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また日付が遅れてしまった。急いだので不適切な訳があるかもしれない。これは毎日ドイチェ・ヴェレからおくってくるメイルで急きょ訳を思いついた次第である。なにしろバイロイトとは縁のない人間であるから、バイロイトでは最高のワグナーを聞けるところと思っていたが、一族支配とか演奏水準の低下とか色々問題を抱えているらしい。
バイロイト・ワグナー音楽祭のドラマと幻想
ドイチェ・ヴェレ 7月25日
ドイツの脚本家で演出家のタンクレド・ドルストの新演出によるワグナーの16時間の「指輪」で1ヶ月に及ぶ音楽祭の幕を切って落とす。
舞台でも舞台をはなれても今年のバイロイトのリヒアルト・ワグナーの音楽祭には多くのドラマがある。ドイツで尊敬されている脚本家で演出家のタンクレド・ドルストがわずか2年で創作したワグナーの4大オペラ「指輪」で、火曜日に開幕する1ヶ月の祭典への期待は高まっている。
80歳のドルストはほかの舞台ではヴェテランであるが、彼にとって「指輪」がオペラ劇場ではじめての演出になる。舞台は現代であり、最近の演出ほど大胆ではないと予想されているが、清掃員からスター・ソプラノにいたるまでドルストの演出がどうなるかについて秘密を誓わされている。
:世界のワグナー愛好者はこの16時間の劇の第13版にあたる今回のバイロイトがこの作品の新鮮かつ急進的な演出になることを期待している。
* 程よい妥協
「 本稽古を見る限り、今年の演出は前年度と比較して、芸術的に良くなっている」とバイロイト大学の音楽学教授のアーノルト・ヤコブスハーゲンは述べている。彼はドルストの演出は保守性と挑発性の「程よい妥協」であると評価している。
当然、「指輪」の3回に及ぶ完全な公演は31歳のパトリス・シェローの1976年の演出と比較されるのは間違いない。この演出は最初激しく非難され、後には「世紀の」功績と称えられたからである。
ヤコブスハーゲンによれば、シェローとドルストを比較するには時代が離れすぎている、だが彼とワグナー専門家はこの最新の「指輪」が記憶されるのは間違いないとのことである。
* 直前の交代
ドルストはよく物議をかもすデンマークの映画監督のラルス・フォン・トリーアが2004年の6月に突然手を引いたときにバイロイトの仕事を引き受けてくれるように頼まれたのである。
フォン・トリーアはワグナー特注の祝祭劇場の測定を完了しており、秘密の演出といえるものを考えぬいていたのだが、突然辞任し、未解決の問題をのこし、音楽祭に謎を残したのである。
彼は辞任の決定の理由に一つのヒントを残している。「私は病的な完璧症であるから、ただ大騒動になるだけだ」と Die Welt am Sonntag はフォン・トリーアの公式声明を引用している。
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* 非現実の世界はおてのもの
ドルストは神話に基づく8時間にも及ぶ大規模な劇「マーリン」でその能力を立証している。彼の現実離れした伝説での経験はチュートニックな神話に基づくワグナーの傑作にも活かされるわけである。
「指輪」四部作は「ラインの黄金」、「ヴァルキューレ」、「ジークフリート」、「神々の黄昏」からなり、不思議な力を持つ指輪の物語である。ワグナーは1848年に北欧のニーベルンゲン物語を基にして一作品を作曲することを漠然と考えていた。1850年には脚本も完成したが、1874になって4作品がようやく完成した。
* 130年間一族のもの
「指輪」は1876年にワグナー自身の構想にもとづき、第一回バイロイト音楽祭で全曲が演奏された。
130年後の今日、バイロイト音楽祭は86歳になる作曲家の孫であるヴォルフガング・ワーグナーが管理している。ヴォルフガングは15年間一緒に取り仕切ってきた兄ウィーラントが1966年に死んだ後、音楽祭に君臨してきた。
40年に及ぶ支配の後、S??ddeutsche Zeitung Magazinの最近の論文にもあるように、批評家により彼の「芸術的停滞」を非難されるようになった。ヴォルフガング・ワーグナーは舞台裏の君主の役割を担うようになり、彼のリーダーシップを渋々放棄してきた。
にもかかわらず、前衛的演出家とは気脈を通じてきた。 ― たとえばクリストフ・シュリンゲンジーフであるが、彼の偶像破壊的「パルジファル」は今年の音楽祭では5回公演されることになっており、スイスのクリストフ・マルターレルの「トリスタンとイゾルデ」は2005年の音楽祭でデビューしたが、8月1日にはふたたび上演される。
S??ddeutsche Zeitung Magazin でのインタビューで彼は「『ストレス』という言葉は私にはない」と述べている。「私は自分を過大評価はしていないし、自分に出来ること、自分がしなければいけないことは知っている。この音楽祭を引き継ぐ適任者が登場したら ― そのときにはね。」
* 若き血ともっといい歌手
「適任者」とは彼の娘のカタリナ・ワグナーであるらしい。彼女は「ニュールンベルクのマイスタージンガー」で演出家としてのデビューを2007年にはたす予定である。
ヤコブスハーゲンは、カタリナがいづれこの祭典を運営するのは明らかだとのべている。
「演奏家の面で変化は絶対に必要である」と教授は述べている。さらにバイロイトが最高の歌手をなかなか獲得できないでいる。「経費節約のために、歌手の報酬は国際的な基準に従っていない。」
バイロイトはワグナー・ファンが「指輪」全曲を鑑賞できる世界で唯一の場所である。 ― ほかのオペラ劇場は4部作をシーズンにわけて上演している ― ヤコブスハーゲンによれば、ワグナー演奏の質はニューヨークやウィーンのほうが高い。
彼は数年後にはチケットの価格が上げられ、これにより国際的なスター歌手との交渉の余地が生まれると予測ている。
現在、劇場で一番高い席は伝説的な"Green Hill"は208ユーロ($264)であるが、チケットの予約は10年先までつまっている。
* 待つ価値はあるの?火曜日に開幕というのに。
火曜日の催しものに1841年作の「さまよえるオランダ人」が上演される。「指輪」の3回の完全演奏の第一回は「トリスタンとイゾルデ」を指揮するクリスティアン・ティーレマンで水曜日に始まる。「パルジファル」は一ヶ月の長期音楽祭で五回上演される。
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