら浮いた噂もないのだろう。彼女に魅せられたエリオットであるが、習性で己が肉体を解剖する。そこにあるのは空理空論を吐き出す肺を守る乾いた肋骨である。だが「死のささやき」はしばらく消えることになる。 詩は八つの四行詩から構成され、偶数行で韻を踏んでいる。二十世紀になると、韻文もルーズになってきたが、エリオットとしては綺麗なほうである。だが最後の詩節の charm と warm というカップリングは、見た目には韻のようだが発音の類似性はないので韻とはみなされない。「視覚韻」と呼ばれているものである。19世紀ではそれだけで物笑いの種になったし、同時代のフロストでも絶対にしない組み合わせである。重々承知の上でエリオットはやっている。詩が朗読されるより読まれるようになった時代を反映しているのであろうか。 Whispers of Immortality WEBSTER was much possessed by death And saw the skull beneath the skin; And breastless creatures under ground Leaned backward with a lipless grin. Daffodil bulbs instead of balls Stared from the sockets of the eyes! He knew that thought clings round dead limbs Tightening its lusts and luxuries. Donne, I suppose, was such another Who found no substitute for sense, To seize and clutch and penetrate; Expert beyond experience, He knew the anguish of the marrow The ague of the skeleton; No contact possible to flesh Allayed the fever of the bone. . . . . . Grishkin is nice: her Russian eye Is underlined for emphasis; Uncorseted, her friendly bust Gives promise of pneumatic bliss. The couched Brazilian jaguar Compels the scampering marmoset With subtle effluence of cat; Grishkin has a maisonette; The sleek Brazilian jaguar Does not in its arboreal gloom Distil so rank a feline smell As Grishkin in a drawing-room. And even the Abstract Entities Circumambulate her charm; But our lot crawls between dry ribs To keep our metaphysics warm. T.S. Eliot 不死のささやき ウェブスターは死にすっかり憑かれ 皮膚の下の頭蓋骨を見るのだった。 それで胸のない地下の生き物が のけぞって唇の欠けた笑みをうかべた。 眼球のかわりに水仙の球根が 眼窩からにらみつける! 欲望と贅沢を抑える思考が 死体に纏わるのを彼は知っていた。 彼が知っていたのは 骨髄の苦痛、頭蓋骨の悪寒。 肉体との接触の可能性がないと 骨の熱は和らぐことである。 グリーシキンはいい。彼女の目は ロシア風、強調のために線がある。 コルセットしない、親しみやすい胸は 胸膨らむ幸福を期待させる。 滑らかなブラジルのジャガー 樹上の影にあって 鼻をつく猫臭を発しない 客間のグリーシキンもそう。 抽象的な実在すらも 彼女の魅力を取り巻く。 だが僕らの持分は乾いた肋骨を 這い回り、空論を暖める。 ESエリオット 注 1. グリーシキンというロシア美人のモデルはディアギレフ舞踊団のセラフィナ・アスタフィェーヴァSerafima Astafieva (1876-1934)であるとされる。グーグルで画像検索してみた。残念ながら、彼女には会えなかった。
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TSエリオット
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桜と日本人ですね。なぜか、三島由紀夫を思...




ジゼルです。調べます。
2009/8/13(木) 午後 11:46 [ fminorop34 ]
お写真のバレリーナはどなたかは分かりませんが美しいですね。『ジゼル』のワンシーンでしょうか、それとも、『ラ・シルフィード』?
2009/8/13(木) 午後 11:47 [ cygnus_odile ]
ジゼルですか、なるほど。
ところで、頭蓋骨って、医学系の解剖学の先生などは、人に会うと、とりあえず、頭骨の形の良し悪しを見てしまうそうです。
2009/8/13(木) 午後 11:50 [ cygnus_odile ]
すみません。この写真はウィキで拝借したものでジゼルはたしかですが、バレリーナはまた明日までに調べておきます。それにしてもグリーシキンさんのような胸の豊かなバレリーナて珍しいですね。エリオットも首っ丈ですよ。
2009/8/13(木) 午後 11:54 [ fminorop34 ]
分かりました。キューバの女性です
シオマラ・レイエス
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%82%AA%E3%83%9E%E3%83%A9%E3%83%BB%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%82%A8%E3%82%B9
2009/8/13(木) 午後 11:58 [ fminorop34 ]
写真に迫力がありますね。ジゼル・・オーラを感じます。
前段のご説明に助けられました。
ここんとこ、ご無沙汰ばかりです。
落ち着いてまた・・お邪魔させてくださいませ。
2009/8/18(火) 午後 2:31 [ - ]
お元気の様子はブログの投稿ぶりから推察いたしております。ますますのご健闘を祈ります。
ジセルさん素敵ですね。
2009/8/18(火) 午後 2:35 [ fminorop34 ]