ヘ短調作品34

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バイロイトの「指輪」の新演出への期待がたかまるなか、ニューヨーク・タイムスのクラシック音楽担当のトマシーニ記者の記事がバイロイトから届いた。ただし新演出の報告ではない。そもそも「指輪」とは、「指輪」のCDにまつわる話である。ブログでは3回に分けて投稿する。


音楽の神ワグナーと「指輪」の神々のCD

アンソニー・トマシーニ

ニューヨーク・タイムス 7月28日

バイロイト、ドイツ
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世界中のワグナー派がバイロイト音楽祭にやってきた。お目当ては新演出のワグナーの「ニーベルンゲンの指輪」であり、すでに始まっている。このオペラ劇場はワグナーが設計し、彼の作品のみを上演する建物であり、1876年に開館し、はじめて4部作16時間という、たまげるような野心作「指輪」の完全公演を成し遂げている。
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ワグナーが企画したように、「指輪」を6日以内の完全公演(初演は5日間でやっている)は、ほんの以前まではバイロイト以外では稀であった。しかし最近の25年間、オペラの世界では、「指輪」の公演はトップランキングの地位を目指す歌劇団の「招待状」になりつつある。

9月にはカナダ歌劇団(the Canadian Opera Company)がトロントの「四季芸術劇場」(the Four Seasons Center for the Performing Arts)にオペラ劇場をオープンし、こけら落としに「指輪」を公演することになっている。来年春には、ワシントン・ナショナル・オペラが4部作の第2作「ワルキューレ」を公演する。フランチェスカ・ザンベロ演出によるアメリカ的イメージの「指輪」である。この前のシーズンの「ラインの黄金」で始まり、全曲公演される予定である。ニューヨーカーは来年夏にリンカーン・センターで公演予定のキーロフ・オペラを心待ちにしている。指揮はメトロポリタン・オペラ・ハウスのヴァレリー・ジョルギエフである。メトロポリタンとロサンジェルス・オペラも新演出を計画している。

バイロイトの「指輪」が同族支配の音楽祭が、世界最高のワグナー歌劇場と自称する同族支配の音楽祭がその地位を維持するかどうかは、月曜日に全曲演奏が終わったあとで大いに議論されるであろう。一方、この作品に没頭したい人たち ― ワグナー初心者、ワグナー通、ワグナー狂 ― には、選択しようにも、価値あるレコーディングがそれほど多いわけではない。この記事で、ワグナー狂の人達にオペラの解説と選択可能性について述べることにする。

「指輪」は4つの長いオペラから成り立っているが、本質的には4部からなる一作品である。あるいはワグナーが述べているように、2時間半の休憩なしのプロログ「ラインの黄金」とされに続く3部作である。指揮者は一人で、理想的には配役は同じであるのが良いに決まっている。神話に基づく作品に共通することだが、「指輪」には多くのテーマがあり、その解釈は多様である。

物語は神ウォータンと彼の大家族の叙事詩である。ウォータンは主神であるが、彼の権力は無限ではない。うまくできた牽制システムがある。神々と人間の世界で重要な役割を果たす副神や半神の幕僚がいる。ウォータンは若さの女神フライアの差し出す黄金のリンゴを食べなければ不死身ではない。フライアは妹のフリッカに守られている。フリッカはウォータンの妻であり、彼女は疑い深いのも当然である。亭主のあちこちでの不貞で腹をたててきたからである。

だがウォータンは色事で忙しいだけではない。この悩める神はさらに大いなる権力と知識を求めている。彼には、知識は権力である。彼の誰よりも手強い敵は、ニーベルンクの劣等族出身のこびとのアルベリヒである。アルベリヒはライン川の底にある魔法の黄金の秘密を発見した。この黄金はラインの乙女によって守られている。秘密とは、愛を捨て、この黄金からできた指輪をはめた人物は世界を支配できるというものである。

「指輪」は権力と愛の不穏な関係の物語だと思う。男女を問わず、そしられ、惨めな思いをしたアルベリヒは、愛を捨て、黄金を手に入れれば、もう失うものはないと悟った。これが「ラインの黄金」の開幕のシーンで成し遂げたことであった。このあとの「指輪」は忠実な代役、挙げ句のはては二人が産ませた子たちを使ってのウォータンとアルベリヒの相克である。代々のたがいに憎しみあい、たがいの挫折をはかっていく。

当然、複雑きわまる「指輪」に取り組み始めたのは、完全なレコーディングであった。1950年代には、同一の配役で「指輪」をスタジオで録音するというアイディアは金銭的には禁止的であり、芸術的にもひるませるように思えた。だが1958年には、ゲオルク・ショルティ指揮のウィーン・フィルハーモニーとドリーム・キャストが「指輪」の最初のレコーディングをデッカのレーベルで完成させた。完成には7年を要し、この録音はクラシックとなっている。これ以外のセールス・ポイントもある。ショルティの「指輪」が賞賛されるのは、「指輪」の最初のステレオ録音ということである。

結局1955年には、デッカの技術者がステレオ録音の機械をバイロイト音楽祭の会場に持ち込み、その夏のヨゼフ・カイルベルト指揮の「指輪」の演奏をライブ録音した。うわさはされていたが、このときのレコーディングは発売されなかった。今年早々、テスタメント・レーベルはこのチクルスの4つのオペラのうち2つのオペラ「ワルキューレ」と「ジークフリート」を出した。残る二つ「ラインの黄金」と「神々の黄昏」は今年度末に出すとテスタメント・レーベルは約束している。そうなることを期待しよう。「ワルキューレ」と「ジークフリート」はともにまったくの新発見であったから。

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