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私は女流画家ルブランに興味を持っているのだが、今回を一つの区切りにして、ルブランの投稿は当分控えたいと思っている。
私は The Exceptional Woman --- Elisabeth Vigee-Lebrun and the Cultural Politics of Art という本を持っている。著者は Mary D. Sheriff で North Carolina 大学の教授である。フェミニストの美術史家と考えてよいだろう。
今回ルブランの投稿で参考にしようと思ったが、内容が濃すぎて読み切れなかった。彼女の学識の深さにふれて、うかつなことは書けなくなったのである。私たちの世代は多少の左翼用語の語彙を持ち合わせており、それで充分読みこなせるファエミニストの著作もあるが、どうもそれだけでは The Exceptional Woman を理解できそうにない。ヨーロッパの歴史・文化とりわけ旧体制の法理論、さらに心理分析の素養も必要のようである。
私は野球の解説記事程度の気楽さで楽しめる美術書しか読んだことがない。私にはまさに exceptional な著作である。それでも子宮を持ち合わせないかぎり解読不能というような不気味なフェミニスト本ではなさそうだ。これを一夏じっくり読むことにしよう。女王の美しくも悲しい恋の物語も出てこないのもよい。途中メモ代わりに彼女の説を紹介していくかもしれない。
さて脱線しそうだが、絵の説明をしよう。
この本によれば、不道徳な噂の絶えない女王の不人気を払拭したいという当局の政治的意図を、機転の利くルブランがくみ取って、女王と子供たちの肖像画を描いた。お世辞にもお美しいとはいえないアントワネットを、優しくて母性愛に満ちた美しい女性に仕立てた、という記述があったが、おそらくこの絵のことであろう。
女王は男の子二人と女の子二人を産んだ。右手の男の子が空の揺りかごを見せているが、妹が生後まもなく死んだことを示唆している。その男の子も病死しているので、膝に抱かれている赤ちゃんがお世継ぎになる。
この子が王党派の言う「ルイ17世」であり、インターネット上ではもっとも人気のある伝説のルイ王である。この子は子供ならではの学習能力でたちまち、革命歌を歌い、人民のダンスも踊れるようになったが、大革命を生き延びることはかなわなかった。
女の子は、捕虜交換という名目で、母親の生まれ育ったオーストリアに送られ、家族の獄中生活を証言している。王政復古で政治的に重要な役割を演じたとされる後の Madame Royale である。
最後にルブランの包括的なサイトを紹介しておこう。アントワネットのみならず、女流文学者 Madame de Stael、ネルソン提督の恋人 Lady Hamilton、ナポレオンお気に入りの美人歌手 Madame Grassini、そして Madame Le Brun 自身には度々お目にかかれる。英訳の「回想録」も収録されている。
The Art of Elisabeth Louise Vigee Le Brun 1755-1842
http://www.batguano.com/vigee.html
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