ヘ短調作品34

ルブランの回想録の link 先はゲストブックを御覧ください。

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バイロイト第六日

ジークフリートあっての「指輪」

アンソニー・トマシーニ

ニューヨーク・タイムス 8月1日

ヴァージニア生まれのテノール、ステファン・グールドの経歴をお話ししよう。彼はジークフリート役をバイロイト音楽祭の新演出の「指輪」ではじめて演じた人である。つい最近まで彼はアンドリュー・ロイド・ウェバーの「オペラ座の怪人」の巡業で歌っていた人である。冗談じゃなく本当である。

グールド氏はボストンのニューイングランド音楽院でしっかり訓練された音楽家で、早くから成功を収め、将来を嘱望された。ロッシーニの「タンクレディ」では、なんと主役として、マリリン・ホーンを相手役にしたのですよ。彼の声の幅を広げていく時期に、「オペラ座の怪人」の巡業に加わったのである。私が想像するに、金には抵抗できなかったのだろう。

八年間ミュージカルにいた後、オペラに戻った、たんなるテノールではなく、ヘルデン・テノールで要求の厳しいワグナーのレパートリ、その他、パワー、スタミナ、明瞭なトップ・ノートを要求されるドラマティック・テノールの役を歌ってきた。最近の6年間、ヨーロッパの一流歌劇団、とくにドイツで、ベートーベンの「フィデリオ」のフロレスタンの役などの歌唱で、いい評価を得てきた。バイロイトでは2年前「タンホイザー」でデビュウした。44歳のグールド氏が「ジークフリート」も主役を土曜日に演じたが、非常な期待があった。しかも場所が場所だけに。

第一幕の後、グールド氏が一人で聴衆にお辞儀をしに現れ、やかましいブーイングがちらほらある中で、並のオベーションを受けたときの彼の心中を私は想像できる。バイロイトの聴衆はオペラ劇場の言論の自由を堂々と行使するのである。

ワグナーはオペラの境界をあらゆる要素で押し広げた。第一に人間の声に期待されるものである。「ジークフリート」を書いていて、ワグナーはその境界を見失ってしまった。ジークフリートは乱暴で、大胆不敵で、粗野な若者であり、熊と踊りはね、刀を作り、竜を殺し、自分を育てた陰謀を企てる小人を殺し、しかも自分の不思議な出生を考えるのである。その間テノールのためにかって書かれたもっとも大変な歌を歌い続けるのである。それから数時間後には山に登り、彼の最初にみた女であるブリュンヒルデに出会い、眠りの呪いから目覚めさせ、恍惚とした愛の感情を体験し、彼女とともに30分の疲労困憊させるデュエットを歌うのである。ジークフリートは歌い続けてきた。彼女の方は疲れていない。

第一幕でグールド氏はあきらかに自分のペースでうたい、控えていた。すこしばかりためらっており、もう少し声を使えたはずである。一方で彼の歌唱は高温部で不安定であったが、エネルギッシュであり、正確であった。たくましくせっかちな若者そのものであった。ラウリッツ・メルヒャーに次ぐか?遠く及ばない。ブーイングした人は言いたいのであろう。現在この役でグールド氏に敵う歌手はいるであろうか?多くのワグナー・テノール、例としてジョン・ヴィッカースは長年パルシファルやジークムントであったが、ジークフリートには見えなかった。ヴィッカースは狂ってはいなかった。

第二幕の後、ウォータンのファルク・シュトルックマンは彼と一緒に挨拶をし、また一人で聴衆に会わせなかった。あとさらに大変な一幕が残っていたからである。しかしグールド氏は確信していた。オペラが終わったとき、聴衆は思いやりのあるオベーションで彼の労を報いた。

「神々の黄昏」のジークフリートも手強い役だが、歌はなんとかなる。グールド氏は昨晩立派にやり遂げた。たしかにブラボーにブーイングが多少あったけれど。彼の声には疲れがあった。しかし、ジークフリートなくして「指輪」なし。だれかが登場するまで、バイロイトの聴衆は感謝すべきである。彼は結果に喜んでいたように見えた。そしてワグナーの音楽はアンドリュー・ロイド・ウェッバーの音楽をむち打った。

「指輪」は昨晩終わった。まもなく私の最終的な全体のレポートが載るはずである.。

私がうっかりトマシーニ記者の記事を見落としていたために、7月末から投稿すべきであった訳がおかしくなった。「指輪」の総評は以下にある。興味のある方はどうぞ。


http://blogs.yahoo.co.jp/fminorop34/40033300.html

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バイロイト第五日

中休み

アンソニー・トマシーニ

ニューヨーク・タイムス 7月31日

バイロイト ―  ワグナーの「指輪」のチクルスには二日の休日がある。昨晩、「ジークフリート」と「神々の黄昏」の合間の休みには、私が音楽のことは一切忘れて、街のカフェで何本もグラスを傾けて地元のピルスを味わっていだと思われるでしょう。

いや私は、洗練されたピアニスト、アンドラーシュ・シフのベートーベンの三曲のソナタのリサイタルを聴きに行ったのです。この選択はよかった。ベートーベンをかくも優雅に弾かれるのを聴くと元気が回復するというものである。私はブリュンヒルデ、彼女の馬、神々とともに、今晩焼身自殺する覚悟が出来た。

このリサイタルの魅力は、バイロイトの歴史地区にある、辺境泊のオペラ劇場で音楽が聴けることである。この建物は1744年にフリードリッヒ大王の姉である、大変教養のある辺境伯夫人ウィルヘルミーネの依頼で建てられた。便利な「レッツ・ゴー・ジャーマニー」本によれば、彼女は英国の王位継承者との結婚の話もあって進行しかけた。だが、両親はブランデンブルク−バイロイト辺境伯と結婚すべきとした。芸術的才能のあるウィルヘルミーネからすれば、バイロイトは文化的僻地であった。そこで彼女は入念に装飾を施されたバロック様式のオペラ劇場を建てた。彼女のオペラ作品も上演された。馬蹄形のリングになった聴衆席はわずか600であるが、完成時にはドイツ最大のオペラ舞台を誇ったという。

この劇場は辺境泊オペラ劇場を訪問したとき、彼の音楽祭の候補地を調べていたワグナーの目に留まった。高くて、奥行きがある舞台に、彼は興奮した。この劇場で音楽祭を催すことかんがえたが、いかんせん聴衆席が狭すぎる。ロココ風の装飾、金色の装飾、壁画は今なお見るべき物がある。そしてワグナーは遠いが、文化的なこの町バイロイトを音楽祭に理想的な土地としたのである。

このオペラ劇場はベートーベン・プログラムを演奏するには素晴らしく想像をかきたてる場となった。シフ氏は32曲のピアノソナタ全曲の録音を完成させているが、彼はこの夏にワイマールの特別企画の芸術祭で全曲をシリーズで演奏する予定である。この芸術祭はワグナーのひしゃごになたるニケ・ワグナーが取り仕切ることになっている。バイロイト音楽差は、このシフ氏の演奏を、彼のシリーズ演奏の予告番組として位置づけたのである。彼はワイマールで一定期間滞在して演奏するのである。ミズ・ワグナーはこのプログラムを紹介し、ワイマールとバイロイトの接点およびワグナーとリスト(彼女のひいお祖父さん)について、ワグナーのベートーベンへの傾倒を15分ばかり話をした。

シフ氏は3曲の幻想的なベートーベンの思弁的な作品を演奏した。2楽章の不思議なソナタ、作品27ホ短調、心にしみいるようだが、元気のあるイ調の28番のソナタ、おそろしいロ調のソナタ29番(ハンマークラヴィーア)を演奏した。演奏は柔軟で、洞察力に富み、明瞭であった。叙情的で伸びやかであるが、ベートーベンの鋭いリズムとメロディの変化に気を付けていた。シフ氏は、世界でもっとも素晴らしいバッハの演奏家の一人であるが、後期のソナタの複雑な対位法の曲の微妙な表現も自然であった。

「ほとんど歌唱不能な主役の「ジークフリート」と最後のフーガはほとんど演奏不可能な「ハンマークラヴィーア」を連日聞けるのはすごいことことである。ベートーベンもワグナーも実際の挑戦を考えずに未来の音楽をかいた。

「指輪」を私の近くで聞いていた人が何人かいるのに気づいた。休日の日にさらに音楽を聴こうというワグナー狂は私一人ではなかった。私は演奏会の後、この一週間で始めて涼しいマクシミリアン・シュトラーセをぶらぶら歩き、私のホテルのバーに立ち寄り、気分よくピルスを飲んだ。今夜は「神々の黄昏」、火曜日には、バイロイトで私の最後の一日、「トリスタンとイゾルデ」という「小品」である。


写真は辺境伯オペラ劇場である。

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