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ブログをあまり重くしないため、今回は絵抜きの記事である。
最近BBCのサイトで戦後60年ということで、イギリス人の戦争体験を記録しておこうという企画があり、結構面白くて読んでいた。
大戦に一兵士として参戦したイギリスのお爺さんの思い出話に the full Monty という見慣れない英語が出てきた。彼はエジプト戦線で Montgomery 将軍(愛称 Monty、元帥、初代アラメイン子爵)の指揮下でt敵将ロンメルと戦った兵士である。文脈からおおよその想像はついたのだが、辞書には載っていない。
その後、この言葉を知らなかった私などは、「遅れている」と言われかねないほど有名であることが分かってきた。The Full Monty というイギリス映画が上映されてから一躍世界中に知られる英語になっていたようである。
今後辞書が改訂されたら必ず載る言葉であることも確信した。小さな辞書の場合はまったく問題はない。
訳は
(1)全部
(2)全裸
とし、語源についてはふれないか、of disputed origin とすればよい。用例もちゃんとある。
世界でもっとも権威があるOEDといえども、この語源については諸説を簡略に紹介して済ますだろう。このように素性がよくない言葉の場合、素人といえども Oxbridge の教授連に卑屈になることはない。権威ある学者も、このスラングの由来についてはお手上げ状態であり、スラングの常用者は素人なのだから。
the full Monty の語源論争は、肩のこらない娯楽としては残るであろうし、いろいろな新説が登場するであろう。専門家は当たり障りのない論評を加えるのみである。われわれも好き勝手なことを言ってさしつかえない。
現段階でも10種類ぐらいの説はあるが、そのうち3種類はイギリス人なら最初に連想する Monty = Montgomery 将軍説である。すなわち、
1.Montgomery はありとあらゆる名誉ある勲章を授けられ、軍の式典にはすべて胸に付けて列席した。
2.Montgomery は北アフリカの砂漠でもイギリス式の朝食(ベーコン、卵、揚げパン、トマト、キノコ、トースト、紅茶)に執着し、そろって出てくればご機嫌であった。
3.Montgomery は、なにも将軍が言わなくても、下士官が言えばすむような細かいことまで、なにからなにまで兵士に訓示した。
これだけ眉唾の解釈が登場すると、私も眉に唾をつけて一つ提案したくなる。
4.Montgomery は、兵員、武器、資材が完全にそろい、敵を上回らない限り、血気にはやる部下に攻撃命令を出さなかった。
彼の慎重な用兵は非常に有名であり、しばしば非難されたが、勝者になってからは賞賛された。
イマジネーションに欠けてはいるが、この程度でよければ、日本人である私にでも提案できるのが俗流語源学である。
問題は用例である。OEDは用例とその出典を年代順に明示し、とくに最古の用例にこだわってきた。改訂版を出した直後にさらに古い用例が出てきたのではOEDの権威に傷が付くことを懸念しているようだ。最古といっても、OEDが1985年以前の用例を求めているところをみると、たかが20数年前の話である。自分の記事に、the full Monty を使った人はまだご存命の可能性が大であろうが。
いつか物置に眠っていた古いタブロイドから the full Monty を発見するイギリス人が出てくるかもしれない。それでも、OEDから "Thank you" の手紙が届くかもしれないが、"thankless"、つまり謝礼はなし、OEDに発見者の名前が載るわけでもない。イギリス人とても夢中になる価値はない。もちろん日本人には到底無理な課題である。
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