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この詩はマクリーシュが三百年前のイギリスの詩人アンドリュー・マーヴェルENに呼びかける形式になっている。実際は、マクリーシュがアンドリュー・マーヴェルになった気分で高揚しているのである。 アンドリュー・マーヴェルはピューリタン革命期に活躍したイギリスの詩人である。彼は貴族の家庭教師になり、子弟の大陸旅行 Grand Tour の引率者になっている。イタリアでの滞在も長かった人である。ヨーロッパに感激したマクリーシュが自身をマーヴェルに見立てたのである。 彼はアンドリュー・マ―ヴェルに正午に高い所に立って、夜がヨーロッパ大陸の東から西へと大旅行する様子を感じるように勧めている。それはいいのだが、この詩は「連続性」を強調したいのだろうか、コンマもピリオドもない。読者には負担であるが、モダニストの彼が珍しく古典的な韻文詩の形式を採用しているので、これが多少情報を補ってくれる。 詩は四歩の弱強格で韻の構成も伝統的な ABAB である。 語学力を試されているようである。だが伝統的な韻律に従う場合、コンマもピリオドも抜いて読まなければ詩を読解したとはいえない、ということであろうか。折にふれ読み直して修正するつもりである。 You, Andrew Marvell And here face down beneath the sun And here upon earth's noonward height To feel the always coming on The always rising of the night: To feel creep up the curving east The earthy chill of dusk and slow Upon those under lands the vast And ever climbing shadow grow And strange at Ecbatan the trees Take leaf by leaf the evening strange The flooding dark about their knees The mountains over Persia change And now at Kermanshah the gate Dark empty and the withered grass And through the twilight now the late Few travelers in the westward pass And Baghdad darken and the bridge Across the silent river gone And through Arabia the edge Of evening widen and steal on And deepen on Palmyra's street The wheel rut in the ruined stone And Lebanon fade out and Crete high through the clouds and overblown And over Sicily the air Still flashing with the landward gulls And loom and slowly disappear The sails above the shadowy hulls And Spain go under and the shore Of Africa the gilded sand And evening vanish and no more The low pale light across that land Nor now the long light on the sea: And here face downward in the sun To feel how swift how secretly The shadow of the night comes on... Archibald MacLeish おーい、アンドリュー・マーヴェル! 太陽の真下の此処で顔をさげ 此処で正午を迎える高台に立ち たえず近付いてくる たえず昇りくる夜を感じてごらん: 湾曲した東にしのびよる たそがれの土のような冷気を ゆっくりと地上の人々の上に 昇りくる影が広がるのを感じてごらん 不思議にもエクバタナの樹々は 葉の一枚一枚が夜を受け入れる 不思議にもひざまで浸ける暗闇が ペルシア中の山々を変容させる そして今やケルマンシャーでは うす明かりに人通りもまばらな 暗い門と枯れた草をこえて西に 通りぬける旅人も今は少なく さらにバクダッドは暗くなり 静かな川にかかる橋を過ぎ アラビアをとおり夜のはずれは 広がりしのびよってくる パルミラの街では深まる 廃墟の石に残された車の跡 そしてレバノンは消えそして 雲より高いクレタを通りすぎる シシリーをこえて大気は 陸へと向かうカモメで閃き 出てはゆっくり消える 陰る船体に張られた帆 そしてスペインは沈み アフリカの海岸の金の砂地と 夜は消えたのでもはや陸地の 低く照らす青白い光はない 海の上の長い光も: ここで日差しの中で下を見て いかに速く知らぬ間に 夜の影が近付くのを感じてごらん... アーチボルト・マクリーシュ(1892-1982) 注 ここに登場する固有名詞をウィキで参照すると 上の写真はパルミラの遺跡に沈む太陽。
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マクリーシュ
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